MITとUCバークレーでブロックチェーンを学ぶ学生たち【密着】

ブロックチェーンの研究プログラムを設けているアメリカの大学の中で、MIT(マサチューセッツ工科大学)とUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)は学びながら実際に仕事をして報酬を得られる機会を提供している点で突出している。

両校の学生は、ブロックチェーンスタートアップで報酬の良い仕事に就くことができる。多くの場合は、週に12時間程度のアルバイトだ。

MITビットコイン・クラブ(MIT Bitcoin Club)のネイト・フォス(Nate Foss)代表は、クラブには暗号資産(仮想通貨)関連の求人情報専門のスラックチャンネルがあり、クラブの卒業生ネットワークにはスカイネット・ラボ(Skynet Labs)などの地元企業が含まれ、学部生を頻繁に雇用していると話す。

「公式のプログラムやルートはない。卒業生の多くがアーリーステージのスタートアップで働いており、クラブのネットワークを利用している」

UCバークレー

UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)のブロックチェーン・アット・バークレー(Blockchain at Berkeley:BaB)は学生クラブよりも公式な組織だが、大学の研究室ではない。BaBはシリコンバレーでの仕事を求める学生にとって主要なルートの1つになっている。

BaBは学生によって、ほぼ自己資金で運営されている。クアルコム(Qualcomm)、エクソンモービル(Exxonobil)、フォード(Ford)、電力・ガス大手のPG&Eのような企業がBaBのコンサルティングサービスを利用するためだ。

「メンバーに業界での経験を与え、学期が終わる頃までに目に見える影響を与える」とBaBの事業開発責任者、キャサリン・プロッツ(Katherine Plotz)は語った。

2016年にBaBが設立されて以来、数十人のBaB卒業生が暗号資産企業を立ち上げた。今年はじめに216万ドル(約2億3000万円)を調達したスタートアップのOpyn、ベンチャーファンドのDecrypto Capital、フェミニスト支援団体のShe265は卒業生が立ち上げた組織のほんの一例だ。

ベンチャーキャピタルから資金を調達して、大学を中退した友人を知っていると複数のBaBメンバーは語った。だが大学に残ってアルバイトをする学生にも多くのユニークなチャンスがある。

最高のブロックチェーン課程

BaBの共同代表、リアム・ディグレゴリオ(Liam DiGregorio)は「バークレーではコンピューター・サイエンスの課程は1つしか履修していないが、ブロックチェーンラボの決済企業でソフトウエアエンジニアとして働いている。BaBの開発者コースを取り、BaBの評判のおかげで採用された」と語った。

「高校時代はかなりブロックチェーンの仕事をしてきた。ブロックチェーンに特化したベンチャーファンドでインターンもしていた」と語るのはBaBも参加しているジョイント・ベンチャー、Berkeley Blockchain Xceleratorのアルピン・ユクセログル(Alpin Yukseloglu)。

「その時の上司がUCバークレーには最高のブロックチェーン課程があると言った。東海岸の大学にも出願したが、進学先を決める時にBaBはかなり大きな要因になった」

こうした業界中心のアプローチは、ビットコインに熱心な学生が中央銀行デジタル通貨(CBDC)のようなプロジェクトで銀行家や政治家と連携する方法を学ぶMITの学生カルチャーとは対照的だ。

MIT

東海岸では、MITがおそらく最も明確な暗号資産カルチャーを育んでいる。

BaBの卒業生と同じように、MITビットコイン・クラブの学生は、スタートアップ企業を始めるために中退する傾向が他の分野の学生よりも高いとメンバーは語った。

新型コロナウイルス感染拡大以降、一部の大学は学生が休学することについて、より柔軟な姿勢を見せている。フォスもその1人で、最近学部を卒業し、大学院で分散型システムを学ぶ前にMITを休学した。

フォスは2017年まで、ビットコインが何かすら知らなかった。今、ビットコインに対する彼の情熱は、彼の世界観を完全に変えてしまった。フォスは髪をパステルカラーに染め、暗号資産について熱く語る。

「全員が分散型の新しい世界を開発するつもりでいる。アップルがiPhoneを独占しているように、我々が新しい世界を独占してしまったら、かなり残念だ。(中略)我々が開発したいものは、誰もが土台にできるようなオープンプラットフォーム。我々はそれをコントロールしない。基盤となるプロトコルを円滑に運用するだけ」とフォスはもう1人のMIT生を含む3人の友人と共同で立ち上げているスタートアップ、ギャザー(Gather)について語った。

ギャザーは暗号資産とは無関係。フォスは無駄なマーケティング施策が好きではないから。だが、ビットコインコミュニティーから学んだ精神は関連している。

デジタル通貨イニシアチブ

MITのキャンパスカルチャーは、トークンのトレンドよりも、ビットコイン、あるいは伝統的な分散型システムに重点を置いている。

アメリカで最も影響のあるグループの1つで、10年の歴史を持つビットコイン・クラブの代表でありながら、フォスはMITはBaBのような学生主導のカルチャーではないと語った。あくまでも研究主導だ。

フォスは、ネハ・ナルラ(Neha Narula)率いるMITのデジタル通貨イニシアチブ(DCI)は、キャンパスで最も影響力のある組織だと語った。ネルラはFRB(連邦準備制度理事会)の実験に関連した複数のプロジェクトやフォーラムに関わっている。DCIは今年、ボストン連邦準備銀行とCBDCのプロジェクトも進めている。

「クラブのメンバーの多くは、学部での研究でDCIと一緒に仕事をしている。通常、報酬か単位がもらえるが、ほとんどの学生は報酬を選んでいる」とフォスは語った。

(敬称略)

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Blockchain at Berkeleyのメンバーたち(Blockchain at Berkeley)
原文:The Best Blockchain University Programs Actually Pay Students to Learn