「有事の円高」から円安時代に突入、家計はリスク資産に向かうか

日本円の価値が下がり続けている。3月16日には、一時1ドル=119円台をつけ、約6年ぶりの円安となった。2月、国際決済銀行(BIS)が発表した円の総合的な実力を示す「実質実効為替レート」では、約50年ぶりの低水準を記録した。

米ドルに対して円安に進んでいく場合、日本の投資家から見たドル建て金融商品の魅力は増す。金融庁が2003年から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げるも、なかなか投資が広がらなかったといわれる日本の家計。円安が続くことで、資産は米国株式やビットコイン(BTC)などの暗号資産に移動していくのだろうか。

ビットコイン価格は3月20日時点で、4万2000ドル前後を推移している。為替の影響もあり、円ベースでは一時500万円を回復した。株式市場でも米国株の人気は根強い。大手ネット証券での投資信託の売れ筋は、米国株式に連動する商品が並ぶ。

個人投資家の記憶に残る「有事の円」

マネックス証券が個人投資家に向けて実施したアンケートでは、今後3カ月程度の米ドル円相場の見通しについて、2021年12月と2022年3月の集計結果を比較。円高が進むと予想する投資家が増えたことを公表している。

ただ、実際にはロシアによるウクライナ侵攻の最中でも、円安は続いていた。日本円はこれまで「有事の安全資産」とも呼ばれてきた。こうした記憶が、未だに残っているのかもしれない。

しかし、経済成長の鈍化などの様々なリスクが顕在化するいま、市場関係者では、やがて円高になるという考えが支持されなくなっているようにも見受けられる。

円安で資産が目減りする

ガソリンや食料品の値上がりなど、コストプッシュ要因で家計への影響が強まっている。資源を海外に頼る日本にとって、商品の値上がりが避けられない状況に陥っている。

米連邦準備理事会(FRB)は16日、利上げを決定。ECBは10日、資産購入プログラム(APP)の段階的縮小を表明し、量的緩和政策を終えようとしている。日本は、出口戦略を描けておらず、金利面で円の保有メリットは限られる。円安の進行は、現預金をはじめとした資産の価値が目減りすることを意味する。

日本総合研究所の松田健太郎副主任研究員によると、インフレ抑制へのスタンスを強めるFRBが着実に金融政策正常化を進めることに加え、資源価格の高騰に伴って日本の貿易赤字拡大を受けた円安圧力が残るという。今後も、ドル高・円安が続く見通しを示している。

(日本総合研究所 為替相場展望 2022年3月より)

日本銀行の黒田東彦総裁は18日、金融政策決定会合後に会見。引き続き大規模金融緩和の方針を維持すると発言した。

日米の株価は落ち着き

ロシアのウクライナ侵攻後のマーケットは激しい動きを見せてきたが、直近は落ち着きを見せている。ナスダック総合指数は、終値ベースで3月15日から18日まで4日続伸で週末を迎えた。日経平均株価も、週明け14日の反発から5連騰だった。

ビットコインは、リスク資産として見られる向きも強まっている。最も大きな市場は北米で、米国市場のグロース銘柄と比較されることが多い。直近のリスクオフから反転し、リスク資産にマネーが戻ってくるかに注目が集まる。

関連記事:ビットコインは単なるリスク資産になった──ヘッジファンドがレポート

年初から下げ基調のリスク資産、トレンド転換なるか

(ビットコインの過去3カ月の価格推移/coindesk JAPAN)

グロース株を中心としたナスダック総合指数をはじめとしたリスク資産は、2022年初から下げ基調が持続。ビットコイン保有者にとっても、年明けから厳しい環境が続いた。

一方で、明るい兆しも見えているようだ。bitFlyerで執行役員を務める加藤崇昭セールストレーディング室長は、「テクニカル指標では、アーク・イノベーションETF(ARKK)のように最も打撃を受けた資産のリバウンドが観測できる」という。ARKKの構成銘柄には、コインベースやテスラ、ブロック(旧スクエア)など、ビットコインと関連が深い企業が含まれる。

ただ、アメリカの金利動向が最も重要視されることは引き続き変わらない。高リスクの資産ほど、金利上昇の影響を受けやすい。「全般的な高インフレの傾向は、米連邦準備制度(FED)が引き締めを続ける理由になる」と付け加える。

|取材・テキスト:菊池友信
|編集:佐藤茂
|トップ画像:Shutterstock.com