2022年、私を怒らせた5つのこと【コラム】

2022年に私をイラつかせた暗号資産関連の出来事を5つにまとめてみた。もちろん、5つよりはるかに多かったが、「市場の低迷」といった明らかなものは面白くないので含んでいない。

1. FTX/アラメダ/バンクマン-フリード詐欺

暗号資産関係者がこの件について怒って放った言葉を、すでに何百万回も読んでいるだろう。だが、FTX(詐欺に対して)、向こうみずにリスクをとる人(自己顕示欲に対して)、多くのツイッターユーザー(英雄崇拝に対して)に、私はまだ怒りを抱えている。

詐欺については明らかだろう。FTXでの顧客資産の流用は、実際に人々に痛みを与えた。個人的にさらに落ち込むことは、FTXが破綻する以前の2022年2月、私はバンクマン-フリード前CEOにインタビューする機会を得た。しかし、核心をつくような話題に触れることはなかった。スーパーボウルのことばかり話していた。

2. 暗号資産ヘッジファンド創業者たちの自己顕示欲

暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)の関係者たちに怒りを感じている。スリー・アローズのような高レバレッジのヘッジファンドが、一般的にリスクの高いことを行うことに少し腹が立つことと、この数年間、ヘッジファンドが大儲けするなかで、ソーシャルメディアなどで展開してきた自己顕示欲に怒りを感じることは別物だ。

清算手続きの中で「10万イーサリアム(ETH)など大したことない」と言いつつ、スリー・アローズ創業者のカイル・デイビス(Kyle Davies)とスー・チュー(Su Zhu)が会社のお金で5000万ドルのスーパーヨットを購入していたことが明らかになった。10万イーサリアムを「大したことない」と言うことは、4億ドルを「はした金」と呼ぶことだ。そして、スリー・アローズは破綻した。

3. ビットコインマキシマリズムの一部

ビットコイン(BTC)だけが重要という考え方、いわゆるビットコインマキシマリズムは問題ないと考えている。私が尊敬している多くの賢い人たちは、マキシマリズムが助長する有害なカルチャーを理由に、私とは意見を異にしているが、その相違に怒っているわけではない。

私が腹を立てているのは、マキシマリズム信奉者たちが使う絶対主義的な言葉だ。ビットコインについての意見が間違っている可能性を理解できなければ、救世主のフリをしているだけだ。

「ビットコインは○○○(←形容詞が入る)」とツイートしている人たちは、ただツイートのために、ツイートしているだけに過ぎない。

まったく何の意味もない。私に言わせれば、ビットコインマキシマリズムはおそらく「Bitcoin is. And that is enough.(ビットコインは存在する。それで十分)」という格言に従っていた方が良い。

4. 暗号資産の発展を過大評価すること

私は、ゴールドマン・サックスが「ブロックチェーン」をバズワードにし、ブロックチェーンを使った債券発行のメリットを売り込むことに使っていることに不満を感じている。

しかし同時に、バイナンス・スマート・チェーンなどの実質的には中央集権化されたチェーンが、分散化されているように振る舞っていることにも怒りを感じている。それから「イーサリアムはウルトラ・サウンド(ultra-sound)なお金」と言っている人たちにも。

そして、ユーザー数を伝えるジャーナリストに怒っているメタバース「ディセントラランド(Decentraland)」のユーザーにも。市場に何も価値も届けられていないのに、ライトニング・ネットワークによる新ソフトウェア「Taro」のリリースを画期的な出来事のように誇張するビットコイナーにも。

そうした人たちが間違っていると思うから怒っているわけではない。ディセントラランドはある日、アクティブユーザー数が1日に810人を超えるかもしれないし、Taroがいつの日か、ステーブルコインをマスに普及させるかもしれない。

しかし現状は、そうなっていない。ワクワクすることは構わないが、暗号資産を真剣に扱って欲しいならば、エコシステムの現在の健全性や活況さを誇張することは、自分たちの利益にはならないだろう。

5. プライバシーを否定する人たち

私は2月に、今年は「プライバシーの年」になるとツイートした。予測が当たったとは思えないが、1年の終わりにプライバシーの重要性について改めて語っておきたい。

プライバシーは人権であり、当たり前のものになるべきだ。だからこそ、プライバシーを否定する人たちが私をイラつかせたことは驚きではないだろう。

エリザベス・ウォーレン米上院議員が最近提案した「Digital Asset Anti-Money Laundering Act(デジタル資産アンチマネーロンダリング法案)」がマネーロンダリングの防止よりも、プライバシーの侵害に重点を置いていたことからもわかる通り、暗号資産に関連するプライバシー侵害の例は事欠かない。

私がプライバシーが重要と考える理由を手短に言うと、プライバシーは、必要となるその瞬間までは必要ないということだ。これに対する反論が、プライバシーが必要なのは犯罪者だけ、というものだとしたら、あなたは犯罪者となる瞬間までは犯罪者ではないということを覚えておこう。

プライバシーを否定する人たちや詐欺師の皆さん、私が怒るようなことは、2022年を限りにして欲しい。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Five Crypto Things That Riled Me Up in 2022