「ビットコイン取引は95%水増しされている」米ビットワイズが伝えたかった“真実”とは

「報告されているビットコインの取引量の約95%はねつ造されている」

米ビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)は2019年3月20日に証券取引委員会(SEC)に提出した報告書の中で、ビットコイン取引に関する調査結果を明らかにした。

ビットコインの取引量データを収集するコインマーケットキャップ(CoinMarketCap.com)は多くのメディアに利用されているが、同報告書はそのデータには捏造された膨大な取引が含まれていると指摘した。コインマーケットキャップのデータが示す1日あたりのビットコイン取引量は、平均で約60億ドル(6600億円)。しかし報告書によると、実際の取引量はわずか2億7300万ドル(300億円)だった。

ビットワイズ・アセットが4日間にわたり81の取引所での取引を分析したところ、本質的なビットコイン取引が行われているのは10カ所にとどまり、その他多くの無認可取引所は実際の取引量を水増しした数字を独自に報告しているという。

取引量のランキングで上位に位置することで、取引所はICO(イニシャル・コイン・オファーリング)などによるコイン上場の誘致につながり、手数料収入を得やすくなると、報告書は捏造の背景を述べている。

本質的な取引をしているのは10取引所のみ

報告書に記載された「本質的なビットコイン取引が行われている」10の取引所とそれぞれの取引量は以下の通りである。

  1. Binance:1億1000万ドル
  2. Bitfinex:3800万ドル
  3. Kraken:3100万ドル
  4. Bitstamp:3100万ドル
  5. Coinbase:2700万ドル
  6. bitFlyer:1400万ドル
  7. GEMINI:800万ドル
  8. itBit:600万ドル
  9. BITTREX:500万ドル
  10. POLONIEX:140万ドル

一方、コインマーケットキャップの取引所ランキングを見ると、コインビーン(CoinBene)が首位に位置しており、その取引量は約5億1900万ドルで、本質的な取引が行われているとされる10取引所の中でトップを占めるバイナンス(Binance)の取引量の5倍近い数字だ。また、バイナンスはコインマーケットキャップのランキングでは、22位に位置する(報告書より)。

ビットワイズのビットコインETF

インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)が保有するニューヨーク証券取引所(NYSE)

ビットワイズ・アセットはなぜ今回の調査結果を報告したのか?同社は現在、ビットコイン上場信託(Bitwise Bitcoin ETF Trust)の設定を米インターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)が保有するNYSEアーカ(Arca)取引所と共に米証券取引委員会 (SEC)に申請している。

SECは投資家保護の観点から長期にわたり、ビットコインETFが投資家を市場操作(マニピュレーション)にさらす可能性と、ビットコインのスポット市場が規制された環境で行われているかという点に対して懸念を抱いてきた。

そこで、ビットワイズアセットは、ビットコイン取引の現状を明らかにすることで当局の不安を軽減させ、提案するビットコインETFが市場操作に対する耐性を保持していることを証明しようと考えた。

ビットワイズ・アセットは、本質的な取引だとするわずか5%の取引に基づいたETFを運用することを強調している。加えて、本質的な取引は10の認可済み取引所におけるもので、十分な規制環境下にあると述べている。

56件の取引所ハッキング

また、報告書は仮想通貨取引所に対するハッキングの被害についても触れた。2011年以降で確認されたハッキングの件数は、日本のコインチェックを含めて56件で、盗まれた顧客資産は少なくとも16億3000万ドル(約1790億円)に上る。盗まれた額のほとんどは、未回収のままだ(報告書)。

報告書によると、盗まれた資産は全てがコールドストレージに保管されておらず、ほとんどはインターネットに接続されたホットウォレットに保管されていたという。

ビットワイズ・アセットは、申請中の「ビットコインETFは取引所と直接関わることはない」とした上で、「全ての資産は、第三者機関のカストディアン(保管会社)がコールドストレージで保管することになる」と述べた。

文:佐藤茂
編集:浦上早苗
写真:Shutterstock