Image courtesy of Ledger

【独占】ハイパーレッジャー統括:ブロックチェーンからGAFAは生まれない

Brady Dale
公開日:2019年 8月 6日 07:00
更新日:2019年 8月 6日 07:00

IBMやインテルなどの名だたる企業が参加して開発を進めるオープンソースのブロックチェーンプロジェクト、Hyperledger(ハイパーレッジャー)。個々のプロジェクトはおよそ14を数え、その技術を活用するために加盟する企業は270社を超える。

ハイパーレッジャーのプレミアメンバー18社

そのハイパーレッジャー・プロジェクト全体を統括する非営利組織がある。Linux Foundationと呼ばれる、インターネットの歴史と共に歩んできた財団だ。例えばスマートフォンのAndroid OSは、グーグルがLinuxをベースに開発したものだ。同財団の推進する技術は、日常のシーンになくてはならないものになっている。

ハイパーレッジャーは7月30・31日の2日間、都内で年に一度のメンバー・サミットを行った。ハイパーレッジャーが日本で同イベントを開いたのは、今回が初めて。CoinDesk Japanは、ハイパーレッジャーを統括するエグゼクティブ・ディレクターのブライアン・ベーレンドルフ(Brian Behlendorf)氏に話を聞いた。

リブラをやるのは、我々ではない

──ハイパーレッジャーの目標は何ですか?

各企業の協業のために必要なインフラになることだ。市場や業界には、非常に難しい協業の問題がある。例えばサプライチェーンにおける追跡可能性だ。

原料や製品を追跡するために、誰かが管理する大きなデータベースを置いて「それを信じなさい」と言っても、多様な参加者がいる中で信じたいと思う企業はいない。分散化されたデータベースで、各社がプロセスごとに製品を追跡・相互検証していくことが求められる。

具体的には、原材料の採掘企業からスマートフォンを製造するメーカーまで、素材を追跡するプロダクトがある。製品を消費者に届けるまでには、複数の国境を超え、複数の企業や業界を超えた、さまざまな協業の課題がある。ハイパーレッジャーならばそれを解決できる。

銀行をディスラプトすると言われるプログラマブル・マネーのことではない。いわゆる仮想通貨をやろうとは思わない。フェイスブックのリブラのようなことは、我々はやらない。その他のすべてのことをできるものだ。

たった一つのハイパーレッジャー・ソリューションにはならない

──オープンソースであることは、何を目的にしていますか?

オープンソースのソフトウェアならば、たとえ競合他社であっても、協業のための共通のフレームワークを提供してくれる。その共通のフレームワークの上で、それぞれの差別化した実装を構築できる。

複数のベンダーが集まってハイパーレッジャーがスタートした理由は、そこにある。もし顧客がある会社のサービスに満足できなくなったとすれば、他社のサービスに乗り換えるコストが低くなるだろう。たった一つのハイパーレッジャー・ソリューションにはならない。それが我々のアプローチだ。

そうなれば、競合他社間で健全な競争が生まれる。新規開発に挑戦したり、サービスの質を上げたり、提供価格を下げたりするかもしれない。これらは全て消費者を助けるものだ。

──2018年、EEA(イーサリアム企業連合)との提携を発表しました。

EEAは、標準化やスペックの点でスタンダードになるかもしれないと考えた。一方でハイパーレッジャーは、実際にコードを書く団体だ。両者は対立するのではなく、補完関係になれると考えた。

すでに提携による果実が生まれ始めている。 例えば、イーサリアム仮想マシン(EVM)のスマートコントラクトを、許可型のネットワーク環境で実行できる「BURROW」と呼ばれるものがある。

ブロックチェーンの未来は、インターネットとは違うかもしれない

──インターネットとブロックチェーンを見てきて、両者の相違をどう考えますか。

私は1992年からオープンソースの技術者だった。世界経済フォーラムのCTO(最高技術責任者)だったときもある。ハイパーレッジャー ・プロジェクトが始まったとき、「何か重大なものが起きている」と考えた。技術者でありながら、政治にもかかわってきた経歴が活かされると考え、このプロジェクトに参画した。

私は、社会がもっとデジタル化されたら、大きなリスクに直面すると懸念している。さらに集中化してしまうだろう。それは経済にとっても、プライバシーにとっても、我々が市民であることにとっても、大きなリスクになりうる。

一極に集中しないブロックチェーンのような技術は、我々の社会の基礎として、作りたいものだった。

企業は数年前から、ブロックチェーンについて真剣に考えようになってきた。1995年当時のインターネットに非常によく似ている。当時は、インターネット事業から多くの収益を得られると皆が認識するよりも前だった。しかし現在では、グーグルやフェイスブックが大きな収益をあげている。

ただしインターネットとブロックチェーンが同じ歴史を辿るとは考えない。分散化するブロックチェーンの性質があるからだ

インターネットでは、一つの検索エンジンがトラフィックの90%を獲得する機会を生み出した。インターネットではアマゾンやグーグル、フェイスブックのように一極に集中する傾向があった。

しかし、あるブロックチェーン企業が、ブロックチェーンの90%を獲得する機会はないだろう。ブロックチェーンは、本質的に「分散化」する傾向のあるアーキテクチャだからだ。いくつかの新しい企業は、これからも成長すると考えるが、既存のIT大手のように市場の極として集中することはないだろう。

インタビュー・文・構成・写真:小西雄志
編集:佐藤茂