ビットコインとS&P500の相関関係、約1年半ぶりの高水準に──安全資産かリスク資産か、長年の議論が過熱

ビットコイン(BTC)はゴールドのような安全資産か、リスク資産かという長年の議論が過熱しそうだ。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めが不況を招くのではないかとの懸念のなか、ビットコインは株式市場の動きに敏感になっている。

アーケーン・リサーチのデータによると、ビットコインとS&P500の90日相関関係は18日に0.49%に上昇、2020年10月以来の高水準となった。「現状のビットコインとS&P500の相関関係の高さは、ビットコイン史上、前例がない」とアーケーン・リサーチは22日、ニュースレターに記した。

相関関係は米国債のイールドカーブ(利回り曲線)の容赦ない引き締めとともに高まっており、経済を不安定にすることなく、FRBがスタグフレーションを回避することは難しいかもしれないことを示している。景気後退の指標とされている10年債利回りと2年債利回りの逆転、いわゆる逆イールドはあと20ベーシスポイント(bp)まで迫っている。

つまり、ビットコインは「デジタル安全資産」という暗号資産市場の長年のアピールは、依然として実現していない。

「暗号資産は本当にファンダメンタルズ(=高インフレ)に反応していると言えればよいのだが、暗号資産は株式の上昇に反応していると考えている」とBannockburn Global Forexのマーク・チャンドラー(Marc Chandler)氏は、CoinDesk TVで語った。

株はインフレヘッジか?

伝統的金融市場の一部のアナリストは、株式は適切なインフレヘッジとして機能しているかもしれないと主張し始めている。企業は理論上、利益を守るために製品やサービスの価格を引き上げることができるためだ。

そしてこの考え方は、インフレやドル安に対するヘッジと考えられてきたビットコインを株式市場に近づける注目すべき変化となる。FRBが16日、2018年以来となる金利引き上げを決定した後、ビットコインは10%近く上昇した。この動きを、投資家がビットコインをインフレヘッジと捉えているためと見る人もいる。

しかし上昇は、株式市場の上昇に後押しされたようだ。TradingViewによると、FRBの利上げ以降、当記事執筆時点でS&P500は6%上昇、ナスダックは8.7%上昇している。

「私が興味を持っていることは、ビットコインの変化とナスダックの変化で、相関関係は60%を超えている」とチャンドラー氏は語る。「株式市場は、買いが進んでいる」。

ビットコインの上昇を牽引するものは?

Genesis Global Tradingのマーケットインサイト責任者、ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏によると、マクロ経済的な不確実性と地政学的な不確実性がビットコインは価値保存の手段となるという主張を遠ざけている。

「主な理由の1つは不確実性。ビットコインは変動が大きい資産であり、不確実性の高い時には、ボラティリティを利用することは、最も経験豊富なトレーダーでさえ思いとどまるほど難しい。現在の市場において特に顕著で、不確実性は主にヨーロッパでの紛争によって引き起こされており、紛争地域からのニュースが信頼できるかどうかわからない状況では、結果を予測することは難しい」とアチェソン氏はLinkedInに投稿している。

「金利の見通しも、市場の大きな不確実性の要因となっている。先週の0.25%の金利引き上げは、消費者の懐をすでに傷つけているインフレはもちろん、今後のインフレにも効果はないだろう」(アチェソン氏)

アチェソン氏によると、ビットコインが「現在のレンジから抜け出すためには、新たな投機、あるいは新たなマクロ投資」を必要としている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin’s Correlation to S&P 500 Hits 17-Month High