暗号資産のサイバー対策でJPCrypto-ISACが設立、楽天ウォレットやビットバンクなど参画

サイバーセキュリティ強化を目的に、暗号資産(仮想通貨)交換業者など約30社で組織された一般社団法人JPCrypto-ISACの設立記者会見が3月7日、都内で開かれた。

同法人は2025年1月17日付で設立されており、サイバー犯罪に関する調査や加盟事業者による情報共有などを行っていく。代表理事を務める楽天ウォレットCIO兼執行役員の佐々木康宏氏やビットバンク取締役兼執行役員CTOの野田直路氏らが設立の背景や活動内容について発表した。

この日、出席したのは佐々木氏、野田氏に加え、理事を務める片岡総合法律事務所弁護士の佐野史明氏とアドバイザーを務めるジョージタウン大学研究教授の松尾真一郎氏。

設立の背景について野田氏は、暗号市産業界の拡大が進む一方で、サイバー攻撃の増加が業界の信頼性を問う課題となっているとしたうえで、各事業者と官民が連携し、情報共有やリスク分析を進めることがこれまで以上に求められていると説明。「攻撃検知の迅速化や被害の拡大防止のため、今後はワーキンググループを立ち上げ、広く議論を行っていく」と述べた。

2024年5月には、北朝鮮のハッカー集団によるDMMビットコインからの約482億円相当のビットコイン(BTC)の流出事件が起きたほか、先月にはドバイに拠点を置くBybit(バイビット)で15億ドル相当のイーサ(ETH)が盗まれる事件も発生したばかり。業界全体として、セキュリティ対策の強化が急務になっている。

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会員構成については既に国内の交換業者の約半数は参加しているが、全交換業者に参加してもらうべく、組織拡大を図っていくと述べた。

続いて、金融庁も参加するブロックチェーンのガバナンス強化を目的とした国際団体「BGIN(Blockchain Governance Initiative Network)」の共同議長も務める松尾氏が挨拶した。松尾氏は、セキュリティに関する情報を同業他社と共有することの難しさに理解を示しつつ、それを乗り越えることが国全体のセキュリティ向上につながると強調。事業者間の連携を促進する仕組みの構築が「一丁目一番地」だと述べた。

|文・写真:橋本祐樹