重要イベントを控え揉み合うBTC──テクニカル的には「売られ過ぎ」か?【bitbank月次レポート】

8月のビットコイン(BTC)対ドルは一段安を演じ23日正午時点で、26,000ドル周辺で揉み合いとなっている。

月初の相場は、米格付け会社のフィッチによる米国債格下げを受けて30,000ドル回復を窺う展開で始まったものの、米株式市場がこれを嫌気したことにより、BTCに買いは続かず、29,000ドル周辺で揉み合う展開に転じた。

7日から8日にかけては、米電子決済のペイパルが独自のステーブルコイン「PYUSD」を発表した他、ギャラクシー・デジタルのノヴォグラッツ氏が決算の場で、ブラックロックとインベスコの内部情報筋が現物ビットコイン上場投資信託(ETF)の承認が向こう6カ月ほどで下りるとの見解を示していると明らかにしたことで、BTCは一時30,000ドルを回復した。

しかし、7月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、相場は間も無く失速。米CPIは前年同月比で市場予想を下回るも、13カ月ぶりに加速した上に、直後に行われた米30年債の入札が低調だったことで長期ゾーンの米債利回りが上昇し、BTCは8日の上げ幅を縮小した。

その後は29,000ドル台での揉み合いが続いたが、17日未明に公開された7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、参加者の殆どがインフレ上振れリスクへの懸念を示し、必要であれば追加利上げを行う認識を示していたことが明らかとなり、BTCは29,000ドルを割り込んだ。翌18日には、スペースXが保有BTCを売却していたとの噂が広まった他(非上場企業のため真偽は不明)、中国不動産開発の中国恒大集団(エバーグランデ)が米NY州で連邦破産法15条(チャプター15)の適用申請をしたことで、リスクオフムードが広がり26,000ドル近傍まで急落した。

第1図 ビットコイン対ドル日足チャート(Glassnodeより作成/bitbank)

足元では、24日から26日の日程で開催されるジャクソンホール経済シンポジウムを控え、様子見ムードが広がっており、BTCは26,000ドルを挟み込む展開に終始している。ジャクソンホールでの注目は25日に予定されているパウエルFRB議長の経済見通しに関するスピーチとなろう。

7月分の米経済指標は、消費の強さやこれまで減速基調だった製造業の底打ちを想起させる内容となった他、インフレ鈍化ペースにブレーキが掛かっていることが示唆されており、年内の追加利上げを正当化する内容とも言える。こうした状況で、FF金利先物市場では11月の利上げを織り込む動きが徐々に進んでおり、BTCにとってマクロ環境は芳しくない。

ただ、7月の消費の伸びは外食や趣味、レジャーの分野で目立ち、夏休みに伴う消費が一時的に盛んになった可能性も否定できない。また、8月は中国経済の減速やデフレ、さらには不動産バブル崩壊への懸念が台頭した。中国は米国の輸出先第3位と経済や雇用創出の面で重要な貿易相手国であり、パウエル議長が対岸の大国の景気減速をどう受け止めているかにも注目だ。

以上を踏まえれば、パウエル議長は、ジャクソンホールではこれまで同様に「インフレが再加速すれば追加利上げに踏み込む」というデータ次第の姿勢を貫くだろう。9月のFOMCでは経済見通し(Summary of Economic Projections)の発表も控えており、現段階では年内の「追加利上げ」と「利上げ打ち止め」双方の糸口を握っておきたい筈だ。よって、ジャクソンホールでのパウエル議長のスピーチは、9月FOMCまでのBTC相場の方向感を決定づけるような材料とはならないと見ている。ただ、追加利上げや高金利の長期化が懸念される中、パウエル議長の姿勢が一層タカ派に傾斜しなければ、ある意味安心感にも繋がるか。

他方、テクニカルの側面では、BTC対ドルは長期トレンドとして意識される200日移動平均線と、今年の相場上昇のガイドとなってきた上昇トレンドライン(第2図橙線)の双方を明確に下抜けしており、半年ほど続いた上昇トレンドが終了したと言える。

ただ、BTCの相対力指数(RSI)は「売られ過ぎ」とされる30%を明確に割り込み、昨年11月のFTXショック時の水準をも下回っており、目先の下値余地は限定されよう(第2図)。22日には、相場が一時下値を試す動きとなったが、2月高値や6月安値が密集する節目25,000ドル周辺エリアが相場のサポートとなっており、もう一段と相場が急落するシナリオは回避できるか。

第2図 ビットコイン対ドル 200日移動平均線とRSI(Glassnodeより作成/bitbank)

|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:bitbank