強気相場へのお別れパーティーに2万人、暗号資産の冬の冷え込み強まる

世界最大のブロックチェーンイベント「コンセンサス 2022(Consensus 2022)」が始まる前、到来していた暗号資産の冬の冷え込みが強まった。

米CoinDeskが主催したコンセンサス 2022のためにテキサス州オースティンに2万人ほどが集まるわずか数週間前、ステーブルコインterraUSD(UST)が暴落。各種トークンが相次いで値下がりし、暗号資産(仮想通貨)全体の時価総額は800億ドル以上下落した。暗号資産取引所コインベースは採用にブレーキをかけ、内定すらも取り消した。

市場の冷え込みが強まっているにも関わらず、もしくはだからこそ、コンセンサスは大盛り上がりとなった。

4日間にわたり、参加者は食べ、飲み、お祭り気分を楽しんだ。様々なホテルで開かれた人脈作りのためのセッションから、ハッカソンへと、スクーターに乗ってテキサスの暑さの中を参加者は移動。

メイン会場となったオースティン・コンベンション・センターでは、エドワード・スノーデン氏から、取引所FTXのサム・バンクマン-フリードCEO、ラッパーの2チェインズまで、暗号資産やクリプトカルチャーの世界の大物たちが参加する各種討論会が開かれた。

参加者たちは、米CoinDeskのソーシャルトークンDESKを熱心に集め、食事の支払いに利用。夜には、エレクトロニックミュージックデュオのDisclosureが出演したものなど、様々なアフターパーティーでのドリンクの支払いにDESKが使われた。

急成長するヘリウム(Helium)プロトコルがスポンサーを務める「Helium House ATX」など、関連イベントも盛況だった。バイナンスなどの企業がスポンサーとなったディナーやパーティーにも大勢が集まり、業界団体コイン・センター(Coin Center)主催のディナーなどの招待制イベントでは、業界関係者が規制当局者や投資家たちと交流した。

振り返ってみると、コイン・センターのディナーは「最後の晩餐」のようであり、燃え盛る火の中でコーヒーを飲む犬のミーム「This is Fine(大丈夫)」にインスピレーションを受けたテーマは、未来を予見したもののように感じられる。

6月12日の朝、バイナンスの創業者兼CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏のインタビューで、コンセンサス 2022は幕を閉じた。来るべき暗号資産の冬を凌ぐだけの「健全な資金」を持っているというジャオ氏の宣言には、聴衆から歓声が送られた。

その日の夜、暗号資産レンディングサービスを手がけるセルシウス(Celsius)が、資金の引き出しを始めとする一部サービスを一時停止。市場はパニックに陥った。

13日には、ビットコイン(BTC)価格は暴落、14日には2万843ドルまで下落した。同じ日、コインベースは大規模な人員削減を発表。従業員の20%近くを解雇し、約1100人が職を失う。

暗号資産の冬の雪が吹雪に変わる中、コンセンサスは参加者に、一時的に嵐をしのげる場所を提供した。人々が集まって友人と再会し、話をしたり、将来の計画を立てる暖かな暖炉前の場のような存在となったのだ。

強気相場の「WAGMI(誰でも成功できる)」という楽観主義は急速に衰えているが、少なくともオースティンでは、楽しい時間が過ごせた。

DESKトークン

米CoinDeskのソーシャルトークンDESKは、今年のコンセンサスでブロックチェーントークンとして本格デビューした。

ベータ版は昨年、オンライン開催となったコンセンサスで使われた。様々なセッションに参加することで獲得でき、CoinDeskグッズやNFT(ノン・ファンジブル・トークン)と交換ができたこのベータ版は大人気で、自称「ピラニア」と呼ばれる熱心なファンたちが生まれたほどだ。

オースティンでピラニアたちを喜ばせるために、CoinDeskではDESKをこれまで以上に発展させ、イーサリアムのテストネットという実験的な環境から、実際に運用されているブロックチェーン、ポリゴン(Polygon)へと移動。DESKの使い方を教えるための対面イベントも開催した。

DESKは、会場のあちこちに貼られたQRコードをスキャンするか、様々な場所でセルフィーを撮影するなど、各種チャレンジを完了させることで獲得可能だった。

参加者の20%以上がDESKを使用し、食事、飲み物、グッズ購入で約20万トークンが使われた。会場では、DESKのTシャツを着たボランティアが、困った参加者に助けの手を差し伸べた。

しかし、すべてがバラ色だった訳ではない。他の人がDESKを獲得できないよう、QRコードを剥がす欲張りなピラニアも出現。偽の「DESK増幅」QRコードを貼って、DESKユーザーのウォレットの中身を盗み出そうとする詐欺師たちもいた。

DESKであっても、「自分でしっかりリサーチする」という、暗号資産界に昔から伝わるアドバイスが大切であったようだ。

派手さも健在

コンセンサスは常に、派手なショーのチャンスを提供してきた。約8000人が参加した2018年には、会場前に数台のランボルギーニが駐車されたことで話題となった。

今回オースティンでは、ランボルギーニは見られなかった。代わりに、さらに高価なマクラーレンが登場したのだ。暗号資産インフルエンサー、ジュリア・ラブ(Julia Love)がヒルトン・ホテル前に、何百ものドージコインの柴犬の顔がペイントされたマクラーレンを停めると、大勢が集まった。

10日に行われた「クリプト:ミュージカル(Crypto: the Musical)」のデモ版も、壮大だった。暗号資産マーケティング企業セロトニン(Serotonin)のCEOアマンダ・カサット(Amanda Cassatt)氏が企画した、ブロードウェイを目指すこのショーは、「企業の世界を逃れ、暗号資産スタートアップに加わるある女性の軌跡」が題材となっている。

このショーのクリエイティブチームと出演者たちは、資産が証券かどうかを見極めるために米最高裁判所が考案した「Howeyテスト」を題材にした歌など、ショーに登場する2つの歌を披露した。

さらに今年は、暗号資産投資家、インフルエンサー、アーティストが一堂に会し、ダンスをしたり、慈善団体のための寄付金集めを行なう初の準正装イベント「MetaGala」も開かれた。

暗号資産で活気付いたオースティン

今年のコンセンサスは、初めてオースティンで開かれた。これまでは、ニューヨーク、あるいは新型コロナウイルスのためにオンラインで開催されてきたのだ。オースティンは、このイベントにぴったりの会場であることが判明した。

オースティンの雰囲気は、暗号資産と上手く調和し、参加者たちは、この街のエンターテイメントや文化を楽しんだ。地元の有名レストランで食事を楽しんだり、市民の憩いの場となっている公園の湧水でできたプールで涼を味わったりした。

イベント最終日には、オースティンのスティーブ・アドラー市長が米CoinDeskの最高コンテンツ責任者と共に、コンセンサスが来年もオースティンで開かれることを発表。しかし、38度近い暑さを避けるために、開催時期は6月から4月下旬へとずらされる。

オースティンの暑さは過酷だったが、解雇、値下がり、一度は飛ぶ鳥を落とす勢いであったレンディング会社の破産の可能性のニュースを見れば、参加者たちはその熱気を懐かしく思うかもしれない。

コンセンサスは寒さから逃れられる束の間の休息であった。しかし、もう終わってしまった。暗号資産の冬がやって来る。寒さに備えて、着込んでいこう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Consensus 2022のクロージングパーティー(CoinDesk)
|原文:Consensus 2022 Was the Crypto Bull Market’s Goodbye Party