MITのAIラボ、20万のビットコイントランザクションを検証。わずか2%が「違法」

ブロックチェーン分析企業のエリプティック(Elliptic)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)と協力し、違法行為に関連するビットコイントランザクションのデータセットを公開した。

MITのIBMワトソンAIラボ(MIT-IBM Watson AI Lab)の研究者らが実施したこの研究は、機械学習ソフトウエアを用いて、合計約60億ドル(約6417億6300万円)に相当する、20万3769のビットコインノードトランザクションを分類した。同研究は、人工知能が現行のアンチマネーロンダリング(AML)手続きに役立つかを検証した。

既知の組織とノードとの関連を検証した結果、約20万のビットコイントランザクションの内、わずか2%のみが違法と見なされた。また、21%は合法と認定されたものの、トランザクションの大半に当たる約77%は、未分類のままとなった。2009年にネットワークがローンチされてから現在に至るまでに実施されたビットコイントランザクション数は、約44000に上ると予想されている。

この2%という数字は、競合分析企業チェイナリシス(Chainalysis)の研究結果とも一致している。同社は、2019年に行われたビットコイントランザクションのわずか1%が違法行為に関連していると試算した。

エリプティックは、仮想通貨を利用した違法行為を特定するために世界中の法執行機関によって雇われることが頻繁にある。この研究は、特に銀行口座を持たない個人やその他の未知の組織における、ビットコインの合法利用と違法利用を区別する際に役立つパターンを特定することを目的としていた。

「コンプライアンスにおける大きな問題は、一般的に、誤検知です。この研究において重要なのは、誤検知の数を最小限にすることです」と、エリプティックの共同創業者、トム・ロビンソン(Tom Robinson)氏はCoinDeskに対して語った。「主な発見は、機械学習の技術は、違法なトランザクションを見つけ出すのに非常に有効だということです」

ソフトウエアは、ダークネット市場、ランサムウエアによる攻撃、およびその他犯罪の捜査から得られた既存のデータに基づいて分析を行い、時に、説明し難しいがそれでも既知の組織とマッチするパターンを発見することもできた、とロビンソン氏は加えた。

研究完了後、エリプティックは、オープンソースな貢献を促すために、データセットを一般公開した。

「AMLの面では、フィードバックを得るために、我々は初期の実験結果を領域専門家に共有しています」と、MITの研究者マーク・ウェーバー(Mark Weber)氏はCoinDeskに語り、次のように続けた。

「また我々は、エリプティック・データセットの公開によって人々が刺激を受け、AMLのための新技術やモデルを開発し、金融システムをより安全なものにするための取り組みに参加することも期待しています」

米メディアCNBCは2019年4月、アメリカの100ドル札の需要が急増しているのは、世界中で犯罪行為が増加していることに起因する可能性が高いと報じた。 米国経済研究所(American Institute for Economic Research)による2017年のレポートは、「流通している米国通貨の3分の1以上が、犯罪者や脱税者に利用されている」と推計した。

翻訳:山口晶子
編集:町田優太
写真:MIT image via Shutterstock
原文:MIT’s AI Lab Crunched 200,000 Bitcoin Transactions. Only 2% Were ‘Illicit’