暗号資産、第1四半期は大幅上昇──規制強化と評判悪化の影響は?

2023年のスタートは、わずか3カ月に1年分のニュースを詰め込んだような、波乱に満ちたものになった。暗号資産(仮想通貨)の年初からのリターンも同様に、典型的な四半期よりもはるかに大きくなった。

レイヤー1トークン
・ビットコイン:70%
・イーサリアム: 48%
・アバランチ:54%
・カルダノ:51%
・ソラナ:87%
・アルゴランド:26%

株式指標
・S&P500:3.2%
・ナスダック:11%
・ダウ平均:-2.1%

暗号資産関連銘柄
コインベース:71%
・マイクロストラテジー:64%
・マラソン・デジタル:99%

時価総額10億ドル以上の暗号資産で最もパフォーマンスが高かったのは、スタックス(STX)、アプトス(APT)、イミュータブル エックス(IMX)で、それぞれ443%、268%、213%上昇した。

株式指標に全面勝利

結論:暗号資産は第1四半期、伝統的な株式指標に全面的に勝利した。

つまり、暗号資産と株式指標はデカップル(分離)した。第1四半期、ビットコイン(BTC)とS&P500の相関関係は0.91から0.59に低下し、3月22日には0.01まで低下した。つまり、暗号資産は多くの投資家が切望する分散型の無相関資産となっている。

だが驚くべきことは、これらの大きなリターンはアメリカ政府が暗号資産業界の取り締まりを強化したことで、暗号資産に対する認識や評判が劇的に悪化したことと一致した。暗号資産は、ポートフォリオに最適なもう1つの資産クラスと見なされるのではなく、詐欺や市場操作に関連した問題のある資産と見なされることが多い。

暗号資産に対するアメリカ政府/規制当局の一般的な見解は、最新の「Economic Report of the President(大統領経済報告)」の第8章に表れている。36ページの第8章すべてが暗号資産に費やされ、暗号資産の急速な上昇を際立たせている。だが一方で報告書のトーンは今後起こり得る規制のハードルを示している。

ブロックチェーン技術のイノベーションを認めつつも、報告書は暗号資産には基本的な価値がなく、法定通貨に代わるものではなく、投機のみを目的として存在しているとほぼ決めつけている。だがこれは、きわめてアメリカ的な視点だ。

インフレ率がきわめて高く、中央銀行の信用度がきわめて低い国では、供給が固定された資産を手に入れることに間違いなく価値を見い出すだろう。また、グローバルな価値を持つ資産は、アメリカでも価値を持つ可能性が高い。

注目すべきシグナルとその結果

投資家にとってマクロ経済上の最大の問題はインフレであり、当分続くと思われる。M2マネーサプライは、1年前から1.7%減少している。減少は良いことだが、新型コロナウイルス感染拡大前の水準と比べると38%も高いままだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、物価上昇を抑えるために、史上最も急速な金利引き上げで対応している。

最近、私が注目した出来事は、連邦政府のバランスシートが今四半期2.6%増加したことだ。これは米連邦準備制度理事会(FRB)が以前発表したバランスシート縮小の取り組みとはまったく対照的。パウエルFRB議長は、最近のバランスシートの増加は銀行への一時的な融資のためであり、金融政策のスタンスを変える意図はないとしている。

第1四半期、ビットコインはテクニカルチャート上で複数の注目すべきシグナルに遭遇した。その結果を見てみよう。

  • 「ゴールデンクロス」(2月18日): ゴールデンクロスとは、50日移動平均線が200日移動平均線を上回ったときに発生するもので、多くの場合、強気と解釈される。2015年以降、7回発生しており、直近では2月18日に発生した。今回のゴールデンクロスでロングポジションを取った投資家は、価格が17%上昇していることから成果を上げている。
  • 10日/100日移動平均線クロスオーバー(1月14日):ゴールデンクロスと似ているが、時間軸が短い。私が注目する理由は2つ。1つ目は、2015年以降、ゴールデンクロスは7回発生しているのに対し、16回発生していること。もう1つは、このシグナルが有効ならば、強気な動きをより早く見極めることができるはずだから。歴史的に見ると、30日後の平均リターンはわずか3%で、結果はエキサイティングではなかった。しかし、1月14日の発生以降、ビットコインは36%上昇しているため、数字は改善されるだろう。
  • RSIが30以下(3月10日):もう1つの人気シグナルは、相対力指数(RSI)が30を下回ったとき。これは資産が「売られすぎ」であることを示す。2015年以降、ビットコインで108回発生しており、直近では3月9日と3月10日に発生した。108回の30日後の平均リターンは7%上昇。ビットコインは3月10日以降、40%上昇している。

結果的にパフォーマンス面では、第1四半期は暗号資産にとって良い四半期となった。1月に購入した人は利益を得た。次の四半期に何が起こるのか、そして認識面での良くないパフォーマンスが良い方向に向かうのか、興味深い。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk
|原文:Cryptos Gained in Q1 Despite Weakened Asset Class Perceptions