DBS銀行、エンジニアの数を銀行員の2倍に──グプタCEOが力を入れるトークン化金融とは

DBS銀行、エンジニアの数を銀行員の2倍に──グプタCEOが力を入れるトークン化金融とは

銀行が第一にテクノロジーカンパニーにならなければいけない現実に生きている──金融のデジタル化を急ピッチに進めるシンガポールのDBS銀行を経営するピユシュ・グプタ(Piyush Gupta)CEOは語る。

グプタ氏は今週、米CoinDesk主催のバーチャルカンファレンス「Consensus 2021」で講演した。今の世界において、中央銀行と民間の銀行は双方ともに、デジタル化・トークン化された未来の金融インフラへのシフトを円滑に進める役割を担うことになると発言した。

時価総額は5540億ドルに達し、資産額で東南アジア最大の銀行であるDBSは、シンガポールの中央銀行がブロックチェーンを研究する中で、積極的な役割を果たしてきた。

その最初の成果がプロジェクト「Ubin」だ。シンガポールの中央銀行にあたるシンガポール金融管理局による、国境を越えたCBDC(中央銀行デジタル通貨)構想だ。米銀最大手のJPモルガン・チェースや、メリルリンチ、クレディ・スイスなどの民間銀行が参加し、2016年にスタートした。

「私たちはますます従来型の銀行というよりは、金融サービスを提供するテクノロジー企業と自らを捉えるようになっている」とグプタ氏は語る。「銀行業務を行うスタッフの2倍のエンジニアを抱えているという事実が、私たちの会社の性質におけるシフトを物語っているだろう」

トークン化のパワー

ここ7年間でDBSが研究している新興テクノロジーの中でも、特に魅力的なのは分散型台帳技術(ブロックチェーン)、特にトークン化の技術だ。暗号資産(仮想通貨)だけにとどまらない、より幅広いものだと、グプタ氏は話す。

「最近では、盛り上がりの大半はデジタル通貨をめぐるものだ。デジタル通貨は確かに重要だが、チャンスの全体像のスケールやサイズを把握できていないように感じる」と指摘する。

トークン化によって、所有権を効率的に分割したり、リアルタイムでの決済や、様々な機能や用途の条件を加えるなど、トークン化された資産をプログラミングするチャンスを提供することも可能になると、グプタ氏は続けた。

「トークン化というアイデアは通貨のデジタル化にとどまらない、ずっとパワフルなものになる」

広範な財産をトークン化するには、課題もある。資産に裏づけられたトークンの流動性の欠如など、課題には法律的なものと実際的なものがあるが、「人々がトークン化のパワーと、金融システムの仕組みを根本的に変容させる可能性を理解しているところまで、すでに達している」とグプタ氏。

この変容において、民間銀行と中央銀行の双方が重要な役割を果たすべきだと、グプタ氏は強調する。「中央銀行は中央銀行デジタル通貨を検討するだけではなく、他にも多くの形でトークン化インフラへのシフトを円滑に進めようとしている」

DBSの次世代金融構想

独自の事業に関しても、DBSは暗号資産分野で積極的に拡大を図っている。昨年には、DBSデジタル取引所の立ち上げを発表。ビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサ(ETH)、リップル(XRP)と、米ドル、シンガポールドル、香港ドル、日本円の4つの法定通貨を取引できる場だ。

この取引所は、セキュリティ・トークン・オファリング(STO)のようなオファリングを計画する企業のための、トークン化プラットフォームにしていくとグプタ氏は説明した。DBSはこの先数年で、「確定利付トークン」も始めるつもりだと話した。

4月には、DBS、JPモルガン、政府系投資会社テマセク(Temasek)が共同で、ブロックチェーンを用いた決済プラットフォーム「Partior」を発表。このプロジェクトの狙いは、「国境を越えた取引のプロセスを改革する」ことだとグプタ氏は語った。これも結局のところは、トークン化の考えに行き着くもので、この場合には、銀行が保有する通貨のトークン化だ。

同プロジェクトは、「それぞれに民間銀行通貨のトークン化を目指すプレイヤーのネットワークを作ること」を支援するものだ。「つまり、DBSはシンガポールドルをトークン化し、JPモルガンが米ドルをトークン化する。私たちは、ユーロなど他の通貨のトークン化も進めて行くためのパートナーを引き入れようとしている」とグプタ氏は述べた。

「このプラットフォームは、もう1つ重要なユースケースを持つことができると考えている。中央銀行デジタル通貨を国や中央銀行を越えて送ることができるようにするのだ。この点について、いくつかの中央銀行と交渉を行った。プラットフォームがどのように機能するかを試すためのテストもいくつか行われている」

5月21日には、シンガポール取引所、スタンダードチャータード銀行、そしてテマセクと共同で、ブロックチェーンを用いた炭素排出クレジットのためのマーケットプレイス「クライメット・インパクトX(CIX:Climate Impact X)」を立ち上げると発表した。

このプロジェクトでは、炭素クレジット市場により高い透明性と流動性を持たせ、適正な検証手続きによってトークン化された炭素クレジットの品質に対する信頼を確保すると、グプタ氏は説明した、同氏はこのプロジェクトに対して意欲的であり、多くの需要を見込んでいる。

「これからの10年で、国際的炭素市場は爆発的に成長するだろう。10倍に拡大し、500億〜1000億ドル規模となると考えている」とグプタ氏。多くの企業がカーボンフットプリント削減を誓約しており、炭素クレジット向けのマーケットプレイスが、「この資産クラスに透明性とインテグリティを生み出し、マーケットプレイスに対してある程度の信頼を生むだろう」と期待を語った。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:CoinDesk Archives
|原文:DBS Bank CEO: We Have Twice as Many Engineers as Bankers

おすすめ記事: