「OPECの始まりではない」:ビットコインマイナーの新組織が定めた目標とは

新たに立ち上げられた「ビットコイン・マイニング協議会(Bitcoin Mining Council)」は、ビットコイン(BTC)のソフトウェアを変更しようとしているのではなく、業界における持続可能エネルギーの利用と透明性を促すことを目的としている。立ち上げメンバーが語った。

同協議会は、テスラのイーロン・マスクCEOと、米ソフトウエア企業マイクロストラテジー(MicroStrategy)のマイケル・セイラーCEOが指揮を執っている。ビットコインのファンジビリティ(代替可能性)を尊重し、いわゆる「クリーン」なコインと「汚れた」コインの区別を提唱することはないと、メンバーであるアルゴ・ブロックチェーン(Argo Blockchain)のピーター・ウォール(Peter Wall)CEOは説明した。

「ビットコインのコードやブロックサイズなど、ビットコインの性質を変更することに関わるようなことは一切話題にしていない」とウォール氏。上場企業であるアルゴは、セイラー氏とマスク氏と先週末に会議を行なったいくつかのマイニング企業の1つだ。「私たちは皆、分散型で非許可型のシステムという、今のままのビットコインを支援している」

マイケル・セイラー:「喜ばしいことに、@elonmusk(イーロン・マスク)と北米の主要ビットコインマイナーとの会議を主催することができた。マイナーはエネルギー利用における透明性の促進と、持続可能性に向けた取り組みの加速を世界規模で進めるために、ビットコイン・マイニング・カウンシルを結成することに同意した」

イーロン・マスク:「北米のビットコインマイナーと話をした。持続可能エネルギーの現在の使用状況、未来の使用計画を発表し、世界中のマイナーにも同様のことを要請する約束をしてくれた。期待できるかもしれない」

マイケル・セイラー:「@ArgoBlockchain、@blockcap、@Core_Scientific、@GalaxyDigitalHQ、@HiveBlockchain、@hut8mining、@MarathonDH、@RiotBlockchainの幹部が参加。エネルギー報告を規格化し、業界のESG目標達成を目指し、市場を教育、成長させていくために、組織を設立することを決定した」

さらに、「1BTCは1BTCであり、ファンジビリティやビットコインの本質的な性質は変更されるべきではないという点において、協議会での議論はこれまでのところ非常にはっきりしている」と、ウォール氏は5月24日のインタビューで語った。

マスク氏とセイラー氏が24日にこの会議についてツイートして以降、筋金入りのビットコイン界のベテランたちは、物議を醸し、最終的には失敗に終わった2017年のニューヨーク合意を引き合いに出している。

スタートアップの幹部たちによる非公開の会議が提案したこの合意。ビットコインネットワークのスケーリングに最善の方法は何かという、非常に激しい議論における大きな火種となり、リーダー無しというビットコインの精神に反していると受け止められている。

その時と同じように、多くのユーザーは、少数の企業と2人のカリスマ的人物がなぜ、誰も取り仕切らないような設計となっているグローバルなコミュニティーを主導することができるのかと、疑問を呈している。

「今回のは『ズーム合意』って呼べばいいかな?」

「これらビットコイナーは、まったく自覚なくこの『会議』にふらっと参加したことが、極めて心配だ」と、マイニング企業のグレート・アメリカン・マイニング(Great American Mining)の共同創業者、マーティー・ベント(Marty Bent)氏は24日、ニュースレターの中で語った。

「業界全体を代弁しようとした業界の利害関係者が、参加した非公開の会議が以前にあったことを覚えていないのだろうか?今回の会議がどのような結果になると考えたのだろうか?その傲慢さには驚かされる」(同ニュースレター)

今回の場合は、それはいわれのない心配だとウォール氏は反論する。

「これはOPEC(石油輸出国機構)の始まりではない」と、ウォール氏は皮肉った。「このグループは集まって、議論するためのものだ。私たちは皆、業界やお互いに影響を与えようと自発的なグループを形成した独立分散型マイナーだ」

さらに、その他のマイナーが参加するためのメカニズムを考え出そうとしているところであり、協議会は排他的なものではないと、ウォール氏は加えた。「ビットコインは国際的な課題に直面しており、国際的レベルで対処する必要がある」

クリーンなBTC、汚れたBTC

米人気テレビ番組「シャーク・タンク(Shark Tank)」のスターであるケビン・オレアリー(Kevin O’Leary)氏が、ビットコインはどのようにマイニングされたかに応じて、「クリーン」であったり、「汚れた」ものになったりするとして、環境志向の機関投資家は、クリーンなものだけを買うべきだと述べるなど、最近では著名人もビットコインの環境負荷に関して声を上げている。

米CoinDeskによる取材全体を通して、ウォール氏は協議会の2つの目標は、エネルギー慣行の開示と改善にあると主張し続けた。これらの広範な目標以外には、参加企業は特に合意には至っていないとウォール氏は説明した。

「私たちが望んでいるのは、石炭由来のエネルギーを使ってビットコインをマイニングしている人たちに関するESG上のもっともな懸念が対処されることだ」とウォール氏。ESGとは環境、社会、ガバナンスの頭文字を取った略語で、環境に配慮した企業の取り組みを表す。「現時点では、それ以上に突っ込んだところまではいっていない」

カーボンクレジットの有効性について尋ねると、ウォール氏は協議会を代表してコメントすることを控えたうえで、「私たちは、エネルギー使用の透明性と持続可能なマイニング慣行を改善させるという、先ほど説明した2つの目標以外の話はしていない」と述べた。

マイニングの透明性促進と、ファンジビリティの確保との折り合いをどのようにつけるのかと質問すると、カウンシルはどのコインが持続可能な方法でマイニングされ、どのコインが石炭を動力源とするのかを分類表示することは検討していないと、ウォール氏は答えた。そのような情報は各企業レベルで完結するとウォール氏は説明した。

「私たちは、個々のマイナーにまつわるエネルギー利用の透明性を高める必要があると言っているのだ。個々のマイナーがマイニングするコインにまつわる透明性ではない」と、ウォール氏。「個人マイナーや上場企業であるマイナーが利用しているエネルギーの組み合わせはどんなものなのか」というところが問題で、「目標はその情報を活用し、持続可能エネルギーの方へシフトしていくよう促すことだ」

アルゴ以外に協議会に参加しているマイナーは、ハット8(Hut 8)、ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)、ライオット・ブロックチェーン(Riot Blockchain)、マラソン(Marathon)、コア・サイエンティフィック(Core Scientific)、ハイブ・ブロックチェーン(Hive Blockchain)、ブロックキャップ(Blockcao)となっている。

コイン・メトリックス(Coin Metrics)の共同創業者で、キャッスル・アイランド・ベンチャーズ(Castle Island Ventures)でパートナーを務めるニック・カーター(Nic Carter)氏の推計では、これらのマイナーのハッシュレートは合わせて、ビットコインネットワーク上全体のハッシュレートの10%にしか及ばない。

「ビリオネアたちが、謎に包まれた中央集権的な非公開の秘密結社とともにビットコインのコンセンサスをハイジャック

ハッシュレートの10%を占めるマイナーがすでに公開していた基本的な情報を公開しようと合意するなんていうことより

ずっと恐ろしく聞こえる」

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:レイ・ダリオ氏(Bridgewater)
|原文:‘This Isn’t the Start of OPEC’: New Bitcoin Mining Council Just Wants to Promote Greener Practices, Member Says