ビットコインとイーサリアム、流動性低下が続く──トレーダーは急激なボラティリティ上昇を懸念

ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の市場の流動性は低下の一途をたどっており、3カ月前よりも憂慮すべき状況になっている。そのため、トレーダーは暗号資産(仮想通貨)市場での急激な価格変動を懸念している。

流動性とは、安定した価格で大規模な売買注文を吸収する市場の能力を指す。流動性の状況を評価するために一般的に使用される指標は、2%マーケットデプス(市場の厚み)、つまり中間価格または買値と売値の平均の2%以内にある売買注文の量だ。

その厚みが大きければ大きいほど、その資産は流動性が高いと言われ、その逆なら流動性は低いことになる。

パリに拠点を置く暗号資産データプロバイダーKaikoのデータによると、15の中央集権型取引所におけるビットコインとUSDTのペアの2%デプスは、11月のFTX崩壊直後より低く、2022年5月以来最も低い6800BTCに落ち込んでいることが分かった。10月の15000BTCを超える水準から大幅に低下している。イーサリアムの2%デプスは5万7000ETHで、10月以降で半分以下になった。

「流動性が低いということは、特にアルトコインにおいて、よりドラスティックな動きを意味する」 とアストロノート・キャピタル(Astronaut Capital)の最高投資責任者マシュー・ディブ(Matthew Dibb)氏は述べている。

ディブ氏は 「大きな規模の取引をしようとするファンドは、より長い期間(数日から数週間)にわたってTWAP戦略を実施せざるを得ないため、最近のSTXなど一部のチャートが『歩み寄った』ように見えるのだ」 と付け加えた。

TWAP(time-weighted average price)戦略とは、資産の時間加重平均価格に平均執行価格を近づけることに焦点を当てた、よく知られたアルゴリズム戦略だ。つまり、大量の注文を小口化し、それを一定の間隔で執行することで、市場の動きへの影響を最小限に抑え、スリッページを減らすのだ。

スリッページとは、取引を行う際の予想価格と、実際に売買取引が成立した際の価格との差を指す。スリッページは通常、市場の流動性が低いときやボラティリティが高いときに発生する。

「しかし、現実的には、市場の厚みが減少していることは、ほとんどの大規模ファンドがスリッページのために以前と同じレベルで参加していないことを意味する」とディブ氏は指摘し、現在コインをオフロードしている大規模な機関投資家の動きは、市場に深い影響を与えることになると付け加えました。

ビットコインとイーサリアムの 2%デプスは、2022年11 月をも下回っている。 (Kaiko)

ビットコイン市場のボラティリティ期待値が低下している中で、今回のマーケットデプスの低下が発生した。暗号資産運用会社Blofinのボラティリティ・トレーダー、グリフィン・アーダーン(Griffin Ardern)氏によると、この種の状況はしばしば突然のボラティリティ爆発につながるという。

CryptoCompareのデータによると、今後30日間のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)を測定するビットコイン・ボラティリティ指数(BVIN)は、少なくとも2021年初頭以来最も低い56.39に低下している。

Amberdataがトラッキングしたデータによると、ビットコインの7日間の分散リスクプレミアム、つまり7日間のインプライド・ボラティリティと7日間の実現ボラティリティの差はマイナスに転じている。これは短期的なボラティリティ期待が過小評価されていることを示している。

「高いボラティリティを助長する環境が作られている」とアーダーン氏は述べ、「そして、厚みがないため、価格に影響を与えるには少量の注文しか必要なく、その結果、マーケットメーカーのヘッジ活動によって市場のボラティリティが増幅されるだろう」と付け加えた。

マーケットメーカーは常に投資家の取引の反対側に立ち、価格の変動に合わせて原資産を売買することで、市場中立的なポートフォリオを維持する。彼らのヘッジ活動は、ビットコインのスポット市場価格に影響を与えることが知られており、今は市場の厚みがないため、大きな影響を与える可能性がある。

暗号資産市場の流動性は、11月にアラメダ・リサーチ(Alameda Research)とFTXが破綻した後、11月中旬に枯渇し始めた。アラメダは、小規模および大規模なトークンに数十億ドルの流動性を提供する著名なマーケットメーカーだった。その結果、裁定取引や高頻度取引を行う複数の会社が倒れ、ジェネシス(Genesis)のような著名なマーケットメーカーが打撃を受けた。

「FTXの破綻により、程度の差こそあれ、すべての主要なマーケットメーカーが影響を受けたと思われる」とTDX Strategiesの創設者兼CEOのディック・ロー(Dick Lo)氏は述べた。「その結果、いくつかの流動性プロバイダーは、リスク軽減のための取り組みの一環として、マーケットメーク活動を縮小、あるいは停止した」。

「また、カウンターパーティーリスクを最小化するために、ポジションを分散型取引所(DEX)に移す動きもあり、GMXのような人気のある分散型取引所での取引量が増えている」とロー氏は付け加えた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Kaiko
|原文:Crypto Traders Worried About Continued Liquidity Thinning in Bitcoin and Ether