IBMの影響力拡大の懸念に新提案も ── ハイパーレジャー、技術運営委員会の議長にIBM社員が就任

ハイパーレジャー(Hyperledger)の技術運営委員会(TSC)の中で“IBMが影響力を増している”との懸念が広がるなか、新たにIBM社員が議長に選ばれた。

IBMの影響力拡大に懸念

IBMのブロックチェーン&ウェブ・オープン・テクノロジーのシニアテクニカルスタッフ、アルノー・ル・オー(Arnaud Le Hors)氏は、インテルの主席エンジニア、ダン・ミドルトン(Dan Middelton)氏の後を継いで議長に就任する。2019年9月11日、TSCのメーリングリストで明らかになった。

「信頼できる人に議長を任せることができて満足している」とミドルトン氏はメーリングリストに記した。

ミドルトン氏は1年前に、2016年からTSCの議長を務めていたIBMのオープン・テクノロジーの最高技術責任者(CTO)、クリストファー・フェリス(Christopher Ferris)氏の後を継いだ。

昨年、TSCは広く多様性にフォーカスしたワーキンググループ(Diversity, Civility and Inclusion working group)を立ち上げた。だが、企業の多様性にはあまり目を向けていなかったとミドルトン氏はCoinDeskにメールで述べた。

同じ時期、コンソーシアムではプロジェクト間のコラボレーションが盛んになった。例えばハイパーレジャー・アーサ(Hyperledger Ursa)は、ハイパーレジャーのインディ(Indy)、ソウトゥース(Sawtooth)、ファブリック(Fabric)のプロジェクトの開発者たちが共同で開発した。

ハイパーレジャーへの影響力なら、“コードが王様”とミドルトン氏は付け加えた。

「このようなオープンソース・コミュニティにおける真の影響力は、貢献」とミドルトン氏。

「選挙に関する議論や複雑な選挙ルールを作り出すためのすべての努力が、実際の技術開発に向かうことを少し願っている」

IBMからもハイパーレジャーからもコメントを得ることはできなかった。

ハイパーレジャーのTSCは、技術的な問題に重点的に取り組む作業部会の設置、プロジェクトの承認、アップデートのレビューを行う責任を担う。

議長からの提案

先週、ハイパーレジャーのコード作成に貢献した人たちを有権者として、2019-2020年のTSG選挙が行われた。その結果、委員会でのIBM関係者の数が倍増、11人のメンバーのうち6人がIBM関係者となった。

これにより、リナックス財団が統括するオープンソースの企業向けブロックチェーンプロジェクトであるハイパーレジャーに対して、IBMが極めて大きな影響力を持つことになるとの懸念が再燃した。

その対応として、エグゼクティブ・ディレクターのブライアン・べーレンドルフ(Brian Behlendorf)氏は、委員会の人数拡大について理事会と議論する、もしくは「新しいTSCメンバーを今回限り数人加えて、現行のTSCチームをより大きなものにする」ことを提案した。

これらの提案について、新しい議長はすでに検討を始めている。9月12日(現地時間)、ル・オー氏は、先の選挙から4人の候補者を現行チームに加える提案をTSCの議題ページに投稿した。

「委員会で取り上げられるべき議題が、非常に短い期間で具体化したようだ」とべーレンドルフ氏はCoinDeskにメールで述べた。

略歴によると、ル・オー氏はIBMに20年近く勤務し、ハイパーレジャーにはその立ち上げから携わっている。同氏は2018-2019年のTSCメンバーを務め、ハイパーレジャーで最古のプラットフォームであり、ウォルマート(Walmart)が自社のサプライチェーンで食品をトレースするために使っているブロックチェーンの基盤でもあるファブリックに貢献している。

翻訳:石田麻衣子
編集:増田隆幸
写真: CoinDesk archives
原文:IBM Official Elected Chair of Hyperledger Blockchain Tech Board