- 中国の対米貿易措置による世界的な市場の動揺の中、ビットコインは11万1000ドル前後で推移した。
- 暗号資産市場は依然として慎重な動きが続いており、ビットコインとゴールド(金)の相関性は数年ぶりの高水準に達した。
- イーサリアムのFusakaアップグレードのテストは進んでいる。一方、ブータンは2026年までにデジタルIDシステムをイーサリアムに移行する計画だ。
香港取引時間の10月16日午後、ビットコイン(BTC)は11万1000ドル前後で推移した。中国がアメリカに対して新たな報復的貿易措置を発動したことで世界市場にリスク回避姿勢が再燃し、再び乱高下した後も安定している。
暗号資産(仮想通貨)市場全体は警戒モードに戻り、時価総額は約3兆8000億ドル(約570兆円)で横ばいだった。イーサリアム(ETH)は4000ドル付近、バイナンスコイン(BNB)は1180ドル付近で推移し、ソラナ(SOL)は190ドル台を維持した。一方、ドージコイン(DOGE)は主要通貨を上回り、1日で4%、週間では21%上昇した。
アナリストによれば、先週の過去最大規模となる190億ドル(約2兆8500億円)の清算イベントを受けた今回の調整は、パニックというより消化の過程に近いという。オンチェーン分析企業CryptoQuantは週次レポートで「今回の下落はパニック売りではなく、管理されたレバレッジ解消だ」と指摘した。
FxProのセンチメントデータでは恐怖指数が34まで低下した。トレーダーらは8月以来の支持線となっている10万9000ドルから11万ドルのレベルの防衛を継続している。
「弱気筋は一服したようだ」とFxProのチーフ市場アナリスト、アレックス・クプツィケビッチ(Alex Kuptsikevich)氏はメールで述べた。「潜在的な買い手はリスクを取る明確な理由を待っているが、貿易摩擦はまだその理由にはなっていない」。
オンチェーン指標は依然として強気材料を示している。CryptoQuantの創設者、キ・ヨンジュ(Ki YoungJu)氏は、ビットコインとゴールド(金)の相関が0.9というここ数年での高水準にあると指摘した。地政学的ショック時に両資産が連動する動きを見せ、「デジタルゴールド」という見方を裏付けているという。
一方、イーサリアム(Ethereum)開発陣は9月、Sepoliaネットワーク上でFusakaアップグレードのテストを進めている。そんななかで、ブータン政府は2026年初頭までに国家デジタルIDシステムをポリゴン(Polygon)からイーサリアムへ移行する計画を正式発表し、ネットワーク基盤への長期的な信頼を示した。
機関投資家の資金流入は一部参加者にとっての安定要因になっている。
CoinWのチーフストラテジーオフィサー、ナサール・アル・アッカー(Nassar Al Achkar)氏は、「歴史的なレバレッジ解消にもかかわらず、ビットコインとイーサリアムに対する構造的な需要は依然として堅調だ」と述べた。「ETF(上場投資信託)への流入とステーブルコインの供給増加は、依然として流動性の基盤を構築している。今重要なのは、それがどれほど早く新たなリスクテイクにつながるかだ」
一方、トレーダーたちは、トランプ大統領による関税に関する発言やパウエルFRB議長による次の発言を、きっかけとなる要素として引き続き注視している。LVRGリサーチ(LVRG Research)のディレクター、ニック・ラック(Nick Luck)氏は、「利下げは検討されているが、関税への懸念が依然として上値を抑えている」と述べた。「ビットコインの長期的な価値は投資家を引き付けているが、マクロ経済の見出しが短期的な乱高下を引き起こしている」と述べた。
11万ドルは、今注目すべきゾーンだ。これを失えば、投資家のセンチメントは、慎重から防御的へとついに転換するかもしれない。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Bitcoin Holds Near $111K as Traders Weigh China Retaliation, Risk Appetite Cools


