イーサリアム、PoS移行でむしろ中央集権化の懸念

Merge完了後の数時間、イーサリアムブロックの40%以上がわずか2つの事業者によって追加された。リド(Lido)とコインベース(Coinbase)だ。

プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行は、ネットワークの中央集権化を打破すると考えられている。しかしMerge後の動向は、そうした希望は実現しないかもしれないとの懸念を引き起こしている。

「直近1000ブロックのうち、420ブロックがリドとコインベースによるもの」とイーサリアムインフラ企業グノーシス(Gnosis)の共同創業者マーティン・ケッペルマン(Martin Köppelmann)氏はツイートした。

同氏は、わずか7つの事業者がPoSネットワークにステーキングされたイーサリアム(ETH)の3分の2以上を所有していることに触れた。コミュニティ主導のステーキングサービスであるLido(リド)と、暗号資産取引大手のコインベースはそれぞれ27.5%、14.5%を占めている。

中央集権化への懸念

PoSに移行したイーサリアムブロックチェーンでは、バリデータになるには32ETHをステーキングする必要がある。つまり、当記事執筆時点では約5万ドル(約720万円)が必要なうえに、高度な技術力が求められ、実質的にバリデータになれる人は限られている。

その結果、コインベースやリドなどが提供するサービス──あまり手間をかけずにバリデータとなり、報酬を得ることができるサービスにイーサリアムが流入している。

これほど多くのイーサリアムが少数のサービスに流入していることは新たな懸念につながる。仮に単一の事業者がステーキングされたイーサリアムの66%以上を占めれば、ネットワークで圧倒的な力を持ち、他の事業者がブロックチェーンにアクセスできなくなる可能性もある。

バリデータの中央集権化に対する懸念は以前からあったが、先月、アメリカ政府がミキシングサービスのトルネードキャッシュを制裁対象に加えたことで、より現実的なものになっている。

「この状況は統合であり、統合は中央集権化。非常に危険だ。なぜなら取引所は政府の管理下にある。イーサリアムブロックチェーンは今、間違いなく『取引検閲』の対象になっている」と暗号資産レンディングプラットフォームSmartFiの幹部、クリス・テリー(Chris Terry)氏は述べた。

中央集権化の懸念から、PoSに移行したイーサリアムをまさにブロックチェーンが回避しようとした中央集権的な法定通貨にたとえる人もいる。

「イーサリアムは今、中央の計画者のコントロール下で設定されたパラメータによってのみ、デジタル的に作成されている」とマイニング関連企業Ancovaの共同創業者マックス・ガグリアルディ(Max Gagliardi)氏はツイートした。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:Ethereum Already Showing Signs of Increased Centralization