暗号資産普及でトップにランクインしたアジアの国々:チェイナリシス・インデックス

暗号資産普及でトップにランクインしたアジアの国々:チェイナリシス・インデックス

ブロックチェーン分析企業のチェイナリシス(Chainalysis)が発表する2021年版「Geography of Cryptocurrency(暗号資産の地理学)」レポートでは、新興市場におけるダイナミックなトレンドに焦点を当て、世界中の国や地域ごとに暗号資産の普及具合を分析している。

機関投資家の流入を一因とした値上がりを背景に、昨年以来、暗号資産(仮想通貨)の利用は世界中で劇的に増加した。2020年1月から2021年1月の1年間で、世界中の暗号資産ウォレットの数は推計6600万と、45%増加した。

チェイナリシスは8月、2度目となる「Global Crypto Adoption Index(国際的暗号資産普及インデックス)」を発表した。

こちらでは、アフリカなどの新興市場におけるP2Pトレーディングなどに後押しされる形で、国際的な暗号資産の普及具合は880%増加したと報告された。チェイナリシスは、7000の暗号資産サービス提供業者のデータを追跡し、158カ国において「意義のある暗号資産活動」を見つけた。

米マイクロストラテジーや、ツイッター創業者ジャック・ドーシー氏がCEOを務めるスクエアなど、アメリカの機関投資家が見せた大きな動きにも関わらず、チェイナリシスの暗号資産普及インデックスのトップを飾ったのはベトナムであった。その後に、インドとパキスタンが続いた。インデックスのトップ20カ国のうち、6カ国はアフリカの国であった。

チェイナリシスのリサーチ責任者キム・グラウアー(Kim Grauer)氏によれば、同社は今年、暗号資産の草の根的普及の程度を数値化するために、より的を絞ったアプローチを採用した。一般市民への普及をとらえるために、新しい方法や指標を導入したのだ。

「データに上向きのバイアスをかけてしまう、極めて大きな機関投資家サイズの動きが多くあった。そのため、導入した加重や指標は、そのような大きな送金や動きをとらえるのではなく、一般のお店のオーナーや、送金を受け取っている一般市民などの日々の活動をとらえることを目指すものであった」とグラウアー氏は説明した。

今回のレポートは、特定の地域における暗号資産利用についてより多くの知見をもたらそうとするもので、いくつかの興味深いトレンドが指摘されている。

例えばアフリカは、市場規模では世界全体のわずか3%と、世界で最小の暗号資産市場であるが、P2Pトレーディング、送金、預金のニーズがアフリカの草の根での暗号資産普及を支えていることが報告されている。

レポートによると、2020年6月から2021年7月までの期間において、アフリカの外からやって来る送金が、アフリカでの暗号資産取引高の合計の96%を占めていた。

さらに、アフリカは、ラテンアメリカや中央アジア、南アジアなどのその他の新興暗号資産市場をしのいで、(地域における暗号資産取引高の合計の中で)P2P取引が占める割合が最も大きい地域となっている。また、市場全体の7%と、個人投資家向けの暗号資産取引市場が占める割合が最も大きいのもアフリカだ。

レポートに含まれる推計は、国ごとの暗号資産データという点ではベストのものだが、多くのただし書きがついていると、グラウアー氏は指摘する。「このような方法の限界を理解することが非常に大切だ」

分析方法

チェイナリシスは今年、普及インデックスで国にスコアをつけるために、3つの指標を採用した。国が受け取る暗号資産の価値の合計、非プロ投資家が取引した暗号資産(1万ドル未満の取引のみを集計)、そしてP2P取引所での取引高だ。

しかし、これら3つの指標はすべて、一定のモノの「バスケット」を購入する個人の能力を測る1人当たりの購買力平価(PPP)で加重された。

「1人当たりのPPPに対して受け取ったオンチェーンの価値の割合が高ければ高いほど、上位にランクされる。つまり、2つの国の受け取った暗号資産の価値が同じだった場合、1人当たりのPPPが低い国の方が、上位にランクインするということだ」と、チェイナリシスは説明した。

このために、富や購買力と比ベて大きなオンチェーン暗号資産活動が見られたベトナムやケニアなどの国々は、リストの上位に位置した。

「ベトナムは全面的に強い。インドは受け取った合計価値で強く、パキスタンはP2P市場で強い。これら3カ国が、インデックスの上位を占めた」と、グラウアー氏は説明した。

グラウアー氏によると、1人当たりのPPPで加重しなければ、リストは劇的に違うものとなっていたはずだ。

「インデックスの上位は中国とアメリカになっただろう。人口の大きさと非常に高い購買力という単純な理由からだ」と、グラウアー氏は説明した。

投機的トレーディング、送金、支払い、預金など、幅広い用途に暗号資産が使えることを考えると、個人資産が少ない国の方が、暗号資産アクティビティがより目覚ましくなっている理由は不透明である。

グラウアー氏によれば、ベトナムには非常に大きなプロ投資家の市場があり、インドにも極めて大きな機関投資家市場が存在する。

P2Pのアクティビティの測定のためには、LocalBitcoinsやPaxfulをはじめとする約15のP2Pプラットフォームに流入したすべての資産を監視したと、グラウアー氏は説明した。

「そして、ウェブトラフィックを使った手法を適用した」とグラウアー氏は語り、ブロックチェーン全体を含む、それらプラットフォームの中核的ウォレットを監視していたと付け加えた。

しかし、ウェブトラフィックを使った方法にも問題点はある。例えば、ウェブトラフィックデータは、実際の場所を隠すことのできるVPN使用は含まないし、暗号資産のウェブ検索は、必ずしも暗号資産の使用に直結するわけではないと、グラウアー氏は述べる。

関心によるアクティビティのすべてがブロックチェーン上で発生するわけではなく、大半のP2P取引所では売買オーダーを見ることはできないとも、グラウアー氏は加えた。これらの要素は2つとも、データ収集や分析にとってハードルとなる。

ハイパーインフレ

チェイナリシスはまた、ベネズエラを例にとって、暗号資産普及とインフレの関係を測定しようとも試みたと、グラウアー氏は語った。

ベネズエラにおけるインフレ率は、2019年のある時点で1000万%に到達、経済の大混乱を示唆していた。CoinDeskは昨年、ベネズエラにおける暗号資産の普及について報道。人々が資産を守るための方法を探す中、ベネズエラの通貨ボリバルのドルに対する価値が急落する一方で、とりわけP2Pトレーディングが急増している実態を伝えた。

チェイナリシスのデータによると、米ドルに対するボリバルの価値が下がった2019年5月から2021年6月の間に、P2PプラットフォームLocalBitcoinsにおける取引高は一貫して上がり続けた。しかしこれは、ボリバルの価値が下がるに伴って、ビットコインを買うのにますますお金が必要になったことを示唆している可能性もあることを、グラウアー氏は認めた。

「私たちはそのことを認識している」とグラウアー氏。

そこで、暗号資産ウェブトラフィックも検討してみると、バイナンス、バイナンスP2P、LocalBitcoinsへのトラフィックも、ボリビアの下落に伴って一貫して増えていたことが判明したと、グラウアー氏は続けた。

グラウアー氏によれば、リサーチャーたちは現地のベネズエラ国民にも話を聞いた。

「ベネズエラの人々は現在、暗号資産で投機することには興味がないと語ってくれた。生活すること、生き延びることが関心事であり、必死の思いで暗号資産を使う人が増えているのだと言っていた」と、グラウアー氏は説明した。

2020年と2021年は全般的に、新興市場や発展途上国における暗号資産普及の目立つ年であり、チェイナリシスのインデックスがその証拠だと、グラウアー氏は語った。

レポートの完全版は今月中に発表予定だ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:New Chainalysis Report Reveals Who’s Leading the World in Crypto Adoption

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