デジタルドルは「荒唐無稽なアイデア」:米サークル幹部【Consensus 2022】

パネリストの1人が冒頭の発言で「F**k the Fed」と言ったとき、激しい討論になることは明らかだった。

9日、テキサス州オースティンで米CoinDeskのイベント「Consensus 2022」が開幕。発言はビットコイン支持者のものではなく、ウィラメット大学法学部教授で暗号資産業界を激しく批判しているローハン・グレイ(Rohan Grey)氏のものだ。

同氏は、現行の銀行システムに対する敵意をビットコイン支持者と共有しているが、デジタル時代に銀行システムをリプレースする方法についてはまったく異なるアイデアを持っている。

違いは、米連邦準備理事会(FRB)はデジタルドル、つまり中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行すべきか、あるいは民間部門に委ねるべきかの議論で浮き彫りになった。

米ドル連動型ステーブルコインを手がける米サークル・インターネット・フィナンシャル(Circle Internet Financial)のダンテ・ディスパルテ(Dante Disparte)氏は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を「荒唐無稽なアイデア」と呼んだ。一方、グレイ氏は民間の取り組みは失敗した場合に、納税者を窮地に追い込むことになると警告した。

FRBが独自のデジタルドルを発行することは「米連邦航空局がジェットエンジンを作って飛行機を飛ばすことと同じアイデアだ」とディパルテ氏は述べた。「我々はアカデミックな抽象論としてやっているわけではない。現実のために行っている」。

だがグレイ氏は、サークルは責任を持たない民間会社だと反論した。「万一潰れたら、損失は国民が負担することになる」。

FRBのラエル・ブレイナード副議長は最近、FRBがデジタルドルを発行するか否かを決定するには、議会とバイデン政権の支持が必要と述べた。FRBがデジタルドルを発行することになった場合、導入には少なくとも5年はかかるだろう。デジタルドルの保管と取引は、やはり民間銀行の口座を通じて行われ、FRBが直接、口座を持つことはないだろうと同氏は語っている。

ディスパルテ氏は、アメリカは中国のCBDC、デジタル人民元からプレッシャーを受けていると主張した。

グレイ氏は民間によるステーブルコイン発行について「自由市場に基づく資本主義ではない。新世代の縁故資本主義だ」と述べた。

暗号資産銀行Custodiaの創業者兼CEOのケイトリン・ロング(Caitlin Long)氏は、FRBはドル発行の最後の決定権を持っていることを指摘。同氏は、分散型金融(DeFi)は従来の金融システムから離れて成長しており、DeFiと従来の金融システムの間でお金をやり取りする方法はまだないと述べた。

ロング氏は、アメリカは「この新しい、優れた決済手段を受け入れるべき」と主張した。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:Circle’s Disparte Calls CBDCs ‘a Preposterous Idea’ in Digital Dollar Debate