1兆ドルに膨れたビットコインのルールを決めるのは誰か?

1兆ドルに膨れたビットコインのルールを決めるのは誰か?

ユーザーがビットコイン(BTC)のコンセンサスを決めるのであれば、ビットコインのユーザーとはいったい誰なのか?

5月26日、米CoinDesk主催の「Consensus 2021」でのパネルディスカッション「ビットコイン・コア・ファンデーション」でこの疑問が提起された。

ビットコイン・マガジンのテクニカルエディター、アーロン・バン・ウィルダム(Aaron Van Wirdum)氏がモデレーターを務め、ビットコイン開発者のアダム・バック(Adam Back)氏、マット・コラーロ(Matt Corallo)氏、オラオルワ・オスントクン(Olaoluwa Osuntokun)氏、ラスティ・ラッセル(Rusty Russell)氏、エリック・ボスクイル(Eric Voskuil)氏が、ビットコインにアップグレードを導入するための最善の方法を議論した。

セグウィット(SegWit)以来最大となるビットコインのアップグレード「タップルート(Taproot)」が実行中のいま、このトピックはとりわけ重要だ。

アップグレード作業の「タップルート」

バン・ウィルドラム氏が述べた通り、「タップルートには幅広いコンセンサスがある」が、アップグレードを実行する方法をめぐって、ビットコイン関係者の間では何カ月にも渡って議論が続いた。中央集権型のシステムとは異なり、ビットコインの分散型ネットワークでは、アップグレードの実行を成功させるためにコミュニティーでの協調が必要となる。

アップグレードとはすなわち、ルール変更である。そのため、ビットコインコードを実行するすべての人が同じルールに従うことが大切だ。そうでなければ、2つの互換性がないトランザクション履歴を生む「チェーンスプリット」が生じる可能性がある。

この事態を未然に防ぐため、ビットコイン開発者はアップグレードを「後方互換性のあるもの」としている(つまり、スプリットに至らないよう、新バージョンと旧バージョンは十分なだけの同じルールを持っている)

ビットコインはいまや約1兆ドル規模の資産だ。最終的にスピーディー・トライアルという現在行われている実行方法に行き着くまでには、タップルートの実行方法をめぐって、ゆっくりと着実な議論が行われた。

マット・コラーロ氏は、一般的には、アップグレードには2つの方法があると説明した。ノードオペレーターを通じてルールを実行する方法と、マイナーを介してハッシュレートを通じてルールを実行するものだ。(タップルートの場合、スピーディー・トライアルは後者である)

タップルートの実行方法をめぐる意見の対立は、アップグレードを決定づけるプレイヤーをユーザーとするべきか、それともマイナーによる実行へとデフォルトしても構わないか、という部分が焦点だった。

ビットコインユーザーをどう定義する?

エリック・ボスクイル氏が指摘した通り、ビットコインのマイナーもユーザーであることから、この意見の対立はさらに複雑なものとなった。

オスントクン氏は、ビットコインコミュニティーのコンセンサスを定義する時に使われる場合の「ユーザー」という言葉の曖昧さを強調した。「ユーザーという言葉が何を意味するのかを、きちんと定義しないというのが重大な問題だ」と、オスントクン氏は指摘する。

ボスクイル氏、バック氏、ラッセル氏は、プロトコルのコンセンサスという観点からは、自らの経済活動を検証するためにビットコインノードを実行・利用している者(いわゆる「経済的ノード」)のみが、本当のユーザーであるという点を強調した。彼らはどのルールセットを実行するかを選択できるからだ。このような議決権が、セグウィットに有利な方へと議論を動かす中では不可欠であったと、パネリストらは語った。

「受け取ったビットコインを検証する人たちが、実際にルールを実行している人たちだ」とボスクイル氏は指摘した。

さらに、ルールを実行するのはユーザーであるため、マイナーはビットコインをコントロールしていないとバック氏は強調。「マイナーが物事を決定している、マイナーには発言権がないといった誤解が多く広まっている。ビットコインユーザーである、あるいは利用可能なビットコインプロトコルを持っているという点では、発言権があるが、マイナーとしては、特に特別な発言権を持たない」と、バック氏は話した。

そのため、「マイナーもユーザーだ。マイナーは、非常に経済的な行動主体でもある。マイナーは開発者にもなり得る」とラッセル氏は言う。「ユーザー」や「マイナー」といった呼び名は、制約的なもので、ビットコインのネットワーク参加者はしばしば、多くの役割を果たすということを無視しているという事実に注意を向けた。

すなわち、「ユーザー」や「マイナー」といった言葉をそんなにざっくりとした意味で使わないことが大切で、特にお互いを戦わせないようにするためにはいっそう注意が必要だと、ボスクイル氏は最後に語った。

マイナーは多くの場合、実際よりも大きな権威を持っているかのように扱われる一方で、ノードを実行する経済的行動主体(パネリストの言うところの本物の「ユーザー」)は、多くの人が思っている以上の権力を持っている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Users Decide Bitcoin’s Consensus, but What Is a Bitcoin ‘User’?

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