野村がDeFi・NFT・暗号資産トレード事業──海外で子会社設立へ

野村ホールディングス(HD)は5月17日、暗号資産(仮想通貨)トレーディングとNFT、DeFi(分散型金融)事業を手がける子会社を海外に設立する計画を発表した。日本の大手金融機関が暗号資産取引やDeFiなどを本格的に始めるのは初となる。

子会社の名称や所在地は明らかにしていないが、今年後半をめどに立ち上げる。当面は10~15名のスタッフで進めるが、2024年までに100名規模に拡大する方針だ。同子会社は、野村が4月に設立した「デジタル・カンパニー」のもと、ホールセール部門との共管として運営される。

同事業は海外の機関投資家・事業会社が対象で、内容は主に4つある。

①暗号資産のセカンダリートレーディング(マーケットメーキング等)

②暗号資産のステーキングと、イールドファーミングなどのDeFiサービス

③暗号資産領域におけるスタートアップのインキュベーション

④同領域におけるスタートアップへのマイノリティ投資

野村は、「グローバルネットワークを活用しながら、暗号資産、ステーブルコイン、分散型金融(DeFi)、NFTなどにわたり、最高水準のデジタルアセットフランチャイズを構築していく」と発表文で述べている。

ステーキングとは、ブロックチェーンの運用を支えるために、そのブロックチェーンのネイティブトークン(暗号資産)をネットワークに預け入れること。例えば、より優れたメカニズムに移行しようとしているイーサリアムブロックチェーンの開発においては、このステーキングの仕組みが不可欠だ。

投資家は、保有するトークンを暗号資産取引所などを通じてステーキング(預け入れる)することで、一定の報酬を受け取ることができる。米暗号資産取引所最大手のコインベース(Coinbase)も、ステーキングサービスを拡充させ、顧客数を伸ばしている。

北米を中心に拡大してきたDeFi

DeFiは、ブロックチェーン上で運営される貸付などの金融サービスで、銀行や政府などの中央集権的存在が管理していない。過去2年、北米の暗号資産市場の拡大をけん引してきたのはDeFiで、DeFiシステムに預け入れられている資金は現在、約570億ドル(DeFi Pulseのデータ)。

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)含む暗号資産全体の価格は昨年後半から大きく下落しているが、DeFiの預かり総資産額は昨年11月に一時、1100億ドルを超えた。

イールドファーミングは、貸付(レンディング)などのDeFiサービスに暗号資産を預けて、流動性を提供することで金利や手数料収入が得られるサービスのこと。

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ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨に連動するトークンで、暗号資産のグローバル市場取引においては、なくてはならないツールとなっている。時価総額で最大のステーブルコインは、米ドル連動のテザー(USDT)で、CoinMarketCapにデータによると、その規模は現在約757億ドル。

米サークル(Circle)社が発行する米ドルペッグのステーブルコイン「USDコイン(USDC)」が2番目に大きく、時価総額は約521億ドル。

野村はこれまで、フランスのLedger社などと共同でデジタル資産のカストディサービス「コマイヌ(Komainu)」の開発を進めてきた。また、社債や不動産などを裏付け資産とするセキュリティトークン(ST)の発行・流通基盤を独自に開発するなど、あらゆるデジタル資産を扱う事業基盤を整備してきた。

|編集:佐藤茂
|写真:野村HD・デジタルカンパニー長の池田肇氏/撮影・多田圭佑