- 暗号資産ETFは、主流への採用が進むにつれ、投機的な取引から長期投資ツールへと移行しつつある。
- ステーキングと上場に関するIRSおよびSECの新たな規則が、より多くの商品と投資家保護への扉を開いた。
- ETFがオンチェーン資産を反映するよう進化するにつれ、発行者は税務処理からスワップ構造に至るまで、運用上の課題に直面している。
数年前であれば、長期にわたる政府機関閉鎖は伝統的市場にとっては危機であり、暗号資産(仮想通貨)トレーダーにとってはチャンスと捉えられていただろう。この対比が、18日にニューヨークで開催されたETP(上場取引型金融商品)フォーラムにおいて、デジタル資産市場がその後どれほど変化したかについて幅広く議論が展開されるきっかけとなった。
ETF(上場投資信託)発行体、監査人、弁護士、デリバティブ専門家で構成されたパネルは、暗号資産ETF分野を再編する要因と、急速な商品拡大に対応するために舞台裏で行われている運用作業について説明した。
最も明確なテーマの一つは、暗号資産が投機的な取引クラスから投資クラスへと移行したことだ。過去のサイクルは、価格急騰、モメンタム、個人投資家の熱狂によって牽引されていた。現在の環境は様変わりしている。現在、ETFはビットコイン(BTC)の時価総額のかなりの割合を保有しており、イーサリアム(ETH)や主要アルトコインを対象とする新たな現物ETFは、この資産クラスを主流の証券チャネルに導入した。こうしたアクセスが新たな期待を生み出している。投資家は今、単独の賭けというより、長期保有に近い性質を持つETFを求めている。
IRSの新ガイダンス
この変化の大きなきっかけとなったのは、米内国歳入庁(IRS)だった。IRSは、ファンドが税務上の地位を危険にさらすことなく、イーサリアムやソラナ(SOL)などの資産をステーキングするための安全な道筋を示すガイダンスを発表した。ステーキングは多くのブロックチェーンがネットワークを保護する方法であり、予測可能な利回りを生み出す。この判断以前は、投資家はETFの安全性と、個人ウォレットが提供するステーキング報酬のどちらかを選択する必要があった。現在、ファンドがこれらの報酬を獲得、分配できるようになり、オンチェーンエコノミーが規制された世界に組み込まれている。発行体にとって、ステーキングは新たな規律も強いる。資産がネットワークに紐づけられている場合でも、発行体はロックアップ、流動性、償還プロセスを維持する方針を管理する必要がある。
SECによる新たな上場基準の導入
上場規制も変化した。米証券取引委員会(SEC)は、取引所が個別の免除申請なしに特定の暗号資産ETFを承認できる包括的な上場基準を導入。これにより、新商品のための迅速なレーンが生まれた。ソラナ、ライトコイン(LTC)、ヘデラ(HBAR)のETFは、この規則の施行後すぐに登場した。これらの基準は、監視協定や確立された取引所の取引量データに大きく依存しており、規制当局は相場操作を検出できるという安心感を得られる。SECは、これらの要件を満たす資産が増えるにつれてリストを拡大する予定であり、これにより何十もの新たなファンドが上場する可能性がある。
この承認の波により、企業は社内体制の見直しを迫られている。監査人は、「33 Act」のファンドに関する四半期報告書を作成し、フォークやプロトコルの変更によって引き起こされる税務イベントに対応する必要がある。
スワップデスクは、原資産となるトークンを保有するための資産を必要とせずに、レバレッジ、ステーキングエコノミクス、合成エクスポージャーを提供する構造を構築している。発行体は現物取引を統合しており、これによりETFは市場における暗号資産の動きを反映することができる。これらの変更により、ETFは資産を直接保有するのと同等の体験に近づきつつ、規制されたファンドが提供するガードレールを備えたものになる。
パネルでは、インデックス商品が採用の次の段階をどう形作るかについても検討された。多くの投資家は、もはや個別のブロックチェーンを選ぶことを望んでいない。投資家たちは、セクターの進化に合わせて自動的に更新される分散投資を望んでいる。発行体はすでに分散型暗号資産インデックスの導入を開始しており、今後さらに増える見通しだ。「40 Act」の枠組みは、グランター・トラストでは提供できないアクティブ運用、リバランス、税効率性をサポートしているため、これらのファンドに適している場合が多い。
DATの台頭
もう一つの話題は、デジタル資産トレジャリー(DAT)の台頭だった。これらの上場企業はトークンを主要資産として保有し、負債を利用してエクスポージャーを高めることがよくある。DATは、ETFというよりレバレッジ型暗号資産ビークルのような運用形態で、その構造が異なるリスクプロファイルを生み出す。パネリストらは、DATが柔軟性と広報担当者主導のナラティブを提供する一方で、ETFはより明確な運用方針、より厳密な追跡、確立された償還フローを提供すると指摘した。
先物とデリバティブの話題が議論を締めくくった。個人投資家はオフショアプラットフォームで永久先物に早くから慣れ親しんできたが、証拠金の複雑さやコストの高さから、規制された先物取引を依然として避けている投資家も多くいる。米商品先物取引委員会(CFTC)による暗号資産への監督強化に伴い、関心が高まると予想するパネリストがいた一方、ETFは多くの投資家にとって容易な選択肢であり続けると考える者もいた。
セッションは、共通認識として、暗号資産ETFは目新しい段階を過ぎたという結論で締めくくられた。暗号資産ETFは現在、他の投資分野と同様に、広範な規制、運用、戦略的枠組みの中に位置づけられている。今後の課題は、商品のローンチよりも、戦略、資産、投資家から成る成長し続けるエコシステムを支えるために必要なインフラの維持にある。
|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:
|原文:Crypto ETFs Enter Maturity Phase as IRS and SEC Actions Drive Rapid Expansion of Products


