令和を生き抜くために投資すべきデジタル領域は「D・A・R・Q」:アクセンチュア提唱

日本が「失われた30年」と呼ばれる低い経済成長の平成時代から令和に変わろうとしている中、アクセンチュア(Accenture)はポスト・デジタル時代に企業が競合との差別化を図る上で、追求すべき4つのテクノロジー領域を提唱した。

D・A・R・Q(ダーク)── DLT(分散台帳技術)、AI(人工知能)、XR(仮想現実のVRと拡張現実のAR、複合現実のMR技術の総称であるExtended Reality)、Quantum Computing(量子コンピューティング)。アクセンチュアは、同社がまとめた「アクセンチュア・テクノロジー・ビジョン2019(Accenture Technology Vision 2019)」と題するレポートの中で、4つの技術の文字をとってDARQと呼んだ。

DARQの活用とこれらの技術に対する投資は飛躍的に伸びていると、アクセンチュアは強調する。なかでも、DLTに対する投資は急激に増え、ブロックチェーン・仮想通貨にフォーカスしたスタートアップへの投資額は2018年第1四半期だけで約39億ドル(約4300億円)に達し、2017年の年間投資額の約3倍となっている。

例えば、世界最大のビールメーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)が参画するコンソーシアムは、ブロックチェーン技術を活用して物流コストを数億ドル削減する試みを始めている。配送書類のデータエントリーの必要性を最大8割減らし、貨物検査や税関手続きの簡素化を図っている(レポートより)。

フォルクスワーゲン(Volkswagen)もDARQの活用を積極的に進めるグローバル企業の一社だとレポートは述べる。同社は量子コンピューティングを使って、交通量を最適化する実験を行う一方で、バッテリーの化学構造におけるシミュレーションを進めている。また、未来の新型モデルの開発では米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)とAI技術で連携。自動車の盗難防止などを視野に入れたDLTの実証実験も行なっているという。

AIは41%、(DLT)分散型台帳は19%

「テクノロジーはたちまち、人の期待と行動を進化・変化させる。次の壮大なディスラプション(破壊)はすぐそこまで来ている」報告書

アクセンチュアは同レポートをまとめるにあたり、世界27カ国の6600人以上の経営幹部とIT担当幹部を対象に調査を行なった。そのうち41%は、AIが今後の3年間で最も企業に影響をもたらす技術だと答えた。DLTが最大のインパクトを与えると答えたのは19%だった。DARQの可能性を最大限に引き出すため、企業はこれらの技術を組み合わせることで得られる価値を考える必要があると、レポートは指摘。

「DARQはそれぞれが極めてパワフルなテクノロジーであるが、一つ一つを巧みに組み合わせることで、さらにその力を増大する働きがある」とレポートは述べる。

量子コンピューティングとAI技術の相性の良さは、世界各所での実証実験へと導いている。グーグルAI(Google AI)はそれを進める一社で、同社は機械学習のコンピューティングを加速化するためのクオンタム・プロセッサーやアルゴリズムの開発を視野に入れ、研究活動を強化している。

IBMは既に量子計算フレームワークの「QISKit AQUA」をリリースした。開発者はIBMのクオンタム・コンピュータ「IBM Q」上で、AIを動かすことが可能になるという。

「企業は今、重大な岐路に立たされている。デジタル化は重要だが、今となっては事業を行うための“参加費”ともいうべきもの」と報告書。「テクノロジーはたちまち、人の期待と行動を進化・変化させる。次の壮大なディスラプション(破壊)はすぐそこまで来ている」

2019年4月18日、都内で開かれた会見で説明するアクセンチュア・山根圭輔氏(撮影:CoinDesk Japan)

アクセンチュアは2019年4月18日、都内で会見を開き報告書の概要を説明した。同社テクノロジーコンサルティング部・エンジニアリングサービスグループ統括の山根圭輔氏は会見でこう強調した。

「SMAC — ソーシャル(Social)、モバイル(Mobile)、アナリティクス(Analytics)、クラウド(Cloud)の頭文字 — が牽引してきたデジタル化の先のポストデジタル時代には、DARQは競争優位につながってくる。依然として競争上の差別化要因となるSMACを固めた上で、DARQへの素早い戦略的フォーカスが必要になるだろう」

文:佐藤茂
編集:浦上早苗
写真:Shutterstock
(編集部より:記者会見の内容を加えて、記事を更新しました)