米大手銀行が暗号資産カストディに進出──BNYメロンの狙いは?

米大手銀行が暗号資産カストディに進出──BNYメロンの狙いは?

約41兆ドル(約4300兆円)の資産を保管する世界最大のカストディアン、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)は11日、2021年後半に暗号資産取引をサポートするデジタル・カストディ部門を発足させると発表した。

カストディアン:投資家に代わって、有価証券の保管・管理などを行う金融機関。

デジタル資産に参入した銀行や、ペイパルのように暗号資産関連サービスの提供を開始した決済アプリ大手は、ビットコインやイーサリアムといった人気の暗号資産からスタートすることが多い。

だが、BNYメロンのマイク・デミッシー(Mike Demissie)氏は「構築するプラットフォームは、あらゆる資産に対応していく。顧客の関心と需要によるものであり、市場で認可されている資産を確実にサポートできるよう、規制の動きにも注意を払っていく」とインタビューで語った。

BNYメロンのような大手銀行がカストディ・ソリューションを提供する際には、一般的には暗号資産に特化したカストディ事業者と提携する。デミッシー氏は、同行にも外部パートナーが存在することは認めたが、「まだ社名は公表できない」と述べた。

「ゼロから構築していないことは確かだ」(デミッシー氏)

大手カストディ銀行の暗号資産への進出は、ニューヨーク州金融サービス局の認可に基づいたもの。同局のリンダ・レースウェル(Linda Lacewell)局長は、州の認可を受けたBNYメロンのような銀行は、デジタル資産のカストディにあたって、ビットライセンス(BitLicense)を取得する必要はないと指摘した。

カストディはスタート地点

現在、暗号資産業界には大口顧客向けのプライム・ブローカレッジサービスが存在しない。大手暗号資産取引所、取引会社、カストディ企業などが提供を目指しているが、BNYメロンもその方向を目指しているようだ。

プライム・ブローカレッジサービス:1つの金融機関を使うことで、複数の金融機関との取引が可能になるサービス。ヘッジファンドなどの大手機関投資家を対象に総合的なサービスを提供する。

「業界で重要な役割を担うカストディから始める。その後は、クライアントが我々に何を望むか次第だ。クライアントは資産を安全に保管するだけでなく、融資や担保として利回りをあげることを望むだろう。また我々は、証券や不動産のトークン化などデジタル資産の発行も検討している」(デミッシー氏)

BNYメロンの計画がプライム・ブローカーの定義に合うものかどうかはまだわからないと、BNYメロンのカストディ責任者、キャロライン・バトラー(Caroline Butler)氏は述べた。

「我々は素晴らしい担保商品を提供しており、資産クラスとしてのデジタル資産にそうした商品群を結びつけられる能力を活用すべき。そして顧客がドルを使ってビットコインを借りたり、またその逆を望んだとしても、それは我々が提供すべきレベルの相互運用性にすぎない」(バトラー氏)

銀行の参入が続く暗号資産

同行の暗号資産カストディについては、いくつか微妙な違いがあるとバトラー氏は指摘した。

「資産を表す秘密鍵をカストディできるということは、実質的にはコードをカストディできることを意味する。我々の従来のカストディ・ソフトウェアを適合させるよりも、新しいテクノロジーに頼ることになる。重要なことは、我々の既存のカストディ・プラットフォームとあらゆる相互運用性を確保すること」(バトラー氏)

では、BNYメロンの暗号資産カストディ部門はどちらに重点を置くだろうか? スイスの山の下に埋められた金庫のような隔離されたコールド・ストレージ、それともコンピューターを使ったマルチパーティ計算(MPC)にハードウェア・セキュリティ ・モジュール(HSM)を加えたものだろうか。

「上記のすべてだ。活発に取引を行っているクライアントは、コールド・ストレージでは提供できないかもしれないレベルのアクセシビリティを必要とするだろう。しかし、セキュリティの観点からは、例えば、コールド・ストレージにMPCを加えたものがクライアントには好ましいかもしれない」(バトラー氏)

アメリカの大手カストディ銀行として、初めてデジタル資産向けサービスを提供できることを誇りに思うとBNYメロンは述べた。ちなみに、JPモルガン、シティ、ゴールドマン・サックスもデジタル資産向けカストディ・ソリューションに取り組んでいると言われている。

しかし、アメリカ初という点では、保管資産が10兆ドル(約1050兆円)を超えるノーザン・トラスト(Norhtern Trust)は昨年12月、カストディ・サービスをデジタル資産に拡大するために英銀大手のスタンダード・チャータード銀行と提携すると発表した。BNYメロンは暗号資産カストディのサービス開始時期を明らかにしていない。

「カストディのみならず、統合されたサービスである点が他とは異なる要素であることを強調したい」(デミッシー氏)

スタンダード・チャータード銀行は、一部の市場ではBNYメロンのサブ・カストディアンとバトラー氏は指摘した。では、両行のデジタル・カストディ部門は今年、サービスがスタートしたら、つながることになるのだろうか?

「すぐにではない。だが将来、どうなるかはわからない」とバトラー氏は述べた。

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:BNY Mellon Announces Crypto Custody and Spies Integrated Services

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