Web3のGameFiに集まる世界のリスクマネー:成功する事業モデルとは

GameFiとも呼ばれるウェブ3ゲームは、暗号資産(仮想通貨)の世界を変容させ、ブロックチェーン使用の49%を占めている。2021年には、140万を超える固有のアクティブウォレットがブロックチェーンゲームを利用。ベンチャーキャピタリストたちは、GameFiに40億ドル以上を投資した。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の昨年の成長が、GameFiの発展を加速させた。ダップレーダー(DappRadar)が発表した2021年のブロックチェーン・ゲームレポートによると、ゲーム関連NFTの取引高は45億ドルを超え、2021年のNFTの売上高の20%を占めていた。

そしてその大部分は、Play-to-Earn(P2E:プレーして稼ぐ型)トークン、とりわけアクシー・インフィニティ(Axie Infinity)の驚異的な成長によるものであった。

しかし、その後に続いた反動や急速に低迷したトークン経済は、プレイヤー、開発者、そして投資家がこの新興業界を見る目を変えた。それでもP2Eは、1つの成功したゲームを基盤とした一時的ブームではなく、ゲーム内の体験と経済的インセンティブの間の溝を埋める、多くの新しいトークン経済モデルの開発、導入の場となる可能性を秘めているのだ。

起爆剤となったアクシー・インフィニティ

イーサリアムブロックチェーン上に作られたアクシー・インフィニティのトークンAXSは2021年、3万1500%の値上がりという驚異的な成長を遂げた。アクシーは、ゲーム内の革新的なトークン経済モデルを提示し、人々に素晴らしい経済的インセンティブを提供した最初のゲームだった。

アクシーでは、異なる形で価値を生む2つのトークンが使われる。AXSトークンはガバナンストークン。一方のSLPトークンは、ゲーム内で報酬として配られる。

SLPトークンは取引所で売却したり、新しいアクシーと呼ばれる生き物を繁殖させるために使うことができる。アクシーの繁殖にはどちらのトークンも必要で、NFTマーケットプレースで売却できるNFTの形でアクシーが生まれる。このような複数トークン型の経済と、その2つのトークンの交わりが、革新的な経済モデルを生み出したのだ。

しかし、ゲームの人気が、そのトークン経済に大きな圧力をかけることとなった。SLPが作られるスピードは、流通から除外される「バーン(焼却)」のスピードの5倍。そのため、SLPトークン価格は急落し、ゲームそのものが、ユーザーにとって魅力のないものとなってしまった。数千ドル相当のNFTを購入して初めて、ゲームがプレーできる状態となったのだ。

それでも、アクシー・インフィニティの30億ドルという時価総額と、年換算で12億ドルという収益は、P2Eゲームの持つ巨大なチャンスを示していた。アクシー・インフィニティの評価額は、伝統的ゲーム業界のゲーマーと企業を惹きつけるとともに、不快にさせた。

伝統的ゲーム業界のGameFiへの反応

アクシーの人気を根拠に、主要ゲームメーカーのユービーアイソフトは、ゲームNFTの収集・取引のためのプラットフォーム「ユービーアイソフト・クオーツ(Ubisoft Quartz)」を発表。

しかし、コミュニティ内のゲーマーから激しい反発を受けた。ゲームの体験自体にはほとんど何もプラスにならないNFTモデルによる、明からさまな収益狙いに、ゲーマーたちは嫌悪を感じたのだ。

アクシーのSLP価格は先月上旬、急落し、そのトークン経済モデルの持続可能性に懸念が生じた。CoinDeskの取材によると、ウェブ3ゲーム開発者の間では、アクシーのP2Eモデルは持続可能ではないという見方が広まっているようだ。

インド最大級のゲームメーカー、スーパーゲーミング(SuperGaming)の創業者ロビー・ジョン(Roby John)氏は率直に、「現在の暗号資産トークン経済モデルは、マルチ商法かピラミッドスキームのようだ。ユーザー数が少ないままか、変化しない状態では、モデル全体が崩壊する」と指摘した。

そのことは、GameFiをめぐる熱狂にはほとんど水を差していないが、真剣な開発者たちは、新たなトークン経済モデルを探し始めている。ポリゴン・スタジオのシュレイアンシュ・シン(Shreyansh Singh)氏は、マイクロローンやインゲーム資産を含め、ゲームを中心としたひとつの金融エコシステムを生み出すGameFiの可能性は、非常に大きいと考えている。しかしそのためには、モデルを一から生み出すことが必要だ。

「ウェブ2.0のエコシステムは、トークン経済の経験がなく、ウェブ3.0のエコシステムは、ゲーム開発の経験がない」と、シン氏は指摘した。

新たなGameFiモデルを求めて

複数のモデルが試されている。ウェブ3ゲーム「プロットX(PlotX)」のイッシュ・ゴエル(Ish Goel)氏は、スキルベースのP2Eゲームが、大いに普及すると考えている。ゴエル氏は、P2Eトークンを使って予測市場をゲーム化しており、初期リリースでは普及は好調だ。

ゴエル氏によれば、価値の発生と価値の破壊が、新世代のゲーム・トークン経済では重要となる。ソラナブロックチェーン上のゲーム「スター・アトラス(Star Atlas)」が、実世界と似た経済モデルを捉えていると、ゴエル氏は考えている。都市、戦艦などを作るインセンティブを伴う、戦略的で広範なメタバースゲームを生み出すことで、実世界にある土地開発や価格高騰のモデルを再現しているのだ。

インドの暗号資産取引所ワジールX(WazirX)の共同創業者シダート・メノン(Siddharth Menon)氏と、スーパーゲーミングのジョン氏は先月、テグロ・ゲームズ(Tegro Games)のローンチを発表。ウェブ2.0と3.0の要素を効果的にカテゴリー化することで、持続可能なゲームモデルを構築する計画だと、メノン氏は説明した。

テグロでは、ノン・ファンジブル・トークンとファンジブル・トークンの組み合わせで、ウェブ3ゲームモデルを第4世代までに分類。第0世代はゲームのための純粋なNFTで、取引はあまり頻繁ではない。第1世代は、より高い流動性と、ファンジブル・トークンとNFTの組み合わせのために作られている。第2世代は、予測可能な供給と長期的な流動性のためのもの。第3世代は、サービス経済や労働経済のような純粋なP2Eである。そして第4世代は、経済的ガバナンスに関係する。

「現在、主要ゲームメーカーがすべてウェブ3戦略を実施しているという、転換点に来ている。しかしその多くが、プレーヤーを持続可能に守ることのない、純粋なNFTモデルから始めている」と、メノン氏は指摘した。

ゲーム内での体験と経済的インセンティブの間で絶妙なバランスを取るトークン経済モデルの探究が続いている。ゲーム開発にかかる期間を考慮すると、この先18カ月ほどで、幅広いGameFiモデルが市場に登場してくるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:CaseyMartin / Shutterstock.com
|原文:The Game Is On: The Hunt for Web 3 Gaming Models