国際決済銀行、中銀デジタル通貨の実験計画を発表──PoCは年内に実施

国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)のアグスティン・カルステンス(Agustin Cartens)総支配人が2019年春、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)を検討する際には注意が必要」と警告してから、状況は大きく変わった。

関連記事:国際決済銀行の総支配人:中銀の仮想通貨発行は「想定より早い」かもしれない

中国のニュースサイトの澎湃(ほうはい:The Paper)によると、中央銀行のための中央銀行と称されるBISは現在、スイスの中央銀行と協力して中央銀行デジタル通貨の実験を計画しているという。

BISイノベーションハブ(BIS Innovation Hub)の責任者ブノワ・クーレ(Benoit Coeure)氏が10月23日~25日に上海で開催されたBund Summitで明らかにしたところによると、概念実証(PoC:proof-of-concept)は年内に完了し、その後、現金利用に相当するリテールCBDCのユースケース実験が行われるようだ。

これらの実験には、デジタル通貨と既存の決済システムを相互運用する方法や、デジタルIDの役割、コンプライアンスの確認などが含まれると伝えられた。

クーレ氏は、こうしたユースケースでは、中央銀行デジタル通貨の基盤となるブロックチェーンのさらなる取り組みが必要になるだろうと述べた。

CBDCの実験を拡大

BISはまた、香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority)やタイ銀行(Bank of Thailand)をはじめとする中央銀行間で、デジタル通貨を使ったクロスボーダー決済を促進する方法も調査していく。

クーレ氏によると、BISはすでに、シンガポール、スイス、香港で実験に取り組んでおり、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、カナダにも拡大する計画だという。

昨年まで欧州中央銀行(ECB)の専務理事を務めていたクーレ氏の今回のコメントの直前には、BISと7行の中央銀行が各国のデジタル通貨の基本原則を定めたレポートを発表している。

多くの中央銀行は中央銀行デジタル通貨(CBDC)を評価している最中としているが、今後数年にはCBDC発行に向けた大きな動きがあるようだ。ECBの首脳陣によると、デジタルユーロ発行の可能性は非常に高く、ロシア、韓国、日本でCBDCの実験が計画されているという。

中央銀行デジタル通貨の研究開発では、中国が積極的にその取り組みを続けている。「デジタル人民元」の発行は最終段階を迎えているようだ。また、バハマは先週、中央銀行デジタル通貨「サンドダラー(sand dollar)」を発行した。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:スイス・バーゼルにある国際決済銀行(Shutterstock)
原文:Benoit Coeure Reveals BIS Plan for CBDC Trial Starting in 2020