CME、ビットコイン先物取引高でバイナンスを抜く──強気サインなのか?

CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループは、数年ぶりとは言わないまでもここ数カ月で初めて、ビットコイン(BTC)先物の取引高が、世界最大の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)を超えた。こうした逆転現状は、以前にも見られたが頻繁にあることではなく、暗号資産に対する機関投資家の関心が高まっているサインと見られることが多い。

高まる機関投資家からの期待

CMEはしばしば「大人のための取引所」と言われる。一方、暗号資産ネイティブな取引所であるバイナンスの場合、ネクタイを締めて、ビットコインを取引している人はほとんどいないだろう。

米CoinDeskでマーケットレポートの第一人者、オムカー・ゴッドボール(Omkar Godbole)記者は、CMEは暗号資産の世界において「機関投資家の活動を示す指標と考えられている」と述べ、「CME先物の建玉が増大している」と続けた。建玉とは、既存の先物契約のドル建ての価値を指す。

おそらくこれは、年初から2倍以上となったビットコイン価格に牽引されたもので、機関投資家もその波に少しでも乗りたいのだろう。あるいは、年末までにSEC(米証券取引委員会)の承認が期待されるビットコインETF(上場投資信託)や、来年に予定されているビットコイン半減期をめぐるストーリーが、さらなる買いに拍車をかけることに投資家は賭けているのかもしれない。

多くの人々が、ビットコインにはまだ上昇余地があると考えているようだ。暗号資産投資会社ビットワイズ(Bitwise)のマット・ホーガン(Matt Houga)最高投資責任者は、ビットコインETFをめぐる盛り上がりはまだ完全に価格に「織り込み済み」ではないと述べた。

確かに、暗号資産投資会社の最高投資責任者には、そうしたことを信じ、その主張への支持を鼓舞する動機がある。

「半減期」は織り込み済みか

また、ビットコイン半減期が織り込み済みか否かという問いは、特にまだ半年も前の現時点で答えを出すにはあまりに複雑だ。

確かに、発行されるビットコインが減ることは、ビットコイン価格にとって良いことだという考えは合理的だ。これは、2100万枚を上限とするビットコインは希少なものであり、それゆえに価値があるという考えと同様に、需要と供給の理論だ。

しかし、効率的な市場を信じるのであれば、全ビットコイン保有者の99.9%が待ち望んでいる、事前に予定されたイベントは「織り込み済み」と考えるべきだろう。

効率的市場説を唱える人たちは、街で10ドル札を見つけるのは不可能だとも言っている。すでに誰かが拾ってしまっているはずだから。だが暗号資産市場は効率的とは言い難い。私はいつもお金を見つけ(そして失い)、暗号資産トレーダーはときに、市場の非効率性を利用してお金を稼ぐことがある。

ビットコイン価格はどうなる?

どちらにしても、ゴッドボール記者は事態をさらに複雑にするかのように、通常CMEでビットコイン先物の建玉が増加しているときは、ビットコイン価格の下落指標だと述べた。

これはもちろん、確実なものではないが、CMEがバイナンスから取引高トップを奪った過去数回の事例の後に続いた観察可能な傾向だ。「2回ともCMEがトップに躍り出たことは、価格がピークに達したことを示すものだった」とゴッドボール記者は指摘した。

さらに、CMEの建玉が増加している一方で、今回の逆転劇には複数の要因があるようだ。まず、バイナンスの先物取引における市場シェアは長期的に減少傾向にある。おそらく、アメリカとEUにおけるバイナンスの法的問題が原因だろう。

そして最後に、CMEで取引されるデリバティブの種類にも違いがあり、CMEでは少数のトレーダーが強気の賭けを行ったが、バイナンスでは大量のオープン・ショート(BTC価格に対する弱気の投資)があり、最近の価格上昇時に清算されたとゴッドボール記者は述べ、さらに以下のように続けた。

「CMEの建玉が増加しているとはいえ、必ずしも先物市場が突然、爆発的に成長しているわけではない」

これはビットコインにとって何を意味するのだろうか? 機関投資家が参入してきているのか? 価格は上昇し続けるのだろうか? もし私がその答えを知っていたら、私は記事にせずに自ら賭けに出ているはずだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:CME, Where Institutions Trade Bitcoin Futures, Flipped Binance. Is That as Bullish as It Sounds?