クレディ・スイス、顧客の暗号資産3200万ドルを保有──伝統的金融機関、暗号資産カストディに近づく

クレディ・スイス(Credit Suisse)は規制当局への提出書類によると、第2四半期末時点、数千万ドルの顧客の「デジタル資産」を保有していた。伝統的金融機関が暗号資産カストディ(保管・管理)事業者に近づいている事実が明らかになった。

クレディ・スイスは第2四半期の財務報告書に、3100万スイスフラン(約3200万ドル、約45億円)の「デジタル資産」を保有していると記した。だが、詳細は明らかにされていない。なお、前2四半期はデジタル資産の保有は報告されていない。

「デジタル資産」は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のような暗号資産ではなく、スキーリゾート運営企業の株式をトークン化したもの(デジタル証券)である可能性が高い。クレディ・スイスは、SEC(米証券取引委員会)の会計ガイダンスに従って、デジタル資産の保有を明記したと関係者は述べた。

SECの「SAB121」は、顧客の暗号資産をカストディ(保管・管理)する企業に対して、バランスシート上で資産と負債の双方として記載するよう指示している。SECは、暗号資産カストディの「きわめて大きなリスク」を強調するために、3月にこのガイダンスを発表した。クレディ・スイスは第2四半期の財務報告書に、SECの会計ガイダンスに従っていると記している。

しかし、クレディ・スイスが明らかにしたのは金額のみで、保有する暗号資産の「性質の明確な開示」というSECのガイダンスの要求を見落としたようだ。詳細を明らかにしなかったことは、若干の混乱を生み出している。

クレディ・スイスはコメントを控えた。

シティグループ、BNYメロン、ゴールドマン・サックス、ステート・ストリートなどの大手銀行はすべて、直近の四半期財務報告書でSAB121に対する謝意を示した。おそらく各行が暗号資産カストディを計画するうえで、好都合だったのだろう。とはいえ、これらの銀行は第2四半期に暗号資産の保有を計上していない。

暗号資産取引大手の米コインベース(Coinbase)など、複数の暗号資産企業も、新しいSEC規則に準拠して暗号資産に関するリスクを報告し始めている。

コインベースは、同社が倒産した場合、顧客は資産を失うリスクがあると記したことで話題を呼んだが、ブライアン・アームストロングCEOはのちに、SAB 121に沿った純粋に形式的なものと述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:Credit Suisse Held $31M in ‘Digital Assets’ for Clients Last Quarter