仮想通貨の新しい親友を紹介しよう:CNET創業者

ハルゼー・マイナー(Halsey Minor)氏はCNETの創業者で、これまで複数の企業に携わってきた。現在、彼はLive Planet VRと、ブロックチェーン対応の動画インフラであるVideoCoin Networkを率いている。


私は2013年、初期のステーブルコインの1つを作った決済サービス・取引所「アップホールド(Uphold)」を立ち上げ、仮想通貨業界に参入した。現在、ビットコインと15の法定通貨の取引が可能だ。当時、コインベース(Coinbase)では、トレーダーはビットコインを売り、銀行口座にお金を送金する必要があった。米ドルに対応したサービスはなかった。我々は、トレーダーがエコシステムを離れることなくビットコインと法定通貨を交換し、銀行に送金できるようにしたかった。その頃、我々のように法定通貨に対応した「ステーブルコイン」をサービスとして揃えることは、ビットコインがすべてという世界ではあまり人気がなかった。

2019年、トレーダーが価格の安定性を求めるようになるにつれて、テザー(USDT)や多くの競合が人気となった。ステーブルコインは、銀行を使わずに直接、取引所間でお金を動かすためのソリューションになった。ブロックチェーンでの法定通貨の取り扱いは爆発的に増え、米ドルに連動したステーブルコインは45億ドル(約4900億円)以上のお金を集めた。このことは、法定通貨と仮想通貨は敵同士では決してなかったことを証明した。効果的な取引エコシステムにおいて相互補完的なものだった。

利便性のために、仮想通貨ユーザーは商品やサービスの支払いのために銀行口座を利用できなければならない。仮にそうではなく、サービスを使うためだけに、取引所口座を開設して、流動性が低く、ボラティリティの高い、新しい形態のお金を使うことを強制すれば、かなりの摩擦を生むことになる。ブロックチェーンベースのビジネスを成功させるには、ブロックチェーンではないサービスと同じくらい使いやすいものでなければならない。

分散型動画プラットフォームを構築しているビデオコイン(VideoCoin)では、我々は自らにシンプルな質問を投げかけた。もしパラマウント・ピクチャーズや20世紀フォックスがビデオコインの顧客となり、我々の動画エンコーティングサービスに月に10万ドルを費やそうとした時、取引所口座を開設し、サービスを購入する際のコストアップを回避するためにトレーダーを雇い、我々のサービス上での価値が毎日毎分変動するような資産を預け入れるだろうか? ここに問題がある。

我々の競合のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)では、顧客はクレジットカード、送金、ACH送金など、あらゆる形態で通常の銀行口座を利用できる。これらの方法はシンプルで使いやすく、預け入れる資産の価値はタイミングによって大幅に変動することはない。我々はかなり安価なサービスを構築しているが、決済における摩擦は極めて大きく、競争力を著しく弱めてしまう。

我々は、銀行口座と連携した法定通貨ベースのブロックチェーンを作るために第三者(まだ発表はしていない)と協力している。これによって、ブロックチェーン固有のメリットをすべて維持しながら、クレジットカードやACH送金のような従来型の決済方法を使うことが可能になる。ブロックチェーンネットワークで取引するために必要な燃料でさえも、法定通貨ベースのもので、スマートコントラクトと従来の決済方法をサポートする、初のトークン化された法定通貨ブロックチェーンとなっている。このモデルによって、20世紀フォックスはドルで支払い、弊社のデータセンターは、検証作業の完了時にドルで支払いを受けることができる。摩擦ではなく、まさに安価だ。

決済で使われるトークンは、仮想通貨エコシステム外の顧客に届けられる時は法定通貨に対して競争力を持たない。残念ながら、世界のほぼすべての企業は現在、仮想通貨エコシステムの外で活動しており、仮想通貨取引所へのアクセスを持たない。だがクレジットカードは持っている。我々はビデオコインを他の競合サービスよりも簡単とはいかなくても、同じくらい使いやすくする必要がある。

ビデオコインでは、我々のユーティリティートークン「VID」がネットワークを安全に動かすうえで非常に有用な機能を担い、最も適切なネットワークオペレーターが確実に顧客ニーズに応えられるようにしている。VIDトークンは、決済メカニズムとして機能するのではない。ビデオコイン・ネットワーク上のワーカー・ノードを実行するグローバルインフラを構築するための評判ステーキングメカニズムだ。マイナーは、動画ファイルを処理するオペレーターとして、ビデオコイン・ネットワークのサービスアルゴリズムによって、見積価格、ステーキングされたトークン数、実績という3つの要素に基づいて継続的に選択される。これにより、最も安価で質の高いネットワークオペレーターが作業を担うことになる。ベストのオペレーターが一番に選ばれる。ステーキングは、ユーティリティーモデルにおけるトークンの完璧な使用例だ。ネットワークに、決済に関する摩擦で負荷をかけるのではなく、我々のトークンはネットワークを安全に機能させ、その一方でワーカーは法定通貨でステーキング報酬を受け取る。

これはつまり、ビデオコインネットワークの顧客は法定通貨で支払いを行い、データセンターは法定通貨で支払いを受け取り、ステーキングを行う人は法定通貨と少額のステーキング報酬をVIDトークンで受け取るということだ。報酬トークンはネットワークが自動的に、作業が開始された時の価格で取引所から購入する。そのためステーキングを行う人は、銀行口座に送金できる法定通貨と、さらに少額のトークンを手にすることになる。

テザー(USDT)、パクソス・スタンダード(PAX)や他のステーブルコインが取引所の利用、取引、銀行口座からのお金の出し入れを簡単にしたように、法定通貨を組み込んだブロックチェーンも、ビジネスをダメにしてしまうような決済時の摩擦から仮想通貨を解放することができる。仮想通貨スタートアップが伝統的な企業からマーケットシェアを奪いたいなら、法定通貨ベースの決済の便利さを提供する必要がある。

2020年、このことを理解できた人は、狭い仮想通貨分野から出て、その外側で戦うことができる。このような人たちこそが、ビデオコインネットワークが2020年5月にシステムの完全リリースを完了した際に関わっていきたい人たちだ。法定通貨による決済を受け入れることは降伏ではなく、我々が思い描くビジネスを実現するためのファーストステップだ。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
原文:Meet Crypto’s New Best Friend: Fiat