ビットコインなど暗号資産は「嵐の前の静けさ」か──債務上限問題解決で流動性低下

米債務上限問題が解決された後、流動性の引き締めが再開されるため、暗号資産(仮想通貨)市場は下落に備えることになる──市場関係者たちは、そう述べている。

米財務省の一般勘定の復元と、米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートの縮小により、金融システムから数千億ドルの流動性が取り除かれ、今後数カ月の間に暗号資産価格にとっては重荷となる。

今年初めの流動性の緩和は、株式や暗号資産をはじめとしたリスク資産を上昇させた。ビットコイン(BTC)は3万1000ドルの高値まで上昇、その後はミームコインへの投機が生まれた。

しかし、米議員が政府の債務上限の引き上げを承認すれば、この流れは一転し、リスク資産への圧力となる。

政府預金口座の補充

まず、米財務省はほぼ完全に枯渇した政府預金口座(TGA)を補充する必要があり、これは金融システムから約5000億ドル(約70兆円、1ドル140円換算)の現金を補充することを意味する。

「リスク資産は、債券や株式などの安全な投資対象よりも流動性のコンディションに敏感な傾向があるため、リスク資産に特に打撃を与える可能性が高い」とマクロアナリストのノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は述べた。さらに以下のように続けた。

「財務省がFRBに預けている資金を引き出したことは、今年前半、市場にとって追い風の1つだった。通常ならそのまま置いておかれる資金が政府支出という形で経済に投入された」

「今、逆のことが起こる可能性が高い。すなわち政府は債券を発行して、口座残高を補充する必要があり、債券発行は流動性を市場から引き出し、財務相の口座に戻すことになる」

FRBの量的引き締めも

一般勘定の補充は、FRBがパンデミック中に景気を下支えするために肥大化したバランスシートを縮小するための量的引き締めを継続していることと重なる。引き締めは3月、米地方銀行危機のために一時中断していた。

マクロアナリストのリン・アルデン(Lyn Alden)氏は、この状況を「流動性にとってネガティブな二重苦」とレポートに記した。

「流動性を重視する多くの大型株の魅力は、今後の流動性の状況がより明確にならない限り、あるいは明確になるまで、今後数カ月は乏しくなる」とアルデン氏。

「投資家にとっては、自分が何を保有しているかを認識し、ボラティリティに備え、過度のレバレッジを避けるべき環境だ」

Dunleavy Investment Researchの創業者トム・ダンリービー(Tom Dunleavy)氏によると、債務上限を一時的に停止する法案も流動性に悪影響を及ぼす一因になるという。

国防費以外の歳出の抑制、未使用のパンデミック救済資金の回収、学生ローンの支払い再開など、法案のいくつかの重要ポイントは、消費者にとって投資のために残された利用可能な資金を制約することになると同氏はツイートした。

「流動性は大きくマイナスになる」(ダンリービー氏)

米下院は5月31日夕方、同法案の採決を行う見通し。

流動性の引き締め、FRBが年内に金利を引き下げる可能性の低下、そしてボラティリティと取引高が低下している現在の取引環境から、暗号資産市場はショックを受ける準備が整っていると機関投資家向け取引プラットフォームFalconXはニュースレターに記した。

FalconXのリサーチ責任者デビッド・ローワント(David Lawant氏は「このマクロシナリオ(…)は、私たちが暗号資産の嵐の前の静けさにいる可能性があることを思わせる」と述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin, Crypto Prices Brace for Downturn in Coming Liquidity Shock, Observers Say