デジタルドル、2層構造の構想を提案──アクセンチュア、元・商品先物取引委員長らが考案

デジタルドル、2層構造の構想を提案──アクセンチュア、元・商品先物取引委員長らが考案

アクセンチュアの幹部や、米商品先物取引員会の元会長らが参画するデジタルドル・プロジェクト(Digital Dollar Project)は5月29日、米ドルの中央銀行デジタル通貨(CBDC)の構想を初めてホワイトペーパーにまとめた。

デジタルドルは、世界の基軸通貨としてのドルの地位を維持し、現在の金融システムよりも多くの個人や組織・団体にサービスを提供することができると、ホワイトペーパーに記された。

同グループには、アクセンチュアから多くのアナリストやディレクターが協力しており、同社シニア・マネージング・ディレクターのデビッド・トリート(David Treat)氏 や、商品先物取引委員会(CFTC)の委員長を務めたJ・クリストファー・ジャンカルロ(J.Christopher Giancarlo)氏らが運営の指揮をとっている。今年1月には、アクセンチュアと共同でデジタルドル財団も設立した。

「新たなデジタル時代におけるお金の未来についての議論が、グローバルに展開される中、アメリカが果たす役割についての議論がさらに進んでいくことを望んでいる」とクリストファー・ジャンカルロ氏はCoinDeskの取材で述べた。

2層構造のシステム

ホワイトペーパーは、現行のアメリカの金融システムを検討したうえで、「2層の流通構造」を持つデジタルドルを推奨している。商業銀行と当局が認めた金融機関は、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会) と、一般のユーザーとをつなぐ仲介的な役割を果たす。

銀行は、ATMが消費者に現金を流通させるような役割を果たし、またデジタルドルは民間のステーブルコインと並行して運用することすらできるとホワイトペーパーには記されている。

「宇宙開発やインターネットを創造した時のように、アメリカで大きな構想を実現するときには、ほぼ必ず健全な官民の連携があり、互いに学び合い、民間セクターは(中略)イノベーションをもたらし、政府はプライバシーや個人の権利と自由といったコア原則に留意し、バランスを取ってきた」とジャンカルロ氏は言う。

「2層の銀行システムは現行の流通構造とそれに関連した経済・法的メリットを維持しつつ、イノベーションとアクセシビリティをもたらす」(ホワイトペーパー)

デジタルドルへの理解を促進

このモデルでは、FRBは銀行にデジタルドルを発行し、ユーザーはデジタルドルを銀行口座、あるいは自身のデジタルウォレットに保有しておくことができる。ホワイトペーパーによると、銀行は口座に保管されているデジタルドルを担保に融資を行うことが可能だ。

トリート氏は、デジタルドル・プロジェクトの取り組みの1つは、利害関係者がこのシステムを理解することだという。つまりエコシステム内でトークンがどのように動くかを理解することが重要だと述べる。

2層システムはまた、個人のプライバシーに対する懸念と、アンチマネーロンダリング(AML)や顧客確認(KYC)を含む金融取引に関わる規制を満たす必要があるとトリート氏は述べた。

「トークンが移動できる最終地点を、規制されたウォレットインフラとすることは、おそらく最善だと考えている。これは我々がテストすべき重要な一部だろう」

トークンベース vs 口座ベース

ホワイトペーパーはまた、トークンベースのデジタルドルと口座ベースのデジタルドルのコンセプトを比較し、トークンベースのシステムを優先させている。

デジタルドルはより幅広い応用が可能だと、ジャンカルロ氏は言う。この発言は、今年はじめに議会に提案された、口座ベースのデジタルドルの実現を求める一連の法案を意識したものだ。

議会に提出されたデジタルドルの提案は、具体的には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたアメリカ国民に対する給付金に言及したものだったが、デジタルドル・プロジェクトは、デジタルドルはより幅広く応用可能なものであるべきと考えている。

「真のアメリカのCBDCはこの問題のみならず、何世代にもわたって新しいお金の構造を作り上げ、危機のなかで銀行口座を持たないアメリカ国民だけでなく、(中略)すべての人に金融サービスを提供する金融包摂を世界的に促すことができるだろう」とジャンカルロ氏。

同氏によると、デジタルドルは、より高速、より効率的、低コストで、ドルの有用性を拡大するものでなければならない。

ここでも、議論する内容を明確に定義することが重要とトリート氏は述べた。 

パイロットプログラム

プロジェクトの次のステップは、ホワイトペーパーで概説された多くの潜在的ユースケースのためのパイロットプログラムやテストの実施だ。ユースケースは、国内決済、国際決済、政府給付金のいずれかに大別され、ピアツーピア決済から、災害時の給付金の発行にまで多岐にわたる。

パイロットプログラムは、デジタルドルのマネーサプライへの影響、技術的な選択肢、政府の介入および商業利用の双方からのプライバシー保護、経済制裁への影響や利用、アンチマネーロンダリング(AML)/顧客確認(KYC)ルールの遵守など、多くの要素に基づいて評価されることになるだろうとジャンカルロ氏は説明する。

「台帳自体はどんなものか? 許可型なのか、非許可型なのか、そもそも分散型台帳、いわゆるブロックチェーンを使うのか? 多くの場で議論できるように、これらすべてを解決する必要がある」

実現には5〜10年

理論上の計画がすべて済んだとしても、実際に使用する場面を想定してテストを行う必要があるだろうとジャンカルロ氏は語る。

計画段階の経て、議員や為政者が実際にデジタルドル・ソリューションを実行することが必要になると、トリート氏は話す。「我々は議論を促し、アイデア、経験、専門知識を提供するために存在している。実現に向けた取り組みの決定は議員や為政者によるものだ」。

ジャンカルロ氏は、デジタルドルを構築するには5〜10年の時間を要する可能性があると言う。それほどに重要で、インパクトを与えるものだと話した。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:商品先物取引委員会(CFTC)のJ・クリストファー・ジャンカルロ元委員長(CoinDesk archives)
原文:Digital Dollar Project Calls for 2-Tiered Distribution System in First White Paper for US CBDC

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