DeFiの成長には現実資産(RWA)が不可欠

TVL(Total Value Locked:預かり資産)が440億ドル(約6兆1600億円、1ドル140円換算)を超えるなど、DeFi(分散型金融)が暗号資産(仮想通貨)投資家の間に広まり、富を増やすイノベーティブな新しい方法を提供していることは否定できない。

暗号資産におけるDeFi成功の理由は、関係者全員にメリットがあるからだ。暗号資産保有者は、イールドファーミングのような仕組みを通じて、保有資産から不労所得を得る方法を手にする一方、借り手は、従来の金融機関では対抗できない有利な条件で、数秒で融資を受けることができる。

DeFiは、暗号資産の世界では大きな存在だ。しかし、金融業界全体に目を向けると、潜在的な可能性はあるものの、極小と言ってもいいニッチ市場に過ぎない。DeFiはまだ最初の一歩を踏み出したばかりだが、自らの足で堂々と立てるようになるためには、真のビジネスや機関投資家を開拓できるような、伝統的な金融エコシステムとつながる方法がどうしても不可欠だ。

DeFiの限界

問題は、DeFiが内部的手段では解決できない深刻な問題に悩まされていることだ。DeFiが抱える最大の制約のひとつは、価格のボラティリティを考慮し、借り手はローンを過剰担保をかけなければならないという要件だ。

例えば、ステーブルコインの発行を手掛けるメーカーダオ(MakerDAO)など、ほとんどのDeFiプロトコルは、ローンの価値を上回る担保を要求している。つまり、誰かが1000ドルを借りたい場合、1500ドルを預けなければならないということ。万一、担保の価値が1500ドルを下回ると、清算ペナルティが課される。

このような過剰担保の要求は借り手に大きなリスクをもたらし、アクセシビリティを著しく阻害する。金融サービスをより利用しやすくするという約束をDeFiが果たすためには、他での資金調達に苦戦している世界中の何百万もの企業に対応できる方法を見つける必要がある。現在のところ、ほとんどの企業はDeFiを資金源として利用することができない。なぜなら、担保として暗号資産以外のものを使用することが認められていないからだ。

もうひとつDeFiの足かせとなっているのは、プロトコルで利用可能な流動性に直結する、インセンティブ付与の問題だ。DeFiが2021年11月に2360億ドルという史上最高のTVLを記録したとき、誰もが歓喜した。

しかしその後、「暗号資産の冬」が訪れ、2022年半ばまでには、DeFiのTVLはわずか400億ドルまで減少。ほとんどのDeFiトークンの価値は、80%~90%下落した。これは、DeFiのインセンティブシステムに壊滅的なダメージを与えた。貸し手は預け入れ額に応じた利回りに対し見返りを受け取るが、それは突然価値が大幅に下がったDeFiトークンで支払われるからだ。

TradFi(伝統的金融)でDeFiを修正

DeFiプロトコルは、現実世界の資産との統合、つまり債券、株式、負債などの金融商品や、金(ゴールド)、不動産、美術品などの現物資産(RWA)をトークン化することではるかに意義を増す。そうすることで、より安定した資産がDeFiに導入され、ユーザーの投資はより安全になり、プロトコルはよりアクセスしやすくなる。

トークン化とは、パブリック・ブロックチェーン上にホストできるよう、現実資産をデジタルに表現するプロセスを指す。これにより、資産を仲介者なしに透明性をもって取引することが可能になり、取引がより迅速かつ効率的、低コストで行えるようになる。

DeFiプロトコルはすでに、デジタル資産市場でその価値が証明されており、その効率性は、従来の金融機関がその可能性を検証するほど魅力的だ。

自動化され、分散化された資産取引という考え方には、無法で不安定だと思われがちな暗号資産市場との関連から、まだ反対意見もあるが、ブロックチェーンが提供できる潜在的な利益を伝統的な金融はもはや無視できないというコンセンサスが高まっている。

そのため、DeFiに足を踏み入れる評判の良い大手金融機関がいくつか現れている。ブラックロック(BlackRock)は6月、米証券取引委員会(SEC)にビットコイン現物ETF(上場投資信託)の承認を申請。一部のアナリストは、この申請が承認される可能性は高いと見ており、これに続いてフィデリティ(Fidelity)、インベスコ(Invesco)、ウィズダムツリー(Wisdom Tree)、ヴァルキリー(Valkyrie)なども相次いで独自のビットコインETFを申請した。

DeFiに対する機関投資家の意欲が高まっていることを示す他のサインとしては、サンタンデール銀行(Banco Santander)がデジタル資産についてユーザーを教育していることや、チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)、フィデリティ、シタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)といった金融大手が支援するEDX取引所のローンチなどが挙げられる。

DeFiにおける現実資産(RWA)

DeFiは、伝統的金融システムに取って代わる優れたオプションとなり得るため、伝統的な金融機関にとっても魅力的なコンセプトだ。伝統的な株式、コモディティ、国債、さらには美術品や不動産といったものをトークン化することで、既存の仕組みよりもはるかに透明性の高い、よりシームレスな取引が可能になる。

現在、このような市場は証券ブローカーのような仲介業者に依存しており、彼らはどのような取引からも必ず少額の手数料を取っている。DeFiは、スマートコントラクトを利用することで、こうした仲介業者を排除する。

スマートコントラクトとは、自動化、コード化された契約のことで、特定の条件が満たされたときに自動的に実行される。スマートコントラクトは、管理・運営コストを削減しながら取引をより迅速に処理し、誰もが閲覧可能なブロックチェーン上にすべてが記録されるため、より透明性が高くなる。このようにして、プロセスの信頼性と説明責任も高めることができる。

さらに、DeFiプロトコル自体も、以前は夢見ることしかできなかったレベルの安定性を持つ資産を提供することで利益を得る。現実資産は、ほとんどのDeFiトークンよりもはるかに安定しており、ボラティリティが低下することで、清算の回数を劇的に減らすことができる。さらに、現実資産は代替的な担保として使用することができ、多くの種類の企業が初めてDeFiにアクセスすることを可能にする。例えば、企業は未払いの請求書をトークン化し、短期的なクレジットを得ることができる。

現実資産をトークン化することで、投資家は「ステーキング」やイールドファーミングといったDeFi独自のサービスを利用することもできる。

フラクショナル(部分的)オーナーシップもまた、既存市場のアクセシビリティを一変させるユニークなメリットだ。これは、不動産や美術品などの資産を複数の所有者で分割できるようにする仕組みだ。トークンで表現された不動産や絵は、分割可能、譲渡可能で、分散型プラットフォーム間で即時取引可能になる。このように、DeFiプロトコルは信じられないほど強いディスラプションのパワーを持ち、インクルージョン(金融包摂)を拡大できる。

イデオロギー的に法定通貨や伝統的な金融市場との統合に反対する筋金入りの暗号資産ファンからは反発があるかもしれないが、大部分を味方につけることができるだろう。伝統的金融(TradFi)がDeFiとより密接に絡み合うようになれば、現実資産は、より広範なデジタル資産エコシステムへの玄関口として機能するようになるだろう。分散型資産に対する機関投資家の抵抗感が薄まるにつれ、彼らはビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のようなトークンもより入念に検証し始めるはずだ。

DeFiとTradFiは良い相性

DeFi市場は「暗号資産の冬」の到来以降、2年近くマンネリ化した状態が続いているが、世界的な経済不安の中でも、伝統的な金融市場は成長を続けている。

DeFiはこのままでは、より広範な暗号資産エコシステムを悩ませるボラティリティを振り払うことはできないだろう。そして投資家は今後何年も、終わることのない強気相場と弱気相場のサイクルに耐えるしかない。

しかし、DeFiが現実資産を受け入れれば、伝統的な金融市場が備える一貫した長期的成長の恩恵をDeFiも受けることができる。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:If DeFi Wants to Grow It Has to Embrace Real-World Assets