広がる分散型金融、迫られる規制・監督体制のアップデート──金融安定理事会、G20直前にレポート公開

分散型金融テクノロジーがもたらし得る不測の問題を回避するため、主要各国の金融監督当局は今後、テクノロジー企業との対話をいまだかつてないペースで増やす必要があるだろう。金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)が6月6日にまとめた報告書で述べた。

金融の規制・監督体制はこれまで集権的な金融機関を中心に対応してきたが、より分散化された金融システムでは、金融サービスを提供する当該者を特定することが難しくなり、それらを誰が管轄するのかすらあいまいになる可能性があると、金融安定理事会は報告書の中で述べた。

一元化された金融機関を中心に行ってきた体制とは対照的に、サービスにおける具体的な活動にフォーカスした規制・監督のアプローチの重要度が増してくるだろう(報告書)。

金融安定理事会は、主要25カ国・地域の中央銀行や財務省、金融監督当局などが参加し、世界の金融システムの脆弱性への対応を担うために当局間の協調を促す役割をもつ。同報告書は6月8、9日に福岡市で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に提出される。

報告書は「金融システムにおいて今後、分散化がどれほどの勢いで、どれだけの領域で広がっていくかを予想することは不可能だ」とした上で、「分散化を可能にする技術は、既存金融機関のシステム上の重要度を減少させる一方で、競争を激化させる可能性がある」と述べ、すでに分散型サービスの導入が進んでいる決済や資本市場、貿易金融、融資などの分野を挙げた。

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文:佐藤茂
編集:浦上早苗
写真:Shutterstock