【M&A】ブロックチェーン・暗号資産分野は4割減、今後は「分散型M&A」に注目

2019年の暗号資産・ブロックチェーン企業のM&A(合併・買収・統合など)が、昨年からおよそ4割減って90件〜100件程度になることが分かった。仮想通貨・暗号資産の調査を行っているトークンデータがまとめたレポートによるもので、昨年は162件のディールがあったが、今年は100件前後にとどまりそうだという。

トークンの統合、リブラなど興味深いディールのあった2019年

トークンデータが「Crypto M&A: Barbarians on the Blockchain」と題して11月末に発表した。2013年からのデータをまとめており、13年から18年までの間に合計272件のディールがあった。

M&Aディール件数
毎年のディール件数(トークンデータより)

レポートは、この間の傾向を踏まえて、「M&A市場は非常に動きが激しく、暗号資産の価格や地合いに正の相関がある」「月ベースでは2018年の早い段階にピークをつけたため、産業への関心が急騰した」などと指摘した。

また、2018年は28億ドルあったが、19年は7億ドルと減少、2013年からのディール額は40億ドルと見積もっている。これは2000億ドル超とみられる仮想通貨の全体のバリュエーションからすると小さいものだと指摘した。

毎年のディール予測額(トークンデータより)

18年から19年で大きく減らした要因として、1億ドルを超えるディールが2018年には5件あったが、19年にはたった一つだったことを挙げている。

ただ19年はフェイスブックによるリブラプロジェクトや、コインベースによるXapoのカストディ事業買収、初めてトークンの統合(TRONAceとTRONDice、COSSとARAX)が行われるなど興味深い案件があったとも述べた。

コインベースがリード、バイナンスも重要な投資を継続

レポートはまた、特徴として以下の4点を挙げている。

・ M&Aの50%が投資ファンドや取引所によって行われている
・ 取引所が多くの戦略的買収を実施している
・ 非クリプト系の企業が業界での存在感を出すための買収が目立った(例として、フェイスブックがリブラとカリブラの開発を進めるためにチェーンスペースとサービスフレンドという2つのスタートアップを取得)
・ クリプト系のインフラ企業や、プロトコルやDappsの開発チームの取得は目立ったが、マイニング企業の取得は2018年の調整以降、大きなものはない

なお取引所の動向では、コインベースが戦略的M&Aの分野をリードしていること、これにクラーケン、コインスクエアが続いていることを紹介した。バイナンスはわずか3件(Trustwallet, JEX, Wazirx)の取得にとどまっているものの、他のクリプト系企業とのパートナーシップなどを結ぶなど重要な投資を行っていると述べている。

今後の展望、分散型M&Aが進む?

まとめとして、クリプト業界におけるM&Aは活発化していること、ほとんどのクリプト系企業はVCから投資を受けていること、大型のIPOも直近なくM&Aは回収できるイグジット手段にまだなっていないこと。そして、コインベースやクラーケンなどの取引所が大きな企業取得をしており、人材と技術に着目した企業の取得は見通せる限りの将来において続く傾向であることなどを指摘した。

また取引所が、M&Aを異なる国の法的要請にこたえるために利用している傾向があること、法体系が急速に進化しており、グローバルに法令を遵守しようとするクリプト系企業にとって、M&Aがより魅力的な戦略になることも述べている。

さらに、「分散型M&A」についてはまだ起こっていないが、2019年に起こったトークンの統合が分散型M&Aにおける需要なメカニズムになりえると述べるなど、今後の分散型M&Aの進展に期待感を見せた。

文・編集:濱田 優
写真:Blue Planet Studio / Shutterstock.com