暗号資産の個人取引を変える4つのポイント【コラム】

暗号資産の個人取引を変える4つのポイント【コラム】

暗号資産(仮想通貨)の世界に入る前にフィンテック分野で仕事をしていた私は常々、これら2つの業界で使われる言葉の違いが興味深いと感じてきた。

フィンテックの世界では、消費者とユーザーを話題にするが、暗号資産の世界では、個人の参加者はトレーダーや投資家、保有者と呼ばれることが圧倒的に多い。

これにはいくつかの理由があると思うが、この記事では、暗号資産が境界線を曖昧にするものだから、という理由に絞って考えていきたい。暗号資産は、インフラとしても、価値を象徴するものとしても見ることができ、わたしたちが今まで見てきたものとは違う。

暗号資産をたまに売買する個人は、トレーダーだろうか?それとも投資家?それともそれ以外の何者か?CoinDeskの元リサーチ責任者ノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏が先日、トレーダーとは何かを分かりやすく説明してくれたので、ここでは定義の話は省く。

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私が主張したいのはもっと幅広い話で、暗号資産は定義を超えたものであるということ。何かあるひとつのものとして定義するのは難しく、捉えどころがないのだ。交換可能な様々なトークンを考えてみよう。トークンによって、コモディティ(原油やゴールドなど)や証券(株式や債券など)、現金など、様々な要素を持っている。

しかし、このような多様な状況が続いていくのか、それともゆくゆくは、既存のものであれ、新しいものであれ、きっちりと定義された用語へと集約していくのか、私には分からない。

暗号資産トレーディング(とりわけ一般の人によるもの)をどのように定義するにしても、この先暗号資産と人々が関わっていく形を決定づける、4つの大きなポイントがある。

誰がトレーディングできるのか?

まずは、売買を許されるのは誰か?という点。資産がどのように規制を受けるのかなど、この点には多くの要素が含まれる。暗号資産を売買するにおいて、一定の個人を他の個人よりも制限/優先するために現在存在するもの以外に、新しいルールや規制が課されるのか、というのが焦点となる。

進化を続け、消費者保護の強化が求められるこの業界においては、適合性(伝統的投資における「適格投資家」が誰かを決めるルールに似たもの)のような原則が活用できるかもしれない。注目すべき取り組みの1つは、個人投資家の定義を変えることに意欲を示している、米商品先物取引委員会(CFTC)のロメロ委員によるものだ。

どこでトレーディングされるのか?

次なるポイントは、どこで売買が許されるのかという点。直近の強気市場における最も重要な進展の1つは、非暗号資産ネイティブ企業による暗号資産の採用だ。5年前に暗号資産を買おうとしたら、暗号資産だけに特化した企業でアカウントを開設する必要があった。

しかし今では、多くの伝統的フィンテックアプリ内で暗号資産を売買することができる。これは、暗号資産に興味を持っている層には重要なことで、ペイパル、ベンモ(Venmo)、スクエア(Square)などのアプリを持った人(その数は多い)なら誰でも、すでに知っていて信頼しているプラットフォームで暗号資産が売買できる。

暗号資産がますます多くの非暗号資産プラットフォームに組み込まれていくのがトレンドだが、規制当局はこのトレンドが続くのを許すのだろうか?

コモディティ、あるいは証券?

3つ目のポイントは、最も注目されるものであるため、この記事では軽く触れるに留めておきたい。何がトレーディングできるか、という点だ。資産は証券(株式や債券など)なのか、コモディティ(ゴールドや天然ガスなど)なのか、その中間なのか、まったく異なるものなのか?もちろん、これは真剣な議論の対象となるトピックであることは皆が承知しており、具体的な資産ごとに答えは異なってくる。

手数料低減

最後のポイントは、手数料の競争が激しくなり、取引高が減っていく中、競争の様相はどのようにシフトしていくか、という点だ。バイナンスは今夏、ビットコイン(BTC)の取引手数料を撤廃すると発表して、注目を集めた。それに対して数週間後、コインベースは自社がその後に続く計画はないと述べた。

米証券取引委員会(SEC)への最近の提出書類の中でコインベースは、「2022年6月30日までの3カ月間と6カ月間の取引高がそれぞれ、前年同期から53%、34%減少した」と報告。手数料が収入の多くを占める企業にとって、これは大きな痛手だ。

取引高の減少と手数料への下方圧力が相まって、取引プラットフォームは新しい収益源を探さざるを得なくなる。しかし、それはどんなものだろう?その答えはおそらく、取引高の低迷がどれほど続くか、取引所が新しいユーザーを惹きつけ、取引高を引き上げるために手数料を下げる必要を感じるかにかかっている。これらダブルの圧力への反応としては、いくつかのビジネスモデルが考えられる。

新しいビジネスモデル

人々はここしばらく、手数料の圧迫が与える影響について考えを巡らせているが、手数料がゼロになったとしても、各取引のスプレッドに同様の利益が組み込まれれば、ビジネスモデルがほとんど変わらない可能性もある。これは、伝統的なブローカレッジの分野で見られたことと、あまり変わらないかもしれない。

あるいは取引所が、付随的なプロダクトやサービスを追加するかもしれない。ブローカレッジがETF(上場投資信託)などの自社ブランドのプロダクトを追加したのと同様に、暗号資産取引所も、自社ブランドのステーブルコインに関心を持っているようだ。

そこから自然と進化していけば、クレジットカードやデビットカード、取引アカウントまで、一連の金融サービスとプロダクトが勢揃いすることになるだろう。

もう少し逸脱しているが、十分に可能性があるのは、より商業的だが、金融サービスに隣接したプロダクトやサービスだ。例えば、チケット販売を手がけるスタブハブ(StubHub)のNFT(非代替性トークン)チケット版や、ウェブ3業者向けのロイヤルティ報酬プログラムなどが考えられる。

企業は間違いなく、様々な戦略を採用し、境界線は曖昧になり続けるだろう。取引所やプラットフォームが提供するプロダクトやサービスを多様化させるに伴って、「トレーディング」の定義も、現在よりさらに明確ではなくなるかもしれない。

マシュー・ホーマー(Matthew Homer)氏は、VC投資家で、暗号資産分野の起業家たちのアドバイザー。ニューヨーク州金融サービス局に務めた経験を持つ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:4 Questions That Will Determine the Future of Retail Trading

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