暗号資産、レバレッジ“熱狂”市場の終焉

暗号資産、レバレッジ“熱狂”市場の終焉

かつて100倍だったレバレッジは薄まってきている。それでも、暗号資産(仮想通貨)市場は再び、復活の兆しを見せている。

借りたお金でトレーディングをするレバレッジ取引は、投資家の利益を高める(あるいは市場の動きによっては、損失を増大させる)昔からある方法だ。株式市場などの伝統的市場においては、投資家が取引の価値の半分の資金を差し出すのが通常だ。

暗号資産は危険な賭けが大好きで、最近までは、バイナンスやFTXなどの取引所で、わずか1%の証拠金で先物やパーパチュアル契約を取引することが可能となっていた。しかし、このような状態は先月、規制当局やメディアからの圧力の高まりの中、急激に変化した。

FTXは、デリバティブの最大レバレッジを20倍に引き下げ、バイナンスも素早くそれに続いた。元幹部らがアメリカで裁判にかけられているビットメックスはいまだに100倍のレバレッジを提供しているが、現CEOは7月、そのような攻撃的な借り入れは同プラットフォームでは「非常にまれ」だと語った。

レバレッジ引き下げの動きは、熱狂の時代の終焉を示唆しているように見えるかもしれないが、数カ月前に始まったトレンドを締めくくったとも言える。

「全体として、システム内のレバレッジの数は、2021年初頭よりもずっと少ない」と、機関投資家やプロのトレーダー向けのデジタル資産取引プラットフォーム、クロスタワー(CrossTower)の共同創業者兼社長クリスティン・ボッジアーノ(Kristin Boggiano)氏は述べる。「価格が4月の高値から大幅に下がるにつれて、ロングレバレッジが市場から押し出されていった」

変化の風

そして、価格が回復しても、レバレッジが戻ってくることはなかった。

「7月の安値からの最近の回復は、レバレッジに基づくものではないようだ」と、かつては規制当局に勤務し、ウォール街で弁護士も務めたボッジアーノ氏は指摘する。

ボッジアーノ氏の推測は、デリバティブ商品と、その元となっている資産の市場との比較に基づいている。

「今年のもっと前の時期には、先物市場ではスポット(価格)を大幅に上回って取引が行われていた。つまりレバレッジが効いていたということだ」とボッジアーノ氏。「現在では、スポットと先物やパーペチュアルの違いははるかに小さい」

事実、デリバティブ分析企業スキュー(Skew)のデータによると、ビットコインが先週前に最後に5万ドルを超えた2月半ば、各取引所における1カ月の先物プレミアムの平均は年率換算で40%以上であった。現在、ビットコインが5万ドルの大台付近で再び値動きする中、プレミアムは8%まで下がっている。

各取引所におけるビットコイン先物価格のスポット価格に比べたプレミアム
出典:Skew

レバレッジの減少のもう1つのサインは、資金調達率(パーペチュアル先物でロングポジションをキープするコスト)が、2月には8時間ごとに15ベーシス・ポイントだったのに対し、3〜4ベーシス・ポイントにまで下がったことだ。

落ち着き

システム全体のレバレッジの減少は、激しい値動きで知られる暗号資産市場が、少し落ち着く可能性を示唆している。

「究極的には、ボラティリティを抑えるはずだ」と、キャッスル・アイランド・ベンチャーズ(Castle Island Ventures)のハンター・メルガート(Hunter Merghart)氏は話す。「私の見解では、過去のボラティリティの多くは、トレーダーの損失が出ている投資をクローズして、担保を売却する自動手仕舞いによるものだった」

パーペチュアル先物の大半が満期に非常に近く開始され、実質的にスポット市場の一部となっている(大半の取引所は8時間ごとにロールオーバーを行う)ことを考えると、自動手仕舞いは連鎖的効果を持ち、それを引き起こした市場の動きを強める可能性がある。

新たな落ち着きの証拠はすでに存在する。先週見られた5万ドルを超えたブレイクアウトは、2月中旬に見られた激しい値動きに比べると非常に落ち着いたものであった。

注目すべきことに、1カ月間のインプライド・ボラティリティ(将来の価格変動に対する期待値)は先週、85%付近で横ばいだった。スキューによれば、2月中旬には、100%をはるかに超えていた。

ただし、あらゆる市場と同様に、マネーフローなど、値動きを引き起こす変数は数多くある。

「従来の投資家が多く参入してきている。特に夏の終わりで、人々はついにこの世界に入ってくる準備ができたのだろう」と、暗号資産業者銀行のギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のジェイソン・アーバン(Jason Urban)氏は語る。「新しい資金が塊でやってきており、大量の資金の流入は、ボラティリティの高まりを引き起こす」

様々な問題について規制当局がどのように反応するか次第で、価格の高騰や急落につながるため、規制上の不透明感も不確実要素だと、アーバン氏は指摘した。「値上がり方向にも値下がり方向にも、ヘッドラインリスクが存在する」

教訓

非常に高いレバレッジは、提供されている時でも使われることはほとんどなかったと、複数の市場参加者らは指摘する。

主な使い手は「在宅投資家」であったと、暗号資産ブローカレッジHiveExのフレッド・シェベスタ(Fred Shebesta)氏は述べ、こう続けた。「非常に洗練された、機関投資家スタイルのトレーダーの大半は、100倍なんてものには手を出さないと思う」

20倍や10倍、あるいは手を出したとしても25倍だろうと、シェベスタ氏は見ている。

それも当然だ。レバレッジの高い取引は常にリスクの高いものであり、激しい値動きの暗号資産市場ではなおさらだ。

「FXトレーディングを行なっていた経験から、100倍では長続きしないと言える」と、テクノロジーとブローカレッジを手がけるトレードステーション(TradeStation)に務め、外国為替の経験が豊富なジェームズ・プトラ(James Putra)氏は言う。

「ビットコインは、単にキャッシュを使ってレバレッジを効かせなくても信じられないほどのボラティリティを持っている。そこにレバレッジを持ち込めば、非常にはやく動くことになる。大きな力を持つ諸刃の剣だ」(プトラ氏)

価格比較サイト「Finder」の共同CEOとして有名なシェベスタ氏は、緩やかなレバレッジの効いた投資でさえも、成功すればトレーダーに危険なレベルの資金を借り入れするよう促すことになり得ると警告した。

「10倍のレバレッジで取引をしたとしよう。上手くいって、自信がつくので、20倍まで上げ始める。また成功すると、リターンもさらに大きい。そこで今度は、『大きなレバレッジも扱える』と考えて、50倍にする。そして失敗する」

それを教訓とする代わりに、最後の取引の損失を取り返すために、75倍までレバレッジを高める可能性もあるのだ。

「さらに多くの資金を注ぎ込まなければならない悪循環に陥って、収拾がつかなくなる」とシェベスタ氏は語り、「本当に悲しい話をいくつか知っている」と警告するように付け加えた。

全体像

イギリスで人気のCFD(差金決済取引)などのメインストリームの一部の金融商品提供業者に比べると、暗号資産取引所はユーザーが自らがとるリスクの規模をよりコントロールできるようにしていると、シェベスタ氏は指摘した。

「暗号資産業界は非常に透明性が高い。積極的にリスクの高さを動かすことができる」とシェベスタ氏は説明する。「他の市場、特にCFDにおいては、レバレッジをどのように下げるのか誰にも分からない」

重要なのは、必ずしもリスクを恐れたり回避するということではなく、それを認識し、管理するということだ。「すべては各人の選択だ」とシェベスタ氏。「暗号資産は、そのようにする力を人々に与えるのだ」と語った。

100倍のレバレッジは信じられるように聞こえるかもしれないが、少なくとも、バイナンス、FTX、ビットメックスは、提供しているサービスについて公にしていたと言うこともできるかもしれない。

2000年代初期のサブプライムローン熱の頃には、大手銀行やウォール街の企業が、住宅ローンをそれに裏づけられた証券や担保付きの債券に変え、幾重にも重なったCDOへと組み込むことで、裏で幾層ものレバレッジを加えていた。その結末がどうなったかは、皆の知るところだ。

暗号資産は、自らもかつては働いていた伝統的市場よりもある意味では透明性が高いと、プトラ氏も同意した。

「FXの世界で見なかったのは、銀行が持っていた200対1(のレバレッジ)で、ヘッジファンドはそのような巨大なレバレッジを手にしていた」と、プトラ氏は語り、次のように続けた。

「それはおそらく、業界内にいて、どんな参加者がいるのか、企業としてどんなものを手にすることができるのかを知っていれば、もう少し見えていたものなのだろう」

1つ注意すべきは、多くの暗号資産トレーディングは、相対取引(OTC)ベースで発生し、取引所の公開オーダーブックからは見えないという点だ。

「OTC市場には不透明さがあると思う」と、プトラ氏は語ったが、それも時間とともに改善するだろうと見込んでいる。

中央集権型プラットフォームではなくオンチェーンで貸付が発生し、スマートコントラクトを管轄するオープンソースコードを誰でもが見ることのできる分散型金融(DeFi)の台頭が、デジタル資産市場におけるレバレッジの透明性がさらに高まることを約束してくれる。

「誰が何をしているかを知るのに、銀行で働いている必要はないのだ」とメルガート氏は語った。

「レバレッジは価値を生み出さない。以上」

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Long & Short: The End of Extreme Leverage

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