Mergeを前に取引手数料が低下したイーサリアム、問題点も?

Mergeを前に取引手数料が低下したイーサリアム、問題点も?

待望の大型アップデート「Merge(マージ)」を前に、イーサリアムブロックチェーンの取引手数料がここ2年間で最低水準まで低下している。ちなみにMergeは、イーサリアム(ETH)価格を押し上げる要因となっていると考えられている。

取引の平均コストは現在、12.5gwei以下。gweiとは、ガス代と呼ばれる取引手数料を表すことに使われる、イーサリアムのとても小さな単位だ。12.5gweiは、7月末の半分以下となる。

ガス代とともに需要も低下

イーサリアムユーザーには朗報だ。ユーザーは長年、ガス代について不満を述べてきた。しかし、ガス代下落の恩恵を受けるユーザーは一段と少なくなっている。コストだけでなく、需要も低下しているからだ。

利用の落ち込みにも関わらず、イーサリアムそのものは、ますます強気の投資先と考えられている。開発者たちは、ネットワークを来月、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)へと移行させる予定を正式決定した。これによって、コスト体系は劇的に変化。ネットワークはより効率的になり、手数料も安くなる。

PoS移行によって、ネットワークがデフレ的になると考える人もいる。いずれは発行量よりも多くのトークンが焼却されるようになり、保有するイーサリアムの価値が高まるというわけだ。現在、ビットコイン(BTC)とは違い、上限が決められていないイーサリアムの総供給量がいくらなのかを知る人は一人もいない。

しかし、DeFi(分散型金融)やウェブ3に特化したメディア「The Defiant」のサミュアル・ハイグ(Samual Haig)氏が指摘したように問題もある。

想定外の問題?

利用が低下しているということは、ネットワークが焼却するトークンの数も減少していることになる。ハイグ氏はこの点を指摘して、買いの一因となっている可能性もある「デフレストーリー」に疑問を呈している。

イーサリアムは「ultra-soundな通貨」と主張するイーサリアム支持者たちは多い。「ワールド・コンピューター」を支える通貨であるだけでなく、「デジタルゴールド」といわれるビットコイン(BTC)のライバルとなる投資先でもある。暗号資産取引所コインリスト(CoinList)も、Mergeはイーサリアムをデフレ的にする可能性のある「根本的な構造的変化」だと考えている。

ultra-soundな通貨:供給量の上限が決められているビットコインは「sound:堅実」な通貨といわれる。であれば、供給量が減少するイーサリアムはビットコインを上回る「super-sonic:超音速」あるいは「ultra-sound:超音波」な通貨だという、「音」の意味も持つsoundにかけた表現。

イーサリアム開発者たちは昨年、ネットワークコスト軽減のために、EIP(イーサリアム改善提案)-1559を発表。流通するイーサリアムを減らすための焼却メカニズムを導入した。これは、取引手数料の一部を焼却することによって行われ、その量はブロックスペースやオンチェーンアクティビティにもとづいて変化する。

EIP-1559以降、イーサリアムは確かにデフレ的な時期を迎えた。これは通常、市場の値上がりと相関関係を持っているが、NFT発行と相関関係を持つこともある。

例えば、これまでで最もアクティブなNFT発行となったユガ・ラボ(Yuga Labs)による「Otherdeeds」の発行後、約5万8000イーリアム(当時、約1億6000万ドル相当)が焼却されたとハイグ氏は指摘した。

Merge後のイーサリアム

しかしここ1週間で焼却されたのは、わずか7500ETH。利用の低下によって、これまででも最低の水準となっている。このトレンドが続けば、イーサリアムはMerge後にデフレ的にはならないだろうとハイグ氏は考えている。

「焼却スピードをMerge後のイーサリアム発行のスピードに間に合うようにするためには、ブロックスペースに対する需要は現在の水準から約3分の1増加する必要がある」とハイグ氏は指摘した。

イーサリアムガス代平均の推移

イーサリアムが決してデフレ的にならないというわけではないが、チャートを俯瞰すると、現在の手数料安/低利用は、イーサリアムが強気相場から出て行っている状態のように思われる。2017年のネットワーク誕生から2020年半ばまでは、ネットワーク手数料はおおむね、20gweiを下回っていた。

それが変化したのは、「DeFiの夏」と呼ばれるイールドファーミングブームが始まった時だ。平均取引手数料は過去最高の700gweiまで上昇した。それ以来は下降傾向が続いている。

興味深いことに、人気ブロックチェーンゲーム「CryptoKitties」によってイーサリアムが混雑したことを受けて、PoS開発が加速した2017年から2018年の強気相場は、取引手数料にほとんど反映されていない。

過去のネットワーク手数料のデータは、実際の利用を完璧に反映しているわけではない。とりわけ、これまでにイーサリアムの発行やコスト体系にどれほどの変化があったかを考えれば、なおさらだ。

さらに、PoS移行が需要にどのような影響を与えるかは、まったくの未知数。コストは下がるが、現状でわかっているとおり、それだけでは、人々が取引を実行しようと押し寄せてくるわけではない。

もしかしたら、暗号資産について興味津々だったが、カーボンフットプリントへの懸念から使うことをためらっていた人で、イーサリアムは溢れかえるかもしれない。

今のところ言えるのは、イーサリアムを使うコストは現在、弱気相場の頃の平均に近づいているということだけ。それが、Merge後のイーサリアムのデフレ度は、今と同じ(つまり、需要に応じた散発的なものになる)ことを意味するのなら、それも良いだろう。前回のブーム時にCryptoKittieに手が出なかった人は今が買い時だ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ethereum Is Getting Cheaper to Use, Even Before the Merge

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