DAOが政治から学べること──コミュニケーションの問題を解決するために

政治を参考にすれば、DAO(分散型自律組織)は、効率性と分散化の「いいとこ取り」ができるだろう。DAOは特に政党が代表を選出し、選挙戦を戦い、長期的な目標を達成する方法、さらには必ずしも足並みが揃っていないコミュニティの継続的な支持を維持する方法から学ぶことができる。

DAOが組織作りの新しい方法であることを考えると、これは直感に反するように聞こえるかもしれない。機能不全で知られる政治運営を見習いたいと思う人はいるだろうか?

貧弱なガバナンス構造とコミュニケーション不足

DAOは伝統的な組織と比較して大きなメリットを提供する一方で、ほとんどのDAOは依然として同じ根本的な障害の克服、すなわち効率性とコミュニティ内のコンセンサスの達成を両立させようとしている。このような問題は多くの場合、貧弱なガバナンス構造とコミュニケーション不足の結果だ。

DAOでは通常、ほとんどのトークン保有者が提案を行うことができる。これは直接民主主義のようなものを実現するかもしれないが、非効率でもある。誰でも、何でも提案できるようになると、長期的な目標が散漫になり過ぎてしまう。

さらにDAOは依然として、コミュニケーションの問題を抱えている。コミュニケーション不足はしばしば反発を招き、重要なロードマップの決定や実行を遅らせ、コミュニティ内のコンセンサスの欠如を露呈する。

これらの問題は、DAOを構成するプログラミングではなく、明らかにコミュニティの問題。だからこそ、政党の取り組みを見ることで対処できるかもしれない。

専門知識と先見性の欠如

前述したように、すべてのトークン保有者に提案を許可することによって、組織の目的が散漫になり、トークン保有者の短期的な利益とプロジェクトの長期的な目標との間には対立がしばしば生まれる。この問題は、あらゆる形、規模で現れる。

まず、提案が多すぎることにもつながる。提案が殺到し、その多くがクオリティの低いものだったり、非現実的な内容だったりすると、DAOが重要なものに優先順位をつけ、タイムリーに意思決定を行うことが難しくなる可能性がある。

さらに多くの提案が見落とされたり、完全に見逃されてしまうようなお粗末なフィルターシステムによって、問題が悪化する可能性もある。

もうひとつの問題は、トークン保有者の多くが専門知識を持ち合わせていないことだ。すべてのトークン保有者が、DAOに関連する分野で同じレベルの知識を持っているわけではない。そのため、提案はよく考えられたものでも、DAOの利益になるものでもないことが多い。

またトークン保有者の投票率が低いと、比較的小さなグループによって提案が押し通され、DAOの大多数の見解とそのロードマップにかなずしも一致しない決定が下される可能性がある。

目標と計画の公式化

政党は、有権者向けの法律を起草する代表者を選出する。彼らは国民によって選ばれ、民意を代表しなくなった場合は解任される。こうして、選挙民の最善の利益のために政策が行われる状況が作られる。

DAOも同様に、コミュニティがプロジェクトの将来を導く提案を作成する責任を負う個人を投票で選出するような方法で運営されるべきだろう。

選出される個人は、DAOに貢献した大きな実績があり、プロジェクトのゴールと明らかに足並みを揃えていなければならない。

そして、選ばれた個人がプロトコルのゴールと足並みを揃えない場合、コミュニティは他の誰かを選出することができる。このような仕組みは、悪質な行為者が主導権を握ることを制限したり、抑制することにもなる。

DAOからレイジクイット(DAOの方向性に同意しないメンバーが自らの取り分の資金を持ってDAOを去っていくこと)する人を制限することも可能かもしれない。

DAO政策のキャンペーン

イーサリアムのレイヤー2ソリューション、アービトラム(Arbitrum)の最初のDAO投票後の反発は、将来の計画についてコミュニティに適切な情報を提供することの重要性を浮き彫りにした。アービトラム財団のパトリック・マッコリー(Patrick McCorry)氏は、この問題は「コミュニケーション不足」によるものだと述べた。

投票に向けて、より透明性があり、もっと「キャンペーン」が展開されていれば、コミュニティからこれほどの反発はなかったかもしれない。

政党や候補者は選挙に先立ち、提案した政策について大規模なキャンペーンを行う。キャンペーンは、問題に対する候補者の立場や将来に向けた計画について有権者に情報を提供する。DAOも同様の期間を経て、最終的な投票について、コミュニティに十分な情報を提供する必要がある。

DAOメンバーの関心や要望を理解するためには、徹底的なリサーチが必要になる。例えば政党は、意思決定に向けた情報を得るために、人口動態や嗜好、どの政策の優先順位が高いかなどを考慮することがある。

暗号資産(仮想通貨)はプロダクト開発に特化した性質があるため、こうした取り組みを一律に適用することはできないが、誰に向けて発信しているのか、またメンバーの関心事についてよりよく理解することで、ターゲットとなる人々の心に響く提案を行うことができるだろう。

また、説得力のあるストーリーやケーススタディを用いることで、政策に親近感やインパクトを与えるようなメッセージの組み立ても慎重に行われる。提案の実際的な側面だけに焦点を当てるのではなく、DAOは、人々の共感を呼ぶストーリーや具体的なケーススタディと結びつけることで、計画をリアリティ豊かなものにすることができる。

最後に、政党は草の根の関与を重視している。草の根レベルでの組織化と動員には計り知れない価値がある。ボランティアやコミュニティリーダーからなる地域ネットワークは、直接、あるいは戸別訪問、対話集会、地域イベントなどを通じて、影響力を持つ人たちに力を与える。

草の根の動員に関心のあるDAOは、コミュニティマネジャーとのAMA(Q&Aセッション)や、コミュニティマネジャーの輪番制を通じて、こうした取り組みを実現できる。

政治の闇

DAOは、政党と完全に同じように運営されるべきでは決してない。つまり、人々を権力の座に選出し、誰が政策を決定できるかを制限することは、最もコミュニティ志向を持った人々でさえも腐敗させる可能性がある。

中央集権を緩和するためには、リーダーたちを常に評価し、任期制限を設ける必要がある。民主主義国家のように、一定期間が過ぎたら、DAOメンバーは他の代表者に投票し、分散化と多様なアイデアを確保する必要がある。

政党のもうひとつの問題は、有権者が個人的な偏見や好意、人を惑わすような人物によって説得される可能性があることだ。したがって、DAOのリーダーの選出は、人格をめぐるコンテストになるべきではない。代わりにその人の政策に焦点を当てることで、決定をDAO全体にとっての最善の利益に導く。

DAOの強み

それ以外にも、DAOはすでに多くの点で政党よりも効果的であることが証明されている。例えば、DAOの決定はパブリックブロックチェーンに記録されるため、誰もが舵取りを確認できる。一方、政党はしばしば秘密裏に運営される。

また、DAOはもともと分散型であるため、場所を問わない。国際的な協調がますます必要とされる世界では、DAOによって世界中の人々が参加できるようになる。つまり、組織は最高に優秀な人材を集めることができ、多様な視点をより確かに代表することができる。

そして最後に、DAOは長く官僚的なプロセスに阻まれがちな従来の組織よりも機敏に動くことができる。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Markus Spiske/Unsplash(CoinDeskが加工)
|原文:What Can DAOs Learn From Partisan Politics?