“機関投資家向けDeFi”を切り開くか──新会社「Compound Treasury」の仕組み

DeFi(分散型金融)プロジェクトのコンパウンド(Compound)を開発したコンパウンド・ラボ(Compound Labs)が新会社「Compound Treasury」を設立。これは「機関投資家向けDeFi」における最も大きな進展となるかもしれない。

ビットワイズ(Bitwise)のような暗号資産運用会社は大口投資家向けにDeFiトークンを運用資産に組み入れているが、DeFiそのものへのアクセスを提供しているところはほとんどない。

Compound Treasuryはカストディ事業者のファイヤーブロック(Fireblocks)や米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)の発行元で、ピア・ツー・ピア決済を手がけるサークル(Circle)と協力し、ネオバンクやフィンテック企業からドルを預け入れ、USDCに替える。

その後、USDCはコンパウンドで4%の金利で運用される。4%の金利は、企業が普通預金や譲渡性預金証書(CD)で得る金利よりもはるかに高い。

「これは企業としての我々の持続可能性への取り組み。(中略)コンパウンドの金利が長期的に4%以上になれば、収益をあげることができる。フィンテック企業が切望していた新たな金融商品を提供できる」とコンパウンドの創業者、ロバート・レシュナー(Robert Leshner)氏は米CoinDeskに語った。

同社のブログによると、Compound Treasuryは「米ドルの大口保有者が、秘密鍵の管理、暗号資産から米ドルへの交換、金利の変動といったDeFiにまつわる複雑さにとらわれることなく、コンパウンドのUSDC市場の金利にアクセスできるようにする」という。

4%という金利の秘密

4%の金利はどのようにして実現されるのだろうか(現在のコンパウンドでのUSDCの金利は1.67%)。ここでは、すべてのコンパウンドユーザーはガバナンストークン「COMP」を獲得しており(当記事執筆時点、約298ドルで取引されている)、この先約3年は一貫した割合で獲得できることがポイントとなる。

ガバナンストークン:DeFiプロジェクトの運営について、ユーザーに投票権を与えるトークン。上場会社の株式に似ている。
多くのDeFiプロジェクトはガバナンストークンを発行。ガバナンストークンが高値で取引されることで利益をあげてきた。

つまり、Compound Treasuryは預けられたUSDCをコンパウンドで運用することで、金利だけでなく、いわゆる「流動性マイニング」のリターンを得ることができる。そして、DeFiプロトコルとしてのコンパウンドの価値が将来、より重要性を増していけば、獲得したCOMPの価値も高まり、Compound Treasuryは大きな利益をあげることができる。

流動性マイニング:DeFiプロジェクトがユーザーに無料のトークンを提供することで、ユーザーを惹きつけ、お金を集めること。
ユーザーから見れば、DeFiプロジェクトの人気が上がれば、トークンの値上がりが期待できる。

とはいえ、Compound Treasuryはリターンを追求するために無謀なことは行わず、どの流動性プールが最も大きな利益を得られるかを追求する。

「ステーブルコインでの運用のみになるだろう。顧客が暗号資産のリスクにさらされることがあってはならない」とレシュナー氏は述べた。

また、Compound Treasuryは、通常の預金口座のようにも機能する。ユーザーは好きなときにお金を出し入れでき、一定期間のロックアップはない。

留意すべきことは、コンパウンド・ラボはDeFiプロジェクトのコンパウンドを開発したが、所有しているわけではないことだ。同社はガバナンストークン「COMP」の大部分を所有しているかもしれないが、他の多くのDeFiプロジェクトも同様だ。

当初から、DeFiプロジェクトを構築し、その上にビジネスを構築して収益源とすることが計画されていた。それがCompound Treasuryだ。

「これこそがコンパウンド・ラボが提供するものであり、DeFiプロジェクトへの米ドルの玄関口となる。驚くほど大きく、驚くほどの利益をもたらすと考えている」とレシュナー氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk archives
|原文:Compound Labs Launches ‘Treasury’ to Get Big Firms Reaping DeFi Yields