米国は中国とデジタル通貨戦争を続ける必要はない【オピニオン】

米国は中国とデジタル通貨戦争を続ける必要はない【オピニオン】

シンクタンク、政策専門家、メディアにおいて、近づき難いが激しい議論が巻き起こっている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、中央デジタル銀行通貨(CBDC)を発行するべきとする議論だ。

デジタルドルが必要な理由を説明する多くの主張の中には、実世界で使えるCBDCのプロトタイプを含めた、国家のブロックチェーン戦略を掲げる中国にアメリカが押されているというものがある。

その主張はもっともだが、競争が激化するデジタル通貨とブロックチェーンの基準からすれば、アメリカはまったく持って遅れを取っていないだろうし、すでに通貨と支払いの未来を巡る競争に勝利を収めつつあるだろう。

この重要な問題において「中国を出し抜こう」とする中で、私たちは通貨と支払いの未来に関しては、国内での金融に関する選択性を高めることが重要であるということを忘れてしまう。

支払いやバンキングのシステムをアップグレードし、相互運用性とオープンバンキングの標準を改善するには、価値の移動を支えるテクノロジーのアップグレードと、よりオープンな金融サービスの革新が必要だ。

これは成長を続ける、相互運用可能なブロックチェーンベースの支払いシステムと並んで、信頼できる民間発行のデジタル通貨がすでに流通している中でも、国内の給付金支給を加速させるために、デジタルドルの発行を呼びかけた新型コロナウイルス関連の救済法案「Cares Act」のオリジナル版によく示されていた。

ACH(電子送金)やEFT(電子資金振替)、その他の銀行間の送金ネットワークなど、既存の金融システムは50年にわたってアップデートされていない。

ブロックチェーンベースの支払いシステムは、混乱の源となったり、規制回避のための方法を提供するのではなく、世界中で17億を超える人たちを銀行口座を持てないままにしている金融サービスバリューチェーンにおいて、未完の多くの取り組みを完成させることになる。

米国の暗号資産業界が提唱するシステム

中国のフィンテックやモバイルマネーの大手企業は合わせて、1年に67兆ドルを超える取引を処理している。それだけでは、世界の準備金通貨としての米ドルへの脅威とはならない。アメリカを拠点とする活力ある暗号資産業界は、長年にわたりオープンなグローバル決済システムを提唱し続けている。

本当の価値のインターネットは、銀行秘密法といった古臭く、おおむね非効果的な金融規則にしがみつくことなく、プライバシー、信頼、資産や繁栄の民主化といった重要な基本原理を発展させる。

経済的流動性の根底には、低コストな支払いへのアクセスがある。個人が国家発行の身分証に頼る世界においては、何十億もの人々が金融面で脇に追いやられているが、これはグローバルなリスクと不安定化の源だ。

プライバシーを保護しながらも、金融犯罪阻止のための規準が最新のものになって遵守されていることを保証する、新しい形態のデジタル金融サービスとインターネットネイティブのデジタル身分証および認証が必要だ。

アメリカはどちらの分野も主導し、新しい形の包摂性を可能にしながらも、オープンなインターネットベースの金融サービスを促進するべきである。デジタル資産、アイデンティティ、その他の画期的な革新のための価値のインターネット構築におけるパイオニアを目指すべきだ。

このようなプラットフォームの新たな波を引き起こす投資家、起業家、多様なチームはますます、アメリカを拠点にしており、アメリカの経済的競争力と、新型コロナウイルス後の回復の原動力となっている。

デジタル金融を急拡大させた米国の土壌

コロナウイルスは、国内における、貧困撲滅のための送金経路を通じた全人口規模での金融取引の実行が不可能なことなど、パンデミック前に脆弱であった分野を浮き彫りにした。規制上の明確性を伴って、価値を交換し、デジタル資産を通貨に変え、インターネットネイティブな金融サービス企業を構築できなくてはならない。

ブロックチェーン、デジタル通貨、暗号資産の最初の10年においては、政府が運営するCBDCデジタルが暗示するような、リスクを伴いがちで高コストなテクノロジーではなく、主にパブリックなデジタル共有資源から、2兆ドル規模の業界が生まれた。政府主導の取り組みでは、テクノロジーのリスクが公共部門、それによって納税者へと移行されてしまう。

アメリカが金融イノベーションや未来の業界を受け入れるほど、インターネットレベルの繁栄をスケーリングできる可能性が高まり、より多くのアクセスが可能となる。いまや文句なしでアメリカで最も価値のある取引所となった、創業9年の暗号資産ネイティブの取引所コインベースの脅威的な成長は、そのようなチャンスを象徴している。

規制上の明確性と、ブロックチェーンのような飛躍的なテクノロジーを受け入れる国家的な産業政策を示すことは、私たちの経済のあらゆる側面を一段とレジリエントで将来性と競争力のあるものにすることができる。

ブロックチェーンベースの思考が必要な理由は、ランサム攻撃の被害に遭った米コロニアルのガスパイプラインの操業停止騒ぎで見られたような、単一障害点を伴うデザイン、そして気候変動によって危険にさらされる、脆弱だが不可欠なインフラを保護するためである。

CBDCは銀行システムを破壊する?

オープンなバンキングと国全体における金融アクセスの空白も同じことだ。個人情報の漏洩なしにインターネット上で信頼を高めてくれるような、安全な電子投票や承認オプションを提供することはアメリカにとって、即座に国家の競争力と国際的地位を高めてくれる可能性がある。

アメリカを経済と政治の面で世界からの羨望の的にした金融システムを破壊する最速の方法は、中央集権型デジタル通貨を発行せよという圧力に屈することだ。アメリカの銀行とそれを含む金融システムは、はびこるサイバー攻撃の脅威への対処の仕方や、国内最大級の銀行に有利な、あり得ないようなデジタル変容計画を改善することはできるだろう。しかし、CBDCは消費者と市場に不確かな影響をもたらしつつ、2層構造の銀行システムを破壊するだろう。

2層構造の銀行システムは、私たちにお馴染みの銀行が中央銀行と直接インターフェイスすることを可能にする構造であり、中央銀行が通貨政策を伝達させながら、消費者保護と規制を高めるものだ。暗号資産とデジタル通貨による民主的な約束は、安定した通貨政策を取り込みつつ、インターネットレベルの繁栄と、デジタル法定通貨に技術的に相当する、業者による引き受けを支える能力である。

自由な市場に基づいたムーブメントは、インターネット上での通貨と価値の動きにおける、根本的でオープンな、規制を遵守した革新を突き動かしている。デジタル通貨とブロックチェーン経済は、アメリカや世界中で次世代のデジタル金融サービス企業を築き、何万もの雇用と並外れた市場価値を生み出している。

拡大する米ドル連動のステーブルコイン

現在流通する、法定通貨などに連動するステーブルコインの大半は米ドルにペグされているという事実が、グローバルな準備金通貨として選ばれる米ドルへの根本的な信頼がデジタル通貨によって邪魔されるのではなく、維持されていることの証拠だ。

デジタルFRBドルの発行には、重大なリスクが伴う。現在流通する付加価値のついた通貨の大半は、民間企業、あるいはコンソーシアムが支えるシステムに乗っかっている。

アメリカのCBDCは、安全でよく規制されたデジタル通貨と資産をパブリックブロックチェーン上で支える民間部門から、公共のバランスシートへと、技術上、運営上の相当なリスクを移行させ、そのために納税者の負担となる。プライバシーと耐検閲性も、汎用の政府発行デジタル通貨よりも、競争の激しいルールベースの市場で守られる可能性が高い。

米ドルを、あらゆる付加価値を伴うアクティビティの基準資産としてくれるような、官民のバランスが必要だ。紙幣、コインやプラスティックのカード、デジタルドルの場合にはコードと、どんな形であっても鍵となるのは、様々な支払い手段や経路全体においてアメリカ経済への完全な信頼と威光を提供することだ。究極的にはそれが、消費者、経済、グローバル安全保障にとってプラスとなる。

2層構造のアメリカの銀行システムに保管された資産に1対1で裏付けられたドルデジタル通貨(USDCなど)は、米ドルの安全性、安定性、価値をすべて組み込み、そこにインターネットの力を加えて強化する。

我々の金融上のニーズは銀行が休みの日にも発生する。我々のお金も銀行のお休みに影響されるべきではないのだ。

ダンテ・アリギエリ・ディスパルテ(Dante Alighieri Disparte)氏は、デジタル金融サービス企業で、ドルにペグされたデジタル通貨USDCを発行するサークル(Circle)の最高戦略責任者兼グローバル・ポリシー責任者である。米連邦緊急事態管理庁の諮問委員会メンバーでもあり、Risk Cooperativeの創業者権会長も務める。世界経済フォーラムのデジタル通貨ガバナンスコンソーシアムにも参加している。


※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、coindesk JAPANの見解を示すものではありません。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:A Central Bank Digital Currency Would Be Bad for the US

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