反クリプト公開書簡に反論する【オピニオン】

反クリプト公開書簡に反論する【オピニオン】

暗号資産(仮想通貨)業界の実際の規模を測るための方法のひとつは、その面積を測ることだ。奇妙に聞こえるかもしれないが、この人工的なデジタル資産クラスは、確かにその占有面積を拡大している。

ニューヨーク・タイムズ紙は先日、『The Crypto Bros Are Snapping Up Manhattan Real Estate(クリプトの連中がマンハッタンの不動産を買い占めている)』と題された記事を発表。タイトルに比べて、記事の中身はそれほど力強いものではなかったが、この急速にプロ化する業界に対する考察を提供してくれたのは確かだ。

「暗号資産企業やその関連企業が、アメリカの推定44億平方フィートの事務所スペースに占める面積は、100万平方フィートに及ばない」と、記事は指摘する。さらに、多くの不動産会社は、オフィススペースを探す暗号資産企業を、破綻する可能性のある危険の高い賭けとして見るのではなく、「家族経営」の小規模事業を見るのと同じような目で見ている。

これは健全な態度のように思われる。暗号資産はリスクは高いが、一部の人たちにとっては、確かな経済的チャンスなのだ。

26人の声

これを、別の現実と比べてみよう。26人の憂慮したテクノロジー専門家、作家、学者たちが米議会に、暗号資産「業界に対する批判的で懐疑的なアプローチ」を求める公開書簡を準備した。

とりわけ、一部の暗号資産業界人による虚偽の主張や、蔓延する搾取的なプロジェクトが批判の対象となっている。この書簡は、アメリカの政治の場における、暗号資産業界のロビー活動の高まりに対抗することが目的であり、おおむね公平な意見だった。

「自分達の専門分野における深い知見を持ったソフトウェアエンジニアや技術専門家として、ブロックチェーンテクノロジーの奇抜さや可能性についてここ数年で述べられてきた主張に意義を唱える」と、書簡には書かれている。

決してひとつのまとまった声とはならない暗号資産界からの反応も、抑制されたものだった。専門家であっても、26人の人間が業界全体について語ることはできないと主張する人。「すべてのイノベーションが無条件に良きものではない」という、暗号資産界の誰も主張したことのないような文言を使うなど、論点をすり替えるような論法に疑問を呈する人もいた。

暗号資産を推進する人たちの多くは暗号資産に投資しており、そのために意見に偏りがあるという書簡の主張は正しいが、同じことは彼らに対しても言える。例えば、ロンドン在住のソフトウェアエンジニアで、「パブリックブロックチェーン」を長年批判してきたスティーブン・ディール(Stephen Diehl)氏は、「エンタープライズブロックチェーン」企業から長年報酬を受け取っている。

書簡の署名人の中には他にも、マイクロソフトやアップルなど、巨大テック企業で働いた経験があったり、現在も働いている人たちがいる。そのような大手テック企業は、暗号資産のオープンソース精神がそのマーケットシェアや、プライベートソフトウェアの事業分野に挑んできたら、負けてしまう可能性があるのだ。

さらに、暗号資産の用途は「良くてもいまだに不透明、悪ければ存在しない」という主張は、完全に真実を根拠としているとは言えない、かなり強い意見だ。ツールは開発され、実際に使われており、ビットコインは13年連続で続いている。暗号資産は周縁で繁栄する、というだけのことだ。

多くの場合、暗号資産は謳われている通りに機能する。「検閲耐性を持った」取引手段としてだ。それを中心に成長するあらゆる金融・文化のツールは、そのシンプルな前提を肝に銘じるべきだ。暗号資産がそれをしない時に、問題が起こるのだ。

イーサリアムの生みの親ヴィタリック・ブテリン氏は、この書簡に対する反応をツイートした。かつては「仲間」と考えていた人たちが、イーサリアムや暗号資産業界全体に敵対するようになったことに、ブテリン氏はとりわけ困惑している。SF作家でジャーナリストのコリー・ドクトロウ(Cory Doctrow)氏を名指ししているが、他のオープンソース推進派も含まれているのかもしれない。

ドクトロウ氏はかつて、暗号資産をゆるやかに支持していたが、業界の金融化や、人間存在のあらゆる側面を、暗号資産が金融化してしまう可能性をますます懸念するようになっている。つまり、友情を利益ゲームに、私たちの公のデータを収益化可能な製品に変えてしまうことを憂慮しているのだ。

暗号資産の核心

暗号資産が「大衆への普及」という目標に狙いを定めてしまったとしたら、それは確かに深刻な懸念であると、私も思う。ブロックチェーンはそのような用途のために作られたのではなく、現行のテクノロジーではそのようなレベルまで拡大することはできない。

しかし、取引のファイナリティ(確定)、不可逆性、利用コストを考えると、ブロックチェーンは最も必要とする人たちがアクセスを確保できるようにする点において、極めて優れているのだ。

書簡の署名人たちは、規制の強化を求めてはいない。しかし、ベンチャーキャピタルや個人投資家による投機によって不自然なペースで、身の丈に合わないほど大きく成長しすぎてしまった場合、それが論理的な結末となるだろう。

このような主張や、26人の専門家たちと同意しようがしまいが、そんなことは重要ではないということを知っておこう。議会に向けて意見を表明する中で、あるいは政府からの報復を恐れてか、彼らはすでに、重要なポイントを見失っている。暗号資産の本当の核心部分は、投機バブルに囲まれていても、失われてはいないのだ。

政府は、止めることのできない、完全に自立した取引をサポートするはずでは最初からなかったのだ。このようなシステムを皆が使いたがることはないが、暗号資産は自発的な普及によって成長する。ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのポール・ディラン-エニス(Paul Dylan-Ennis)教授に言わせれば、既存の問題を抱えた世界から、スペースを「切り開く」ということなのだ。

「すべてを解決することはできないが、『すでに自由であるかのように生きる』ことはできるのだ」と、教授は主張した。

コンテンツ配信プラットフォーム、サブスタック(SubStack)のライター、ケイシー・ニュートン(Casey Newton)氏は昨年の冬、テックやテックジャーナリズムの世界で起きている「雰囲気のシフト」について語った。テックにまつわる市民や国の懸念事項は、巨大テック企業の効果的な規制を中心としていたのが、今はそうではない、と言うのだ。

雰囲気のシフトによって、ウェブ3などの世界で、解決策をどのようにゼロから開発できるか、に重点が置かれるようになった。ライターも市民も政府も、これを懐疑的に見守る責任がある、とニュートン氏は語る。しかし人々は、「アメリカ主導のテック規制の取り組みが失敗に終わると想定し、ジャーナリズムのリソースをそれに合わせて分配する」ようにも、ニュートン氏は提案している。

それは、占有面積のかなり狭い業界にとっては、実践的なアドバイスだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Responding to the 26 Anti-Crypto Technologists

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