- トランプ大統領による「関税配当」の発表は、暗号資産価格上昇への期待を高めたが、ベッセント財務長官は、直接的な給付ではなく減税を通じて実現する可能性があると述べた。
- 減税のような間接的な措置は、直接的な減税ほど強気な影響を与えない可能性がある。
11月9日、暗号資産(仮想通貨)市場は活況を呈した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がトゥルース・ソーシャル(Truth Social)で低所得者層向けの「関税配当(tariff dividend)」を発表したことを受け、ソーシャルメディアでは、ビットコイン(BTC)やエックス・アール・ピー(XRP)、ドージコイン(DOGE)などのトークンの景気刺激策による強気相場を期待する声が沸き起こった。
しかし、スコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官が後に明らかにしたように、現実はもっと複雑だ。
ベッセント長官は、関税配当は今年初めに発表された主要経済政策法案による減税を通じて実現する可能性があると説明した。
「2000ドルの配当は、さまざまな形をとって、さまざまな方法で実現する可能性がある。大統領が掲げる減税、つまりチップへの課税免除、残業への課税免除、社会保障への課税免除、自動車ローンの控除などが考えられる」と、ベッセント長官はABCの番組「This Week」でトランプ大統領のソーシャルメディア投稿について問われた際に語った。
ベッセント氏が挙げたような間接的な対策は、直接的な景気刺激策のようにビットコインやアルトコイン、その他の消費者支出の即時的な急増を引き起こさない可能性がある。なぜなら、直接的な景気刺激策は需要を急速に押し上げることができる迅速かつ具体的な現金収入をもたらすのに対し、減税はより緩やかにその効果をもたらす傾向があるからだ。
「手の中の一羽は藪の中の二羽に勝る(A bird in the hand is worth two in the bush.)」という格言がある。直接的な現金の確実性は、間接的な対策の不確実な効果よりも、市場への即効性のある影響をもたらすのが一般的だ。
ベッセント氏の説明は、発表された配当が景気刺激策の小切手という形で提供されるという楽観的な憶測を受けて行われたもので、こうした期待は、特にアルトコインの前例のない高騰と強く結びついていたパンデミック期の給付金を連想させるものだ。
そして実際にこうした見方が市場を押し上げた。ビットコインは9日に約10万3000ドルから10万5000ドルまで上昇し、10日のアジア取引時間には一時10万6500ドルを超える上昇を記録した。
主要仮想通貨であるビットコインは過去24時間で4%上昇し、XRP、ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)、PUMP、ユニスワップ(UNI)、ジーキャッシュ(ZEC)といったアルトコインはそれぞれ8%から25%上昇した。CoinDesk20指数(CD20)は5%以上上昇し、3469ポイントとなった。しかし、この上昇は協定世界時(UTC)午前8時頃に失速した。
また、2021年との類似する状況とは必ずしも言えない点も留意する必要がある。当時は、インフレ率がアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を大きく下回り、金利はほぼゼロに固定されていた。これらの要因はいずれもリスクテイクの増加と市場の熱狂を促した。現在、金利は最近の利下げを受けて4%前後で推移しており、インフレ率はFRBの目標を少なくとも1%上回っている。
これは重要な疑問を提起する。関税配当の受益者(直接的な支払いであれ、減税などの間接的な措置であれ)は、その資金を暗号資産取引に回すのだろうか、それとも貯蓄に回すのだろうか。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:スコット・ベッセント米財務長官(Maxim Elramsisy / Shutterstock)
|原文:Hold Your Horses, BTC Bulls: Bessent Says Trump’s Tariff ‘Dividend’ Could Be Tax Cuts


