イーロンへの手紙:ツイッターを分散化する方法【コラム】

親愛なるイーロン様

ツイッターの買収おめでとう!あなたは常々、分散化の大切さを口にしてきたので、買収劇をワクワクしながら見守ってきました。あなたとあなたのチームは、この素晴らしいプラットフォームを、より成熟した自己主権型ウェブに弾みをつけるために使おうとしているようですね。

分散型ツイッターは適切なデザインがあれば、ユーザーとプラットフォームの関係を根本から変える、新しいインターネットを生み出すきっかけとなるでしょう。

プロフィール、投稿、メッセージシステム、広告など、ツイッターのプロダクトラインナップを検討すれば、自己主権型ウェブがどのようなものになるのか、人々をオンボードするにはどうすれば良いのかについて分かってくるでしょう。

ビジョン

ツイッター元CEOのジャック・ドーシー氏とあなたのやり取りから分かるように、あなたは現在のツイッターが、提供できる有用性の限界に近づいていると感じているようです。ユーザーにとってもっと便利になり、企業ではなく「プロトコル」としてさらに発展するために、Eメールから学ぶことが多くあるでしょう。

Eメールはプロトコルです。あなたはマイクロソフトオフィス、ドーシー氏はプロトンを使っているかもしれません。私はGmail派です。それでも私たちは互いに、簡単にメッセージのやり取りをしたり、同じスレッドを共有することができますが、異なるアプリケーションインターフェイス(アウトルックやGmailなど)を通じてEメールを読んだり書いたりしています。

このモデルはFilecoin、Arweave、Ceramic、Polybaseなどのシステムを使って、ソーシャルメディアにも応用できます。ユーザーの人脈や投稿は、ツイッターやフェイスブックなど、単独の「ウォールドガーデン」に限定されることなく、オープンなウェブ上に存在することになります。

さらに、しきい値暗号を使ったアクセスコントロールを通じて、データをプライベートで許可型(そのために収益化できるもの)にすることもできるのです。

しきい値暗号: 情報を暗号化し、コンピューターのクラスター間で分散することで情報を守る暗号化システム。

分散型で、ユーザー主権型、プライバシー重視型のソーシャルメディアプロトコルでは、Eメールのように、インターフェイスプラットフォーム全体でどのアプリケーションや、どの知り合いが自分のコンテンツを見ることができるかに関して、ユーザーが許可を与えて管理することができるのです。

オンボーディング

ウェブ3における最も大きな障害の1つは、ウォレットユーザーエクスペリエンスです。鍵のセルフカストディをありがたく思う人もいますが、多くの人にとっては負担です。その結果ここ1年で、マルチパーティ計算(MPC)への関心が爆発的に増加しています。

マルチパーティ計算:複数のサーバがデータの演算、交換を行うことで情報を保護する技術。

MPCウォレットを使うと、ユーザーは秘密鍵をセルフカストディする負担や、中央集権型のカストディアンに依存する必要なく、伝統的なログイン、ピンコード、生体認証を使ってアプリにサインインすることができます。

公開ユーザーデータ

現在のツイッターのように、公開されたソーシャルグラフの一部に関しては、すでに多くの活発なプロジェクトが、人々が自分のデータを所有するのを助けるオープンソースインフラを生み出しています。例えば、レンズ・プロトコル(Lens Protocol)やオービス(Orbis)などは現在、実際に運用されています。

プライベートユーザーデータ

もちろん、すべてのソーシャルメディアデータが公開されるものではありません。友達としてつながっている人たちやプロフィール情報、投稿、メッセージなど、ソーシャルネットワーキングやソーシャルメディアにおける基本的な要素は多くの場合、プライベート。つまり、許可された人だけが見られるようになっています。あるいは少なくとも、そのようなオプションがある方が好ましいものです。

現在ツイッターでは、このようなデータは主に、ツイッターの中に閉じ込められています。それに代わるオプションは、オープンウェブ上で暗号化し、誰が解読できるかについて、きめ細かいアクセスコントロールをユーザーに与えるものです。

これはオンラインソーシャルネットワーキングの世界では、新しいコンセプトではなく、このようなシステムは、初期のウェブや、現在でも多くの人が使っているPGP(Pretty Good Privacy)暗号化プログラムと同調するものです。(PGPによって人々は、どこにでも公開鍵を投稿したり、秘密鍵保有者だけが読めるメッセージを受け取ることができます。)

しきい値暗号は、ユーザーが自分の投稿を見ることのできる人に関するルールを作れるようにすることで、これらのプライバシー規格をさらに前に進めることができます。分散型ソーシャルプロトコルが幅広く普及すれば、暗号化されたデータは「オープンウェブ」全体で使うこともできます。

例えば、アリスが、「私の友達リストに含まれる人なら誰でもこの投稿を閲覧できる」という設定で投稿をしたとします。アリスの友達のボブは、自分のウォレットの署名を使って自分の身元を証明することで、どのプラットフォーム上でもその投稿を解読して閲覧することができるのです。

広告

ウェブ3の世界の一部では、広告はしばしば、下品な話題と考えられていますが、有料アプリやソフトウェアにお金を出すのはインターネットユーザーのわずか約10%というのが現実です。つまり、ほとんどの人は広告つきのソフトウェアサービスを使っているのです。

商品購入などの成果「コンバージョン」を追跡するのには主に、ラストクリックアトリビューションという、パブリッシャー(ツイッターなど)が自社ページ上でソフトウェアを実行し、ユーザーが広告をクリックしたことを広告主(eコマースサイトなど)に知らせる仕組みが使われます。その人が実際に商品を購入すると、パブリッシャーは報酬を受け取ります。

この仕組みも、分散化することができるのです。ユーザーデータのための前述のシステムは、広告アトリビューションにも適用できます。ラストクリックは(オープンウェブで暗号化され保管される)その人のデータハブに、検証可能なクレデンシャルとして書き込まれ、広告主はそのデータを解読するための許可を得ることができます。

世界中の規制当局がトラッキングクッキーの取り締まりを続ける中、ユーザーとその同意を広告クリックやコンバージョンをトラッキングするためのシステムに組み込むことは、広告収入に頼るパブリッシャーにとって、長期的な前進の道です。

世界的な規模を支える分散型ネットワークはいまだに成熟している途中ですが、基盤を築くのにいまほど良い時はありません。

デイヴィッド・スナイダー(David Sneider)氏は、分散型暗号ネットワーク、リット・プロトコル(Lit Protocol)の共同創業者。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:FellowNeko / Shutterstock.com
|原文:Dear Elon, This Is How to Decentralize Twitter and Give the Internet Back to Everyone