ビットコイン:2022年の10大ニュース

価格下落と企業の破綻が2022年の暗号資産関連ニュースを席巻しているが、ビットコイン(BTC)にとって2022年は大きな前進の年だった。2022年に私たちは、ビットコインがプロトコルとして、開発者や起業家が見出したニーズを満たすことができる広範なイノベーションをプロトコルに手を加えることなく実現していく様子を目の当たりにした。ビットコインの10大ニュースをまとめた。

1. 100%稼働記録を更新

今年のビットコインの最大の偉業はまたしても、ビットコインそのものだ。ビットコインは問題なく動作を続け、約10分ごとに新しいブロックが作られ、サトシ・ナカモトが2008年にホワイトペーパーに記した通りに発行が続いている。

緊急の再起動も、ハードフォークも、チェーンの分裂も、プロトコル規模でのハッキングも、バグもなかった。ビットコインは今年も100%稼働し続け、2022年に起こったあらゆることにもかかわらず、1年を通して世界中のあらゆる人が利用可能な状態を保った。何十億ドル相当ものビットコインが毎日ブロックチェーン上を移動した。

ビットコインは、財団も、直接雇用しているスタッフも、リーダーも、ベンチャーキャピタリストもなしで、これを成し遂げた。ビットコインの信頼性と予測可能性に基づく開発作業はさらに1年、中断することなく、そして、この先もしばらくはそうすることができると自信を持って進めることができる。

ちなみに、このリストの残りの9個も、ビットコインのベースレイヤーのコンセンサスルールに変更を必要としないことを指摘しておく。

2. ライトニング・ネットワークの成長

ビットコインのベースレイヤーが堅調である一方、最も重要なスケーリングプロトコルであるライトニング・ネットワーク(Lightning Network)も2022年、大きな成長と発展を見せた。

ライトニング・ネットワークによって、ブロックが取引を承認することを待つ必要がなくなり、オフチェーンでスピーディかつ安価に取引が可能になる。完全に分散型、パーミッションレスであり、ビットコインのスケーラビリティを改善させると同時に、ビットコインベースレイヤーの安全性と決済の確実性のメリットを活かすことができる。

ライトニング・ネットワークの公開されている流動性は2022年、1058ビットコインから4771ビットコインに増加。チャンネル数も3万7298から6万7339と80%以上増加した。ノード数も8295から1万5636と88%以上増加した。

つまり、ライトニング・ネットワークの2022年の成長は驚異的なものだった。数多くのウォレット、ユーザー向けの優れたツール、教育のためのリソースなどの成果だ。ビットコイナーがライトニング・ネットワークを利用してピア・ツー・ピアで価値のやり取りをするようになり、スピーディで安価(一般的に1セント未満)な決済が広まった。

3. エルサルバドル:他国に先駆けて

エルサルバドルは2022年、経済的自由とビットコインを柱とするブケレ大統領の政策のもとで大きな変革を経験した。ブケレ大統領は『Bitcoin Magazine』の年末号の表紙を飾った。

ブケレ大統領は同雑誌のコラムの中で、世界中のビットコイナーに対し、グローバルエリートとエルサルバドルの戦いは、ビットコイナーの戦いでもあると呼びかけた。

エルサルバドルがビットコインを法定通貨とする政策を押し進めていることは、メインストリームのメディアが伝えるFUD(恐怖、不確実性、疑念)にもかかわらず、エルサルバドルが革命的なお金とはなにか、を正確に理解していることを明らかにしている。

アメリカの規制当局や政治家たちは、サム・バンクマン-フリード氏などに騙されてしまったが、ビットコインはエルサルバドルに盛況をもたらした。観光客数は急増し、GDPも成長、同国はビットコインを集め続けている。

10月にはエルサルバドルによって、世界初の「ビットコイン大使館」がスイスのルガノに開設された。大使館を率いるのはビットコイナーで投資家のホスエ・ロペス(Josue Lopez)氏。

11月には、エルサルバドル大統領府内にビットコインオフィスも開設された。世界中の投資家からのアクセスや情報を求める声の高まりに応えたものだ。ビットコインが世界で支配的な通貨システムになる「ハイパービットコイン化」に向けたプロセスにおいて、より多くの国が模倣するテンプレートとしてのエルサルバドルの立場がさらに確立された。

エルサルバドルはこの1年を、いかにもビットコインらしい形で締めくくった。ブケレ大統領は同国は今後、1日1ビットコインを購入していくと発表した。

4. Machankura:アフリカでのビットコイン取引

出典:Machankura

この新しいサービスは、アフリカの開発者Kgothatso Ngako氏が数週間で開発した。アフリカでは多くの人がスマートフォンを持っているが、安定したインターネット接続を確保できない問題に気づいた同氏は解決策を生み出した。

Machankuraを使うと、インターネット接続を必要とせずにスマートフォンのテキストメッセージを使ってビットコインを受け取ったり、使うことができる。

Caribou Digitalのレポートによると、アフリカでの金融取引の94%はテキストメッセージを使ったもので、モバイルアプリを介したものはわずか6%。

Machankuraを使えば、アフリカ中の人たちはすでに利用しているテクノロジーを活用して、ビットコインを使うことができる。Machankuraのようなプロジェクトは、デジタルの安定した通貨を最も必要としている地域でのビットコイン普及を促進する。

5. Taro:ライトニング・ネットワーク上の資産

ライトニング・ラボ(Lightning Labs)は今年、ビットコインとライトニング・ネットワーク上での資産の発行、利用、受け取りを可能にすることを目指した提案を行った。Taroだ。

Taroは、ビットコインの最新アップデート「Taproot(タップルート)」を活用するもので、ビットコインのPoW(プルーフ・オブ・ワーク)コンセンサスメカニズムの変更不可能な検証を活用しつつ、ビットコインブロックチェーン上で理論的にあらゆる資産を発行可能にする。

Taroによって、ステーブルコイン、株式、債券など、あらゆる資産がビットコインブロックチェーン上で発行可能となり、ユースケースの拡大、機能性の充実に向けた扉が開く。

6. Impervious.ai:初のP2Pライトニングネイティブブラウザ

Impervious Technologiesは、ライトニング・ネットワーク上に作られた初のウェブブラウザを発表した。コミュニケーション、データ転送、ライトニングでの決済を仲介者なしで行うためのツールがすべて揃ったピア・ツー・ピア(P2P)のウェブブラウザだ。

P2Pのメッセージ、P2Pのビデオ通話、P2Pのワークスペース、分散型アイデンティティ管理、分散型データ保存、ユーザーによるデータの直接的な収益化などのツールが揃っている。

これらのツールはすべて、完全に暗号化されており、ユーザーデータの収集、販売を行うような中央集権的仲介者は存在しない。ビットコインとライトニング・ネットワークの分散型の特性を活用することで、未来のインターネットの姿を垣間見せてくれる。

7. FediMints:協調カストディ

FrdiMintは、お互いのビットコインの安全性を確保し、プライバシーを守るために、協調的なカストディコミュニティを作る、新しいビットコインカストディの形態。人間は、最も身近な人間を信用するという性質を生かしたカストディ方法だ。

グループ全体でビットコインのカストディをシェアしつつ、グループ内の個人のプライバシーを暗号化技術によって保護する。ビットコインをスケーリングし、プライバシーを高め、オンチェーン手数料を削減する可能性があり、世界中でより多くの人たちがビットコインをセルフカストディするようになる可能性がある。

8. Value-4-Value:決済機能をあらゆるものに組み込む

Value-4-Valueは、ユーザーがコンテンツを楽しんだ後、クリエーターがライトニング・ネットワークを通じて価値を受け取ることができる、コンテンツ・パブリッシングの新しいアプローチだ。

1万人を超えるコンテンツクリエーターがすでに、ポッドキャストに他のソリューションとともにValue-4-Valueを採用している。2023年も急速な成長が期待される。

9. Plebnet Lightning:ライトニングの機能性を高めるコミュニティツール

ライトニングノードの運用に関心を持つ一般の人たちのグループがテレグラム(Telegram)上に結成され、参加人数は5800人を超えようとしている。

参加者はベストプラクティスについて、お互いに情報交換するだけでなく、ライトニング・ネットワークの最も高度な機能の一部を誰でも簡単に使えるようにするための、数々のオープンソースアプリケーションを開発、公開している。

例えばsdLightning Terminalは、セルフホスティングされたライトニングノード上でチャンネルの流動性を管理するためのブラウザベースのインターフェイスだ。

10. BTCマイニングで電気へのアクセスを改善

世界中では、多くの人が電気が非常に高価な状態、または電気がほとんどない、あるいはまったくない状態での暮らしを余儀なくされている。しかし、ビットコインマイニングがそうした現状を変えようとしている。

ツイッターの創業者ジャック・ドーシー氏も紹介していたある事例では、ケニアの農村に水力発電で電力を供給しつつ、残った電力でビットコインマイニングを実施。約500世帯2000人が住む村の電気代は月に10ドルから4ドルまで下がった。

これは単独の事例ではなく、12月にはドーシー氏率いるブロック(Block)とStillmark VCが主導して200万ドルを資金調達した。アフリカ全土で電力へのアクセスを改善するためにビットコインマイニングを展開していく。

Cory Klippsten氏:Swan BitcoinのCEO
Tomer Strolight氏:Swan BitcoinのEditor in Chief
Sam Callahan氏:Swan Bitcoinのリードアナリスト

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Machankura
|原文:The 10 Biggest Developments in Bitcoin in 2022