ビットコイン半減期、レイヤー2の普及を促進

ビットコインの「第5期」へようこそ。4月20日、ビットコインは4回目の半減期に成功した。半減期とは、マイニングによって流通する新しいビットコイン(BTC)の数をプログラムで削減する仕組み。半減期自体はエキサイティングなイベントで、世界中の人々がバーチャルで、そして対面で祝ったが、多くの人々の目はこれから起こることに注がれている。

ビットコイン上でミームコインの作成を可能にする新しいプロトコル「ルーンズ(Runes)」のローンチも半減期と同時に行われた。すでに数百のトークンが誕生し、ビットコインマイナーは8000万ドル(約12億、1ドル155円換算)以上の手数料を手にしている。

こうした取引の活発化により、ビットコインの取引手数料も上昇しており、TokenTerminalによると、現在の平均コストは70ドルを超え、ここ30日間の平均と比較して1395.8%の上昇となっている。

取引が平準化するかどうかは分からないが、「第5期」、つまり2028年の次の半減期までの期間は、ライトニング・ネットワークのようなビットコイン・レイヤー2がついに普及する時期になると考える人もいる。4月20日、ビットコインの取引手数料は史上最高の128ドルを記録した。

「デジタルゴールド」から開発盛んなプラットフォームへ

「手数料が高騰するようなことがあれば、おそらく人々は他のソリューションを求めるようになるだろう。ライトニングは1つの選択肢だ。また、FedimintやArkのようなサイドチェーンも、レイヤー2も数多くある。手数料の高い環境は、人々にそれらを検討するよう促すだろう」と、ビットコイン・コア(Bitcoin Core)の開発者であるアバ・チャウ(Ava Chow)氏は語った。

これは最近のメッサーリ(Messari)のレポートでも指摘されている、オンチェーンでの活動が活発化する中、「ビットコインのレイヤー2ソリューションは贅沢品ではなく、必需品」と、アナリストのニキル・チャトゥルヴェディ(Nikhil Chaturvedi)氏は指摘。ビットコインはもはや単なる「デジタルゴールド」ではなく、その上で開発を行うプラットフォームだ。

このような考え方の変化は、昨年のオーディナルズ(Ordinals)プロトコルのローンチによって、サトシ(satoshi)と呼ばれるビットコインの最小単位にデータを保存する新しい方法が可能になったことに端を発する。

NFTに似たオーディナルズの「インスクリプション」の販売はすでに30億ドルを超えており、平均取引数は200万件に迫るなど取引は増加傾向にある。

ビットコインの取引手数料を押し上げているのはオーディナルズだけではない。計算をオフチェーンに移行する方法であるBitVMは、ビットコイン上でイーサリアムのようなスマートコントラクトの開発を可能にする。バビロン(Babylon)は、保有するビットコインをステーキングして利回りを得る方法を開発している。さらに、StacksやMerlinのようなレイヤー2は、多くの分散型アプリやミームコインの基盤となりつつある。

興味深いことに、半減期後の数日間、ビットコイン・レイヤーに関連するトークンはビットコインをアウトパフォームしている。例えば、ElastosのELAトークンは11%上昇、SatoshiVMのSAVMは5%上昇した。StackのSTXは20%近く上昇し2.87ドルとなったが、これは4月23日から展開が始まったネットワークの「Nakamoto」アップグレードによるものかもしれない。

レイヤー2普及にまつわる懸念

市場原理がビットコイン・レイヤー2へのアクションを促す可能性は高いが、それは必ずしも良いこととは限らない。ひとつには、保有するビットコインが少ない人にとっては、ライトニングのようなプラットフォームをノンカストディアルで使用し、独自チャネルを設定することは、高価過ぎて使えなくなる可能性がある、とチャウ氏は示唆した。

「問題なのは、これらのレイヤー2はすべてオンチェーン取引を必要とすることだ」とチャウ氏は述べた。これは、ライトニングアカウントに資金を供給するために必要な「インバウンドキャパシティ」のようなものを指している。

また、ライトニングのユーザーは、オンチェーンでのクロージング取引に料金を支払わなければならない。チャウ氏によれば、「手数料が高い環境では、実際にそれらを使い始めることは少し難しいものになる」

もちろん、これには回避策がある。驚くほど高額な取引を補助するカストディアル・ライトニング企業だ。

「私は、ビットコインの取引手数料が高くなることで、ユーザーがカストディアル・ライトニングサービスに流れることを懸念している……ビットコインユーザーは、ビットコイン保有に対する主権や匿名性を失うことになる」と、ビットコイナーでライトニングに批判的なSovereign Matt氏は語り、次のように続けた。

「カストディアル・ライトニングサービスは、メインチェーンのビットコインを使ったセルフカストディや取引にはコストがかかり過ぎるため、人々が自分の保有資産を託さなければならない新しい銀行/仲介業者になるだろう」

このような状況はある程度、数年前に発生したビットコインのスケーリング方法をめぐる、いわゆる「ブロックサイズ戦争」の結末だ。この時、ビットコインのブロックサイズを拡大する代わりに、レイヤー2を通じてチェーンを拡大することが決定された。その結果、ビットコインは現在のような道を歩むことになった。

「ブロックあたりのトランザクション数を増やすことについては、基本的に2つの考え方がある。ブロックを大きくするか、トランザクションを小さくするかだ」とチャウ氏は言い、ブロックサイズを拡大することは、「力ずくの」解決策のようなものだと付け加えた。

ビットコイントランザクションをより小さく、よりコンパクトにする方法はあるが、それが実現するまではレイヤー2が増えていく可能性が高い。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:How the Bitcoin Halving Will Drive Action to Layer 2s