メタバースの通貨とは:イーサリアムの2022年

イーサリアムは、あらゆるタイプのアプリケーションをホストするための、安全で分散化された環境を構築することに重点を置いた、スマートコントラクト・ブロックチェーンである。

2021年は、DeFi(分散型金融)とNFT(ノン・ファンジブル・トークン)が、ブロックチェーンテクノロジーから生まれる可能性を世界に見せる主役となってきた。

しかし、処理需要の変化に対応してパフォーマンスを高められるスケーラビリティプロダクトが、イーサリアムが持つ広大な可能性を解き放ち始めており、イーサリアムの生みの親であるヴィタリック・ブテリン氏は、分散型ソーシャルメディア、ゲーム、ガバナンスなどに目をつけている。

イーサリアムは、暗号資産(仮想通貨)の取引や貸付のためのマーケットプレース(ユニスワップやAave)、そしてデジタルアートのNFT販売のためのマーケットプレース(オープンシー)をホストするようになってきた。

アービトラム(Arbitrum)やオプティミズム(Optimism)など、イーサリアムの上に築かれたレイヤー2プラットフォームの登場と、ZKロールアップなどの技術的ソリューションが、取引手数料を引き下げ、レディット(Reddit)のような分散型ソーシャルメディアプラットフォームにも、イーサリアムの可能性を開放するだろう。

あらゆるユースケースに共通するテーマは、ユーザーがイーサリアムのネイティブトークン、イーサ(ETH)を保有、使用する必要があるという点になるだろう。

イーサは、 新しいアプリケーションの導入においても、既存のアプリケーションの使用においても、異なるウォレット間でのトークンの送金であっても、イーサリアムネットワーク上のブロックスペースを解き放つための鍵となる。

イーサリアムにとってのイーサは、車にとってのガソリンのようなものだ。EIP(イーサリアム改善提案)1559以降、ブロックスペースの利用者は、デジタル経済に参加するためにイーサを購入したり、焼却したりするようになっている。近い将来には、ステーキングや、ネットワークの安全確保にもイーサが使われるようになるだろう。

ネットワークを動かす燃料としての有用性から生まれたイーサは、会計単位、そして分散型取引所(DEX)における最も一般的なペアトークンとなったのだ。

メタバースにおける通貨とは?

イーサリアム、代替的ベースレイヤープロトコル(ソラナやアバランチ)、そして「メタバース」が最終的に成功を収めれば、通貨の定義は、現在の法定通貨の制約をはるかに超えた幅広いものになるだろう。

私たちはすでに、プロトコルが資金を調達し、投資家たちが自らのポートフォリオを、ドルやステーブルコイン(法定通貨に価値がペグされたトークン)の代わりにイーサと比較して測っているのを目の当たりにしている。

しかし、イーサが通貨として利用されることは、法定通貨やステーブルコイン、その他の価値の保管手段の信頼性を傷つけるものではない。単にそれらを補完するだけのことであり、イーサはメタバースの通貨となる可能性も秘めている。

イーサをはじめとする暗号資産はいまだに、ステーブルコインやドルよりも需要に対してはるかに反射的であり、(今のところは)法定通貨よりも優れた投資である。しかし、イーサリアムエコシステムが大きくなればなるほど、イーサはさらに優れた通貨となる。

現状では、投機家が実際のブロックチェーンユーザーの数をはるかに上回っているが、イーサはDeFi、NFT、検証、ソーシャルメディアなどに使えるために、花開きつつあるそのようなエコシステムが、現状に変化をもたらしている。

暗号資産取引サービスで米最大手のコインベース(Coinbase)は、第3四半期収支報告において、トークンを取引所から移動させ、ブロックチェーンテクノロジーを実際に活用する方へと、大きなシフトが見られたと、強調した。

下のグラフは、オンチェーンユーザーの数が、新しいコインベースアカウントの数と並んで増加した様子を示しており、ユーザーがイーサリアム上のアプリケーションとやり取りすることに、真に興味を持っていることを示している。

イーサリアムのメインネットに対する安価な代替オプションは、さらなる勢いを得ており、ポリゴンは10月、1日当たりのアクティブユーザーがイーサリアムを上回った。さらにアービトラムは、より安価なブロックチェーンでのやり取りを求める27万5000人のユーザーをオンボーディングした。

コインベースの承認済みユーザー(青)とイーサリアムのアクティブユーザー(青)
出典:Coinbase

資産のトークン化と、DeFiアプリケーション間のコンポーザビリティが、かつては流動性を持たなかった資産に対して、オープンで取引可能な市場を生み出し始めている。お互いに取引できたり、担保として使えたり、世界のどこにも即時に送れる資産が、所有物や価値の保管手段というよりは、一段と通貨のように振る舞い始めているのだ。

暗号資産投資会社ステーク・キャピタル(Stake Capital)の創業者で、分散型取引所カーブ(Curve)で開発者を務めるジュリアン・ブートルー(Julien Bouteloup)氏によれば、ウェブ3分野の人材たちは、ステーブルコインよりもエクイティトークンで報酬を受け取ることに、大いなる関心を見せている。

これは、強気相場と値上がりによるものかもしれないが、従業員たちはおそらく、自らが携わるプロジェクトのオーナーになることに、心から関心を持っているのだろう。

イーサの価値のこれからは?

プレーして稼ぐタイプのゲーム(Play to Earn)はまだ始まったばかりだが、イーサリアムのサイドチェーン「ローニン(Ronin)」を基盤としたNFTゲームのアクシー・インフィニティ(Axie Infinity)はすでに、何十億ドルもの年間収益を生み出している。

世界中のユーザーが、このゲームからの収入で暮らしており、フィリピンのGDPの中でも、注目に値するほどの割合を占めている。ゲームと金融のつながりはますます密接になっており、よりデジタル化された世界の1つの側面を浮き彫りにしている。

現在のトレンドが将来へと持ち越されるとしたら、世界はかつてなく金融化されていくだろう。それが人類にとってプラスとなるかどうかを判断するには時期尚早だが、暗号資産とDeFiがすでに、トークン化に伴うメリットとデメリットを垣間見せてくれている。

エアドロップ(無償のトークン配布)やエクイティ分配は(正しく行れた場合)、企業がこれまでに行ってきたよりも、より自由で公平に富を分配してきた。しかし、詐欺や攻撃によって、トークン化や匿名経済を通じて貪欲さが拡大することが明らかになってきたように、デメリットも確かにあるのだ。

善かれ悪しかれ、クレジットカードやオンライン決済の登場と、紙幣からの移行と並行したのと同様に、デジタル経済が成長するに伴って、通貨の定義はさらに曖昧なものになり続けるだろう。これは、デジタル世界と実世界の境目がますます薄くなるメタバースのナラティブと、ぴったりと一致する。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Ethereum in 2022: What Is Money in the Metaverse?