米労働市場データ、暗号資産にかすかな希望を提示
  • アメリカの初期失業保険申請件数は2021年以来の高水準に増加
  • ビットコインとイーサリアムはSECによる提訴に動じていないようだ
  • だが取引の場所はシフトしている。アメリカ国内で保有・取引されるビットコインは減少、アジア市場にシフトしている


暗号資産(仮想通貨)投資家は、米証券取引委員会(SEC)によるバイナンスとコインベースの提訴によって動揺していたが、6月8日には、ポジティブな可能性を示す雇用データにひと息つくことができた。

6月3日終了週の初期失業保険申請件数は、予想の23万5000件に対して26万1000件に増加。2021年10月以来の高水準となった。急増は、堅調な労働市場が冷え込む可能性を示している。

堅調な労働市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制を目指すなかで障害と見なされてきた。労働市場が冷え込み始めている可能性を示すデータは、FRBの取り組みが好ましい結果をもたらしており、約1年にわたって続けている利上げを一時停止する可能性を高めるもの。資産価格にとってはおそらくプラスとなる。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedwatchによると、金利が現在の目標金利5%~5.25%にとどまる確率は71.4%、前日の72.5%から低下している。

次回の利上げ決定を14日に控え、米労働統計局が13日に発表する5月のコアインフレ率に注目が集まっている。現時点では0.3%上昇と予想されている。インフレ率の上昇は当然ながらビットコイン価格にとってはネガティブな、インフレ率の低下はポジティブな要素となる。

「恐怖と貪欲」は動かず

今週、SECによる2大取引所の提訴がニュースとなったにもかかわらず、市場はまるで以前から予想していたかのような反応を見せている。

「Fear & Greed」Index(「恐怖と貪欲」指数)は、ビットコイン価格の変動率、市場モメンタム、時価総額などを合わせて、市場センチメントを計測するもの。0は「極度の恐怖」、100は「極度の貪欲」を示す。

現在の数値は50で、5月以降、ほぼ横ばいの中立値となっている。

アメリカからアジアへ

値動きの少なさは、投資家がSECの提訴に動じていないことを示しているが、Glassnodeのデータによるとビットコインの取引は地理的な変化を見せている。

アメリカ国内で保有または取引されるビットコインは、2022年半ば以降11%減少、その多くはアジア市場にシフトしている。

SECの規制スタンスは、暗号資産に対する需要を変えることはなかったようだ。だが、需要がどこで満たされているかに影響を与えたようだ。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:glassnode
|原文:Jobs Data Offers Faint Hope for Digital Assets Even as Investors Fret Over Binance, Coinbase Suits