ビットコイン取引の検閲開始:マラソン社の「クリーン」なブロックが意味するもの

ビットコイン取引の検閲開始:マラソン社の「クリーン」なブロックが意味するもの

マラソン・デジタル・ホールディングス(Marathon Digital Holdings)が開発した新たなマイニングプールが、「アメリカの規制を完全に遵守」したビットコイン(BTC)ブロックのマイニングを行った。

この取り組みは、米財務省の制裁を受けていたり、ダークウェブでの活動に関わっていると思われる人物や組織による取引を除外することが目的だ。

3月後半に発表されたマラソンのOFACプールは、国家の安全保障を脅かすものと指定された個人や組織などを掲載する、米財務省の特別指定国民・凍結者リスト(Specially Designated Nationals and Blocked Persons List:SDLリスト)に含まれている個人や組織による取引を処理することを差し控えるものだと、マラソンは説明する。

マラソンがマイニングしたビットコインを、米国財務省外国資産管理室(US Department of the Treasury’s Office of Foreign Assets Control・OFAC)による規制を遵守したものとして売り込むことで、「ビットコイン購入に関心を示している多くの大規模ファンドや企業」の懸念に対処していくと、同社は述べる。

「クリーン」なビットコイン取引

マラソン・広報担当者のジェイソン・アサド(Jason Assad)氏は、初のOFACプールブロックがいくつかの取引を除外したことを認めたが、詳細を開示することは避けた。

「悪質な人物や組織間の取引を除外することで、我々が生み出すビットコインは『クリーン』で倫理的、規制当局の基準に適合したものであるという安心感を投資家や規制当局に提供することができる」と、マラソンは声明の中で説明した。

「規制を遵守した」ブロックのマイニングはマラソンが独自で行なっているもので、現在の米国の規制や法律では、マイナーにはそのような作業を行う義務はない。

マラソンはDMGのブロックチェーン監視ソフトウェア「Walletscore」を利用して、取引をふるいにかけているとアサド氏は米CoinDeskに語った。利用しているブラックリストは「米財務省とOFACが提供する情報と、OFACが制限している暗号資産アドレスのデータベース、ダークウェブなど含むその他の情報に基づいている」とアサド氏は述べる。

OFACの制裁リストに掲載されているイランでは、制裁による圧力を国民が受けていることを理由の1つとして、ビットコインの普及が進んでいる。一方、イラン政府は、合法に取引できるのはイランで作られたビットコインのみだと発表している。

ビットコインの精神に反する

推定される送り手の身元を理由に、取引をブロックから除外する検閲という行為は、それが認められたものであるかどうかに関わらず、ビットコインコミュニティにおいて白熱した議論の的となっている。

ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトは、非許可型で耐検閲性を持つ価値の移動を促進するためにビットコインマイニングを設計した。一方、マラソンのこの取り組みは、その特徴を理由もなく弱体化させてしまうものだと批判する人たちもいる。

「すべての人に開かれたものではなく、許可型のプロトコルにしてしまうという点で、ビットコインの精神に完全に反している」と、ビットコイン・コアとSuredbitsで開発者を務めるベン・カーマン(Ben Carman)氏は指摘した。

カーマン氏はさらに、マラソンのアプローチは意味をなさないと批判し、「手数料の最も高い取引は含まないが、マラソンが『悪質』と考える取引を伴うブロックの上にあるブロックをマイニングしており、前者のようなブロックにより多くのセキュリティを与えてしまう」と指摘した。

規制遵守という主張をすることに現実性があるか否かを疑問視する人たちもいる。

OFAC準拠などというものはあり得ない。OFACはその基準を任意に厳格化することができる。制裁を受けている資金で電気代がまかなわれなかったか確認したのだろうか?クリーンではないブロック上と知りつつ、ことを進めたのか?そもそも初の完全に「クリーン」なブロックと誰が認められるというのだ?

実際、マラソンの検閲にも関わらず、ロシアのダークウェブ市場Hydraからの取引が「クリーン」なブロック内で処理された。

#その調子で頑張って #コンプライアンスの空飛ぶサーカス
「でも取引する時は、OFAC準拠ブロックでやるんだ」

「クリーン」なコインを追い求める

さらに、マラソンがSNSで「クリーン」なブロックを宣伝してからまもなく、イランや世界中のビットコイナーたちがマラソンの「クリーン」なブロック報酬を受け取ったアドレスへとビットコインを送り始めた。

これは、マラソンの取り組みを骨抜きにすることがどれほど簡単であるかを示し、「クリーン」なコインを追い求めることがどれほど不毛であるかを明示するためであった。

イランのビットコイナーたちがこのブロックのコインベースアウトプットアドレスにビットコインを送ってしまったら、本当に残念なことだ。イラン人から支払いを受け取ることはOFACによって制裁回避と解釈される。

ところでそのアドレスは3LC8dDKyBsrWPfzhXyt7aAyjXxGYkfDdHuだ。
mempool.space/address/3LC8dD…


「規制を遵守した」ブロックの経済性

マラソンは5月1日、そのハッシュレート、つまりコンピューターの演算能力をOFACプールへと向け始め、5日には最初のブロックとなるビットコインブロック682170をマイニングした。

そのブロックの取引手数料に対する報酬の0.05BTC(当時3000ドル未満相当)は、その前後のブロックで集まった手数料(どちらも0.31BTCで1万7800ドルほど)と比べて大幅に安かった。ちなみにブロック682172の場合の手数料報酬は0.48BTCと、約2万8000ドル相当であった。

ビットメックス・リサーチ(BitMEX Research)の分析によると、マラソンのブロックの「取引手数料は見込みよりも0.00330944 BTC少なかった」とされている。同ブロックからは、ビットメックス独自の仮想テンプレートならば含まれたはずの数多くの取引が除外されており、「検閲があったことを示唆している可能性」があると分析された。

興味深いことに、あまりにも手数料が低すぎて優先されないと判断されたために、ビットメックスのモデルから除外された多くの取引がマラソンのブロックには含まれていた。

ビットメックスは「域外での支払い」を意味する可能性があると指摘し、支払い手の取引には含まれない内密な支払いがあった可能性を示唆した。

もしマラソンが域外で手数料を受け取っていないとしたら、「規制を遵守した」ブロックが獲得している手数料は非常に少ないことになる。ビットコイン報酬は現在、1ブロックにつき6.25BTCと少なくなっており、ビットコインに対する需要は高まっているため、手数料はマイナーの利益にとってますます重要になっている。

マラソンのブロックは1つ前のブロックのわずか1分後に発生しており、それがブロックの手数料の低さや取引数の少なさの理由かもしれない。しかしマラソンが、他のマイナーであれば処理された取引を検閲したことは確かだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Marathon Miners Have Started Censoring Bitcoin Transactions; Here’s What That Means

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