コインチェック、ナスダックに上場へ──SPAC上場計画を発表【更新】

暗号資産(仮想通貨)取引サービスを手がけるコインチェック(Coincheck)が、米国のナスダック市場に株式を上場する計画を明らかにした。実現すれば、日本の暗号資産取引所による初めての上場となる。親会社のマネックスグループが3月22日に発表した。

マネックスグループの発表後、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の価格は上昇。BTCは18:00現在、4万2556ドルで推移し、過去24時間で3%程度の上場。ETHは3013ドルで、約4.5%上昇している。

コインチェックが計画している株式上場は、買収を目的に設立した上場会社と合併する、いわゆる「SPAC上場」と呼ばれるもの。

マネックスは22日に取締役会を開き、コインチェックのナスダック上場を決議した。上場時期などの詳細は未定としているが、計画では、まずコインチェックの持ち株会社となるコインチェックグループ B.V.(CCG)をオランダに設立する。

続いて、すでにナスダックに上場している特別買収目的会社(SPAC)のサンダーブリッジ・キャピタル・パートナーズ(Thunder Bridge Capital Partners IV)が、CCGと事業統合契約(Business Combination Agreement)を締結する計画だ。

SPAC(特別買収目的会社):上場時に株式市場から資金を調達して、原則2年以内に未上場企業を買収・合併することを目的とした会社のこと。アメリカではこの手法を使って上場するケースが増加している。空箱上場とも呼ばれる。

ティッカーシンボルは「CNCK」で、2022年内の上場を目指す。SPAC上場後も、コインチェックはマネックスグループの連結子会社に留まる。PTS市場でのマネックスグループの株価は急騰。東京証券取引所の終値比で100円高い728円をつけている。

CCGで代表を務めるマネックスグループ経営管理部長の井上明執行役員によると、当初のコインチェックの株式評価額は17.5億ドル(約2100億円)程度と見込まれているという。

当初対価としての約12.5億米ドル(約1500億円)に加え、市場の評価に応じて受け取れるアーンアウト分が5億米ドル(約600億円)にのぼると推計している。

アーンアウト(Earn Out):M&Aにおける対価の調整方法の一つであり、一括で支払うのでははなく“分割払い”で行う取引契約のこと。クロージング時における対価支払を支払い、その後一定期間内に、対象会社の業績指標の目標達成度合い等に応じて追加対価を支払う仕組みをさす。(M&Aキャピタルパートナーズ、M&A用語集より)

2018年の不正流出から復活、拡大

コインチェックは約580億円分の暗号資産が不正アクセスによって流出する被害にあった2018年、大手ネット証券を運営するマネックスグループの傘下で事業を拡大してきた。現在では、マネックスグループの稼ぎ頭に成長している。

マネックスグループの第3四半期(2021年10月~12月)決算によると、コインチェックの本人確認済口座数は153万口座で、収益は255億円。グループ収益の約4割を稼ぐ。

マネックスグループの決算説明資料では、コインチェックの事業価値を3442億円と説明していた。2021年1月~12月の営業収益が397億円だったことを挙げ、同業他社との比較で算出するマルチプル法で算出したもの。

一方、日本は暗号資産取引に対する税制が厳しく、口座を保有する個人は少数派だ。また、法人取引のニーズが顕在化している北米と異なり、日本では企業が暗号資産を保有するケースはほぼ見られない。

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)によると、2022年1月末時点での暗号資産取引に関わる口座数は約560万口座。一方、アメリカ最大の暗号資産交換業者であるコインベースの1社のみで1140万ユーザーにのぼる。

暗号資産取引サービスで初めて上場したのはコインベースだ。2021年4月14日に上場し、終値ベースの時価総額は約650億ドル(約7兆1000億円)。当時、ビットコイン価格は6万3000ドル近辺で高値水準を記録していた。2022年3月21日終値ベースでのコインベースの時価総額は388億ドル。

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暗号資産取引を軸に事業を多角化

コインチェックは暗号資産取引事業だけでなく、市場規模の拡大が予測されるNFT事業の拡大を進めている。1月には、ブロックチェーンベースのメタバース「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」上に近未来都市を開発する計画も発表した。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲーム、動画などのコンテンツの固有性を証明することができる。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。

さらに、2021年7月には、日本で初めてIEOを実施。HashPaletteが開発する次世代ブロックチェーンプラットフォーム「Palette」への資金を募った。調達資金が10億円だったのに対し、申込金額は224.5億円にのぼった。2022年夏までに第二弾の実施も計画している。

IEO:暗号資産を活用した資金調達の手法。発行体企業がデジタルトークンを投資家に販売して、そのトークンを暗号資産取引所に上場させて資金を調達する。
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SPAC上場では、USDコイン(USDC)を運営するCircleが間近と見られている。USDCは、コインベースと共同で開発したドルに連動するステーブルコイン。時価総額は約472億ドル(約5兆4280億円)で、テザー(USDT)に次ぐ。

米・マイニング事業者「コア・サイエンティフィック(Core Scientific)」は、すでSPAC上場を果たした。通常の上場よりも比較的簡単な手続きで上場できることが特徴だ。

|取材・テキスト:菊池友信
|編集:佐藤茂
|トップ画像:Shutterstock.com
|編集部より:マネックスグループへの取材内容などを加えて、記事を更新しました