dYdX、一般ユーザー向け取引手数料をゼロ──No.1のDEXを目指す

暗号資産(仮想通貨)のデリバティブ取引サービスを中心に展開する分散型取引所(DEX)のdYdXが、一般ユーザー向けの取引手数料をゼロにする。世界No.1のDEXを目指し、ユーザーのさらなる拡大を図る。

dYdXは8月1日(米国東部時間)、月に10万ドル以下の取引を行う「平均的な」ユーザーに対する取引手数料を撤廃すると同社のブログで発表した。月の取引額が10万ドルを超える、いわゆるプロトレーダーに対しては引き続き現行のレートが課される。

トレーダーが利用するために最適なUI・UXを重要視し、dYdXは今年7月で設立から5年目を迎えた。ノンカストディアルで、仲介業者を介さないピアツーピアのDEX開発を進めてきたdYdX TradingのCEO、アントニオ・ジュリアーノ(Antonio Juliano)は、次の5年間でNo.1のDEXを目指すと述べる。

設立5年目に大胆な戦略を打つdYdX

7月28日に公開された「5周年を迎えて」と題する文書によると、過去5年間でdYdXで取引された額は6300億ドル(約83兆円)を超え、ユーザーの数は約59,000人。ファンド運用会社やプロトレーダーも利用する。

インフレが進み、中央銀行による金融緩和が引き締め政策に転じようしていた昨年の終わり、世界の暗号資産市場ではDEXにおける取引量の増加が注目を集めた。暗号資産やテクノロジー株などのリスク資産から多くの資金が引き揚げられ、大手暗号資産取引所が苦戦を強いられる中、DEXの取引量は今年1月に過去最高を更新した。

昨年4月に米ナスダックに上場した米大手取引所のコインベースは上場申請の書類の中で、DEXは将来的に現実的な脅威となる可能性があると述べている:

「我々は、増え続ける分散型でノンカストディアルなプラットフォームと競争している。我々のビジネスは、もしそれらと効率的に戦うことができなければ、悪影響を受ける可能性がある」

「そうしたプラットフォームは、市場参入にあたって規制されていないことが多く、立ち上げコストや参入コストが低い。また、運用コストや規制コストが最小限に抑えられている」

そのコインベースでCEOを務めるブライアン・アームストロング氏は、dYdXに出資を行ってきた投資家リストに載る一人でもある。

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激化するDEX vs. CEXの競争

dYdXの手数料ゼロ戦略に関連して、大手取引所のバイナンスは7月、13の取引ペアの取引手数料を無料にすると発表。その直後、バイナンスにおけるビットコイン/テザー(BTC/USDT)の取引高は急増した。市場の弱気相場が続く中、バイナンスなどの暗号資産取引所は一定のユーザー基盤を維持するための方法を模索する。

dYdXが得意とするサービスの1つは、パーペチュアル(Perpetual)と呼ばれる暗号資産のデリバティブ取引。原油や穀物、金属などのコモディティ(商品)市場では一般的な先物取引に似ているが、暗号資産市場で派生した取引形態だ。

また、dYdXは先月、イーサリアムのエコシステムを離脱し、コスモス(Cosmos)エコシステムに独自のブロックチェーンを開発するという大胆な計画を発表した。取引手数料の仕組みや取引速度をより簡単にカスタマイズできる仕様に変え、トレーダー顧客のエクスペリエンスをさらに向上させる。

dYdXのプラットフォームは現在、イーサリアムのスケーリングソリューション(Layer2)であるスタークウェア(StarkWare)の上に開発、運用されている。

「暗号資産・冬の時代」と呼ばれる2022年、DEXはさらなる商品開発と取引プラットフォームの改善を進め、コインベースやクラーケンなどのCEX(中央集権型取引所)との競争は激化することが見込まれる。

dYdXのジュリアーノCEOは、「分散型金融(DeFi)は未来であり、dYdXは実現できる未来のほんの一部を作り上げたに過ぎない。我々のプロダクトと企業はこれからさらに多くの点で進化できる。10周年を迎える2027年のdYdXの姿を想像すると、興奮すら覚える」と、「5周年を迎えて」の中で述べた。

|編集:佐藤茂
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